04 &α

「ね。わたしの演技すごいでしょ。普通に街中歩いても、わたしがあの役者だって、誰も気付かない」


「すげえよおまえは。ようやるよ。ほんとに」


「死亡説が流布してるらしいね?」


「まあ、いいんじゃねえか。死なせておけば。実際一回死んだわけだし」


「いやあ。あのときはほんとに。びびったびびった。人間って、呼吸をやめると、死ぬんだね?」


「自分で自発的に呼吸をやめて心臓止めるやつなんて、たぶん世界中どこを探しても、お前しかいないと思うぞ」


「そんなにほめないでよ」


「ほめてねえよ。本当に。本当に心配したんだからな」


「ほらまた泣くう」


「泣くだろ。愛の告白してそのまま死ぬばかがあるか」


「心臓は止まってたけどね。聴こえてたよ。あなたの声。だから、戻ってこれたの。ばかやろう、戻ってこい、って」


「そうか」


「あなたがいるから。わたしは、何者にでもなれた」


「そうだな」


「でも、もう。あなたのものになる。こっちが本番なの。役者としてのわたしは、死ぬわ。ここからは、役者としてではなく、一人の女として」


「ああ」

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