シャスタデージーの花言葉

いつもの三人の通学路。

また他愛もない話をして学校に向かう。

「明日から夏休みか~。いつもなら俺は明日からイギリスだもんなあ。なんか変な感じ。」

「俺らもだよ。夏休みに春馬が日本にいるの変な感じ。」

「来年はどうしたって道が別れるだろうから最後の夏休みだね。三人でいれて嬉しい。」

「二人は進路どうするの?」

「俺はダンスの専門かな。今回のソロステージうまく行けばいいところ紹介してくれるらしいから。そういう春馬は?大学?」

「俺は大学かな。行けって言われると思う。あとは、趣味で小説書いていたい。」

春馬も高校に入ってから小説を書き始めて今はネットに公開して読者を増やしている。

「小説家にはならないの?」

亜門が聞く。

「さすがに親に反対されたよ。」

「でもいいじゃん。二人共そうやってなにかに没頭できて。私なんにもなくてさ。もうこのまま就職しようかなって。」

「美羽はさ、優しくて面倒見がいいから保育士とか教員とか、後はマネージャーとか?人を補佐する仕事向いてるんじゃないかな。」

「さすが春馬先生!美羽のことがよくわかってる!」

亜門が茶化す。

「人の補佐か…。」

悪くないなと思った。


終業式が終わり、いつもより早く下校の鐘が鳴る。

「美羽~ちょっと来て!」

帰り際、愛紗に呼ばれた。

「なに?」

非常階段に呼ばれた。

「あんたが邪魔なの。」

そう言うと愛紗は非常階段から校舎に入り、鍵を締めた。

「ねえ!なにすんのよ!」

いくら扉を叩いても誰も来ない。

下に降りても南京錠で固定されている。

美羽は携帯電話を取り出したが連絡できる人がいない。

「非常階段来たの初めてだな…」

非常階段の前は大きな木が二本立っている。

その二本の木の隙間から校門が見えた。

すると遠くに見覚えのある人影。大好きな二人と大嫌いな二人。

涙が止まらなかった。

「本当に私って邪魔なんだ。」

同じ境遇で同じ時を過ごしていたと思っていた。大好きな二人にはそれぞれ夢があって、人気者で。

いつからだろう。

私だけが取り残されて、気づかなくて。

もう一度扉に手をかけてみると、愛紗に閉められたはずの鍵が掛かっていなかった。

ドアが開いた。

何もなかったかのように、でも何もなかったよりは誰かに助けられたように感じた。

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