第15話

到着した倉庫の中で、天音は椅子に縛られていた

抵抗するでも叫ぶでもなく、ただまばたきをしながら座っているだけだ



「天音!」



周囲の男たちの上半身が狼に変わる

そしてタクティカルナイフを構え、霊斗に突進した



「邪魔すんなァァァァァ!」



霊斗が振るう牙装が獣人を切り刻んでいく

気がつけば、獣人は残り2名になっていた

そのうちの一人が銃を霊斗に向ける



「っ!」



霊斗は回避の構えをとった

しかし獣人は、なんの躊躇いもなく


―――――天音を撃った



「え…あ……ま、ね…?」



瞬間、霊斗の牙装が霊斗を呑み込んだ

全身に黒い帯が巻き付き、腕は牙装のまま

目を赤く光らせ、霊斗は男を切り刻む

執拗に、何度も何度も

そして帯が解け、牙装が消える。霊斗は天音に駆け寄った



「あま…ね…」



霊斗は天音を抱えた

夜斗であれば、黄泉から連れ帰ることができるかもしれない

その一縷の希望を胸に、走った

先程夜斗が倒れていたその場所に



「よ…ると…?レイ、ン…?」



目の前にのは、夜刀神を地面に付け、一切動かない夜斗と、倒れるレイン

見てわかる。生命反応はない

夜斗は全身を斬られ、撃たれてそれでもなお立っていた



「しな、ないって…言っただろ…。死神、は…死なねぇ、って…!」



霊斗の慟哭が響く

その瞬間、霊斗の意識は暗くなっていく



目が覚めた霊斗は周囲を見回した



「起きたか、霊斗」


「夜斗…!死んでなかったのか…」


「お前そんな夢見てたのか…。まぁ、如月ノ真髄ナイトメア・テラーは本人の根源的恐怖を呼び覚ます異能だしあり得るか…?」


「へ…?なんだよ、それ…」


「暴走したお前を止めるために俺が使った、きさらぎ駅本来の能力だ。根源的恐怖を夢として具現化・体験させる」


「暴走、してたのか…」


「そこで転がってる天音のせいでな」



夜斗はそういって顎で天音を指し示した

驚きに顔を染める霊斗



「天音…?天音も、生きてたか…」



霊斗はほっと一息つき、起こした体をまた倒した

場所は事務所の仮眠室だ。日付は15日

長い間、悪夢を見ていたのだ



「天音も悪夢を見てるのか?」


「そうだ。俺が作った霊力が抜けるまでにはもうそろそろだと思うけどな」



夜斗はそういって天音が起き上がるのを待った



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る