第14話
死神の暴走は、神機の制御不能によって引き起こる準魔力災害と呼ばれている
暴走中は当然意識などなく、それでいて非暴走時の数倍以上の力を持つため、意図的に暴走に持ち込むことはありえない
それはその街、ひいてはその国を滅ぼすような行為だからだ
【夜斗が暴走か。意図的なものだろうな。まぁ、駅であれば外界が破損することはない。存分にやるといい】
如月は、駅舎の屋根からその様子を見下ろしていた
手伝う気は全くなく、ただ場所を貸し、訓練を眺めるだけだ
その間にも、夜斗と霊斗は神機と牙装をぶつけ合わせる
見れば、天音は霊斗の支配に手一杯なようだ
【…ほう。やはりあの小僧、真祖クラスの吸血鬼か。魔力量だけなら夜斗さえも敵わぬ。だが、精度が足りぬな。支配されているからか、はたまた日頃そうなのかはわからぬが…】
魔術の形成速度は夜斗が上
しかし威力は霊斗が上
夜斗は速度と手数で霊斗を撃ち、霊斗は単発高火力で夜斗を留める
(ジリ貧だな。あとは…)
夜斗は以前、如月と契約したときから使えるものを試すことにした
怪異に備わる、魔力とは別の力。それは、人間や魔族問わず誰しもが持つ
(怪異・如月ノ真髄)
夜斗が作り出したのは、触れたものに膨大な恐怖を与える霊力の霧
それは霊斗と天音を呑み込み、如月は既のところで回避した
【これは…。俺の奥義か…!あやつめ、教えてもいないのにこうも容易く…!】
楽しそうに如月が笑うのと、霊斗天音が倒れるのは同時だった
「如月!」
【ああ】
3人は現実世界に戻り、倒れる霊斗と天音はまだ起きない
「コントロールがまだまだだな、夜斗」
「え?」
「如月ノ真髄はきさらぎ駅の霊力を注いで強制的に本人が怖がってることを夢として具現化する。夢を見る哺乳類には効果的だが、虫みたいなものには何も効果がない」
「え?そうなん?」
「知らずに使ったのか。お前はつくづく面白いな」
如月はククッと笑い、手を振ってあるき出した
きさらぎ駅を介して瞬間移動することはできても、戻るのは徒歩らしい
(不便な能力だな。まぁ呼んだの俺だけど)
霊斗は走っていた
幼馴染の天音を誘拐した車を追いかけて
どこに行くかもわからないというのに、がむしゃらに
「クソッ…!夜斗!」
「おう。こい、夜刀神」
「牙装!」
2人は並走して走る
夜斗が先行して空を飛びつつ追いかけ、霊斗は屋根伝いに移動する
「うぐっ…」
「夜斗!?」
霊斗は突然墜落した夜斗に駆け寄った
夜斗の足は地面と衝突した衝撃で砕け、胸部からは血が吹き出す
「俺じゃ治せない…!」
「いけ…霊斗…!天音を、助けて…やれ…!」
「けど…!」
「死神、を…ナメるな…」
夜斗は意識を失う
当然本来であれば夜斗が死ぬことはない
死神の能力により、死神化してるときは完全に不死身だからだ
それを失念した霊斗は、先輩かつ従姉であるレインに電話をかける
「レイン!夜斗が…!」
『どうしたの?』
「夜斗が撃たれて…!」
『了解、すぐに行くよ』
その声を聞いてひとまず安心した霊斗は、Tシャツを破り夜斗の胸の傷にあてがう
「ないよりいいはず…。生きててくれよ、夜斗」
霊斗はまた走り出した
吸血鬼の能力をフルに活用して、天音の霊力を探し当てた
それは海岸の倉庫だ
「急がねぇと…!」
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