第12話
「終わった…死ぬほど疲れた…」
「報告書を書くの本当にめんどいなぁ」
夜斗と霊斗は深夜の町中を歩きながらそうボヤいた
点滅する蛍光灯が、頼りなく夜道を照らす
しかし二人に暗さは関係ない。夜斗はスキルで、霊斗は吸血鬼の能力でそれぞれ暗視が使えるからだ
「しっかしあの内容でよかったのか?バリバリ嘘だろ」
「真実書いてみろ。美羽の首が物理的に飛ぶぞ」
「それもそっか。夜美さん、訳知り顔だったけどなぁ」
報告書に書いたのは、きさらぎ駅が再発生し一般人を取り込んだということ
それと、美羽が単独で助けに行ったところ囚われ、夜斗・霊斗・鏡花で助けに行ったということ
その2つが大まかに書いてあるだけだ
「さーて、今日の昼は夜斗に奢ってもらうかなぁ。後輩が起こした事件の対応手伝ったわけだし?」
「…そうだな、ラーメンなら出してやるよ。それに、別の問題はある」
「…ああ。白鷺がいる以上、お前はまだ演技を続けなきゃならんもんな」
如月が助けた白鷺は、如月に記憶を消された上で自宅のベッドに投げ込まれた
しかし、夜斗と霊斗、及び鏡花と美羽への潜在的な恐怖が残っているという
それだけで奏音から手を引くとは思えないのが現状だ
「…夜斗。一つ考えがあるぞ」
「なんだよ」
「白鷺の会社を潰すんだ」
「どうやって?」
「そんなもん死神様が何とかするだろ」
「具体的な考えはない、と…」
夜斗はため息を付きながら頭を抱えた
そして何かを思いつき、不敵な笑みを浮かべた
翌日、夜美に呼び出された夜斗と美羽は、事務所近くの喫茶店に来ていた
「…」
「…」
二人の間に会話はない
仕方のないことなのかもしれないが
「お待たせ二人とも。ちゃんと時間通りだね、よしよし」
夜斗と美羽を撫でる夜美
夜斗は少し顔をしかめ、美羽は複雑そうな笑みを浮かべた
「今回来てもらったのは、辞令を届けるためだよ。そのために休日わざわざ呼び出すなんて
「辞令…ですか…?」
解雇を覚悟した美羽が強張った声で言う
「そそ。美羽ちゃんは少し派手にやったからね」
「はよしろ」
「はい…」
夜斗に急かされて、夜美は2枚の書類を夜斗と美羽にそれぞれ1枚ずつ差し出した
そこに記載されていたのは…
「私が、夜斗先輩と…?」
「霊斗にも言えよこれ…。一応聞くけどなんでこうなった?」
「んー…。簡単に言うと、美羽ちゃんが夜斗以外に懐かないからかな。霊斗とペアにしても仕事にならないだろうし、鏡花ちゃんと組んでも多分能力の上でやりにくさがあると思うよ」
「待ってください所長…。私は、如月を使って―――」
「ほい、そこまで」
美羽の隣に座った夜美が、泣きそうな美羽の口元に人差し指を当てた
それ以上言うな、ということだ
「報告書には、美羽ちゃんが一人で一般人を助けに行ったって書いてあるの。夜斗たちが助けに行ったとしても、死神として1人前なんだよ」
「え…?」
「夜美には一応全部話した。その上で報告書にはそう書いたんだ。俺の独断ではない」
「そーゆーこと。冥賀より上の人には、美羽ちゃんが1人で一般人を助けに行ったけど、力不足で捕まって夜斗が助けに行ったって言ってある。だから、ホントのことは言っちゃだめ、ね?」
夜美は優しい笑みを浮かべて、美羽から手を離した
美羽は夜美を見て、夜斗を見て、辞令書を見た
「今後は、夜斗の下で勉強しつつ頑張ってね。まぁ二人一組なのに1人で飛び込んだから若干のペナルティはあるけど、全部夜斗に押し付けといたから」
「後輩の失態は先輩の責務だ。それに、反省文で済んだしな。見捨てていいのかって冥賀の上に言ったら罰則減った」
夜斗はそう言いながら注文したチョコレートフラッペを口にした
そして夜美に渡された指輪を眺める
「…何これ」
「異性との連携に必要な魔導具だよ。ついでに、その子の危険を検知してくれるの」
「何故指輪型…」
「それは…その、なっちゃんが…未婚の女性がもらって嬉しいものってアンケートで2万枚回答送ったから…」
「何してんだ長谷川さん…」
長谷川というのは夜美の同期で、夜美と同じく別の事務所の所長をしている
未婚の20代前半で、既に結婚している夜美にしばしば嫉妬することもあるという
「…美羽」
「は、はい」
「15日付でパートナーだ。ついてこい、そして俺を超えろ」
「わかりました…。やってみせます!」
夜斗は美羽の指に、指輪を嵌めた
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