第9話
電車内、白鷺は
「…ここ、は…。寝ていたのかな…」
終点まで寝てしまったのか、周囲は真っ暗で車両の電気さえ消えている
とはいえ白鷺のためなのか、駅のホームに面したドアが開けられており、かすかな蛍光灯が薄暗く真下のみを照らし出していた
「…駅を出よう」
立ち上がり、電車の外に出る白鷺
ホームから見渡すと、そこは閑静な住宅地だ
しかし和風の家のみで、今どきのモダンさは微塵もない
それどころか、全ての家の電気は消されており、さらに窓には木の板が貼り付けられた上から鉄格子が嵌め込まれている
(なんだ…これ、何かから逃げてるみたいな…)
駅の名前はかすれていて読めない
ゆっくり歩き、駅の外に出た白鷺は街を歩き出した
夜斗の携帯電話が鳴動した
着信者は霊斗だ
「霊斗か」
『夜斗!怪異の気配だ!駅ホームから異界につながってるらしくて、可能性としては…!』
「きさらぎ駅…!白鷺が巻き込まれたのか!」
『多分な…!美羽さんも巻き込まれてる可能性が高いぞ!』
「チッ…!鏡花はそこにいるな!?」
『やっほ、やーくん。夜美さんから指示があって、私たちは神機を解放してでも美羽を救出することになってる。白鷺は、日頃の行いから放置してもいいって言ってる』
『まぁ、妥当だよなぁ…。夜斗あとどれくらいでつく?』
「3秒だ」
着地したのは霊斗の真横
衝撃と風で霊斗のマントが揺らめく
「行くぞ。……どうやって?」
「線路を歩くしかねぇな。行けるかどうか運だけど」
ホームを飛び降りた霊斗が夜斗と鏡花を見上げる
鏡花はスカートを抑えて霊斗を睨んだ
「…やっぱり、変態」
「ち、ちが!夜斗も夜刀神構えないで!」
「行くぞ」
「了解。ヒビキ、出撃する」
鏡花のコードネームはヒビキ
夜斗が与えたもので、過去には夜斗が使っていたものだ
後々『ジャックザリッパー』からもじったジャックというコードネームに代わったが、その前は自分の好きな名前をつけていたためヒビキだった
「…空気が違う」
「総員、第二種戦闘態勢。警戒を怠るな」
「「了解」」
夜斗も神機を肩に担ぎ、油断しているように見せかけてスキルを用意していた
魔力を固めて打ち出すスキルで、脳に当てれば大抵の人間は気絶する…というものだ
「トンネル…」
「行くしかねぇな」
「行けば、2人いるかも」
「だな…。走るか」
鏡花は白いパーカーにスカートだ。ニーソックスを履いているが、スカートがめくれたときの防御にはならない
そのため夜斗が抱えて走ることになった
「死神化」
「吸血鬼化」
夜斗のコートがローブに代わり、足が透けていく
そして白い骸骨の仮面を装着し、大凡死神と言われてイメージされる容姿になった
霊斗は牙が伸び、マントが無風ながらはためきバタバタと音を立てる
【頑張って追いつけよ、霊斗。俺飛んでるけど】
「ズルくねそれ」
2人は高速移動を開始した
時速にして100kmほど。爆発的な加速から速度を維持して線路を走り抜ける
『やーくん、電話きてる』
【こんなときに…!】
『待って…これ、白鷺って書いてある』
【白鷺が…!?】
『冬風!助けてくれ!』
「どうした!」
仮面を外し、声を普通の状態に戻す
そもそもあの仮面は声を変えるための魔導具であり、変える必要がなければ外せばいいという便利なものである
『女が…女が剣を持って追いかけてきて…!』
「今どこにいる!」
『き、きさらぎ駅…?とかいう駅の近くにあった海岸!え…う、うわぁあああああ!!』
「白鷺?白鷺ぃ!」
「…まずいか?」
「一般人に被害が出た」
夜斗は仮面を被り直し、鏡花を抱える力を強めた
【ヒビキ、歯を食いしばれ。霊斗、死ぬなよ】
「…は?お前まさか…」
【夜刀神、時空間転移しろ!】
3人の姿が突然、トンネル内からかき消えた
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