For 『 』
「それって、おじさんが死んじゃうってことでしょ!ここで死ぬつもりなんでしょ!嫌!一緒に帰ろうよ!」
「出来ません」
「どうして?だって、おじさん、死んじゃうんだよ?」
「俺は、彼らを地獄に落とした罪を贖わなければいけません。俺が死ななければ、家族は永遠に救われない。ずっとここで死を繰り返す。それを、俺は見過ごすわけにはいきません。それを、知ってしまいましたから。ですから、貴女と一緒に帰ることは、出来ません」
「けど、こんな方法を間違ってる。もっと別の方法があるよ!おじさんが死んで、はいおしまいなんて。それで、魔術が終わって、みんな死んじゃうなんて。嫌だよ!確かに、この魔術を何とかする方法はこの屋敷にはなかったけど……おじさんが行ったことない場所に、あるかもしれない!」
「その間、彼らは苦しみ続けるとしても?100年間の旅で見つからなかったのです。魔術を管理する一族の家の中にもなかったのですから、他の場所にあるとは思えません。ですが、貴女の言う通り、探せば見つかるかもしれませんね。人が生まれて死ぬぐらいの短い時間で、世界を全て見るなんてことは不可能ですから。ですが、俺は……これ以上の方法がもう浮かばない。長く、長く生きました。普通の人間なら、もう大往生ですよ?」
「お願い、おじさん、諦めないでよ。生きることを、探すことを諦めないで……。わたしも手伝うから、お願い!一緒にここを出よう?きっとお兄さんも、おじさんに死んでほしくてこの鍵を託したわけじゃないよ!本当に死んでほしかったら、きっと今頃、おじさんは。っ……!だから、だから!みんな、おじさんに生きてほしいって思ってるはずだもん!お願い、生きてよおじさん。死んでほしくないの!」
「ええ、そうでしょうね。彼は俺に出て行ってと言いました。言ってくれたのです。でも、俺は__。彼らの地獄と苦痛から目を背けることを、正しいとは思えません。俺は、あまりにも愚かな人間でした。たくさん間違えた。間違え続けて、今日まで生きてきたのです。過ちは正さなければいけません」
「誰だって、間違えるよ……!奥さんを助けたのも、間違いだったっていうの?違うよ!絶対に間違ってない!だって、おじさんと、おじさんの家族がいい人で、とても優しかったからなんだよ!それを間違いだったって、わたしは思いたくないの!奥さんは、幸せに生きたんだよ!ずっと、大切な人を想ってたの!」
「……」
「ばあちゃんは最期まで、ここにはいないじいちゃんのことを想ってたって、わたしは幸せだったわ、って言って眠るように亡くなったって…お父さんとお母さんからいっぱい聞いてた……。お母さんもお父さんも、ばあちゃんのことが大好きで!ばあちゃんみたいな心優しい人を助けた、おじさんは間違えてない。ううん、たとえ間違いだったとしても。どっちでもいいの。おじさんも、おじさんの家族も、とっても正しくて、どうしようもなく善い人だった。おじさんは悪い人なんかじゃない!」
「……」
「だから、お願い。死なないで、一緒にいてよ……。わたし、おじさんがいないと、全然駄目なの……教科書見ても判らないところいっぱいあるし、道端に咲いていたかわいいって思ったお花の名前も知らないの。他の国の歌を聞いても全然わからないし、歌詞を見てもさっぱり読めない。おじさんがいないと、わたし、わからないことだらけなの!おじさんにもっと教えてほしいよ……」
「……っ……」
「行かないで。いかないでよ。わたしまだ一緒にいたい。あなたと一緒に生きていたいよ!わたし、頑張るから!おじさんに頼りっぱなしじゃなくて、おじさんを支えらえるように頑張るから……」
「……貴女は、本当に立派になりましたね。俺は心から誇りに思います」
「……やだ……やだよ……」
「貴女がこの世界で生まれ落ちてくれたこと。そして何よりも他の誰でもなく、俺たちと娘夫婦のところに来てくれたことを、本当に心から感謝しています」
「……お願い……」
「ありがとう。……ありがとう」
「……~~っ!」
「俺が居なくても」
「貴女は、大丈夫」
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