第5話 私

私は力なく、膝から崩れ落ちておりました。

床というものが、こんなにも冷たいものだという現実を知りました。 まるで氷上に取り残された小舟の木屑の様です。

春夏秋冬問わず、枯れ葉の様にはらはらと行くあてを探す木屑は、人を殺め、自らのココロも殺めてしまいました。

私は二度死んだも同然です。

どうか地獄へと突き落として下さい。

『普通』とは、こんなにも醜くて錆びついているものとは存じませんでした。

私もきっと、生きていたなら数知れぬ罪を犯し、その都度懺悔しては同じ過ちを繰り返していたのかも知れません。

天命を全うした生涯ではなくとも、私はこの53番街で人を知る術を見出せました。


私は今、美羽ちゃんや海くんに会いたい。

無性に会いたいのです。

どうか光の先に、私を導いてはくれませんか?

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