第13話
「夜斗様、夕飯が完成いたしました」
14日。霊斗と仕事をする最後の日
夜斗は愛莉お手製の夕飯を食べ、外に出た
「よっ!」
「霊斗…待ってたのか」
「最後くらい、来てやろうと思ってな。行くぞ」
「おう」
夜斗は霊斗と共に事務所に向かった
夜斗の記憶が正しければ、今日の仕事は夢魔の討伐
そしてそれは夜斗にとって、面倒なものだ
「思えばチームになったのは2年前か」
「5年だ。お前が誘ったんだろ」
「そうだっけ?記憶が薄いぜ」
霊斗はそう言って笑った
そんな霊斗に違和感を感じながら、夜斗は歩く速度を少しだけ早めた
「夜斗、歩くの早いな」
「いつもだろ」
「それもそうか」
足早に速度を合わせる霊斗
夜斗は普段使わない道を使った。少し遠回りの道だ
霊斗はそれに対し、何も言わない
当たり前のように夜斗についてくる
「夜刀神」
夜斗は神機を召喚し、ためらいなく霊斗を切り付けようとした
が、かなり余裕を持って回避される
「危ねえな…何すんだ」
「お遊びはここまでだ、
霊斗が驚いたような顔をしたあと、ニヤッと笑う
路地には二人しかいない
否、そういうように認識させられている
「なーんだ。つまんない」
真上から降りてきたのは、黒髪の少女
霊斗の幼馴染で、レインも彼女を知っている
「これだけ共に生きれば違和感くらい気づく。浅はかなんだよ、サキュバスが」
夜斗は夜刀神を握る力を強める
霊斗は操られているのだ。幼馴染である天音―――夢魔によって
「ありゃま。もう少しイケると思ったのに」
「…まぁいい。お前を殺せばいいだけの話だ」
夜斗は夜刀神に流す魔力を増やした
すると、夜刀神が縦に真っ二つに割れた
そして柄の頭を中心に、片方が180度回転して、両端に刃がついた槍のような形状になる
そして柄を覆うように刃が形成されていく
「神機解放・夜刀神氷輪月華」
「…それが、解放なんだね。今まで私どころか、霊くんにさえ見せてない神機の真の姿…」
「……今なら許してやる。霊斗を解放してお縄につくならな」
「そんなことできないよ。だって、霊くんのためだからね!」
霊斗が牙装を纏う
夜斗は高揚感を抑えながら、デュアルソードとなった夜刀神氷輪月華を構えた
「素で戦って勝てる相手でもない、か」
幾度もの衝突を経て、夜斗と霊斗は対峙を続ける
夜刀神は傷一つなく、叢雲はもう破損寸前
しかし牙装は持ち主の魔力で自己修復するため、破壊は現実的とは言い難い
夜斗は作戦を変えた
(如月)
【おう】
(俺と霊斗、天音を巻き込んで駅に連れてけ)
【了解。きさらぎ駅、発動】
美羽の隣で、如月は能力を起動した
夜斗・天音・霊斗は異界であるきさらぎ駅へと転送され、荒廃した地に立つことになる
「…これは…!」
「きさらぎ駅。俺が使役した怪異の能力だ。素の霊斗なら、これを使える状態で俺に喧嘩を売ることはしないだろうな」
幻覚を操るのが如月の能力の真髄だ
しかしその幻覚は実体があるため、傷つけばここから帰っても残る
「さぁ、死にたいバカはどこだ?」
夜斗は笑いながら言う
暴走を示す黒の炎を身に纏いながら
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