第32話 涼音の想いの大きさ

私には大好きな人がいる。その人は強くて、優しい言葉をかけてくれる。そんな人だ。だから、覚悟はできていた。色んな人と接していけば、何人かは彼のことを好きになってしまうのではないか・・・でも、麗華さんに会ってちょっと怖くなってしまった。彼は私に好きと言ってくれた、それはとても嬉しいことだった・・・でも、いつかそれが他の人に向いてしまうのではないかと思うようになってしまった。だから私は美樹さんにちょっとしたわがままを言ってしまった。


「美樹さん・・・お願いがあるんだけど」


「ん?何かしら涼音」


「今度の記者会見でつくボディーガードさんを爽侍くんにして欲しいの」


「は?なんですって?」


「大丈夫、爽侍くんなんか武術習っててそこら辺の人よりは全然強いって・・・爽侍くんの友達が言ってたから」


「そうは言ってもねー、んー・・・」


美樹さんは、こういった私のわがままにも真剣に考えてくれる。本当にこの人がマネージャーで良かったと、心から思う。


「わかったわ、近くにもう一人つけるから。それならどうか社長に確認とってみるわ」


「あ、ありがとう。美樹さん」


私は卑怯だと思う、誰か爽侍くんの魅力に気づく前に私のそばに置いてしまおうと考え行動に起こしてしまっていたのだから。


それでも爽侍くんは


「迷惑じゃないか?」


真っ先に、私の心配をしてくれました。


「大丈夫です。一スタッフとしてだったらなんの問題もないって美樹さんが言ってました」


「そうか・・・じゃあ、やってみるよ」


ここも、私の卑怯さが出てしまっていたのだと思う。だって、彼の学校での過ごし方を見ていればなるべく目立たないように動いていたことなどすぐにわかりましたから。


「はい、よろしくお願いしますね。ちゃんと私のこと守ってくださいね?」


「ああ、もちろん」


それでも彼は優しかった、底抜けに明るい笑顔を私に向けてくれていた。


ここでも私は考えてしまっていた。こんなに想っているけれども、これは私の一方的なものなのではないか・・・彼は本当は鬱陶しく想っているのではないか。そういう風に考えてしまっていた・・・あの事件が起きるまでは



「オラっ、おとなしくしろ‼︎」


「う、うー・・・放せよ‼︎」


「そ、そうじ・・・」


「涼音‼︎」


この時私は完全に公の場であることを忘れていた。美樹さんに言われなければ、爽侍くんに迫っていただろう。


「あ、美樹さん・・・でも」


「今は我慢してなさい」


正直何が起きていたのかは覚えていない。その後の質問にもなんて答えたのかも・・・


でも、爽侍くんが近くで見守ってくれていたのだけはわかった。


その後も事務所で爽侍くんに色々説明をしたんだけど、終始上の空だった。家に帰ってからも、なかなか眠れず・・・次の日を迎えてしまった。


「はー、全然眠れなかったわ」


そういえば爽侍くんはどうだったんだろう


「入るわよ・・・」


まだ寝てるみたい・・・ん?何かしら、何かうなされてるみたいだけど


「う、うーん」


す、すごい汗本当に大丈夫なのかしら


「あ、起きた・・・」


「な、なんだ・・・涼音か」


「ん?そんな顔してどうしたの?」


な、何?すごく怖い顔してるんだけど・・・


「い、いやなんでも・・・」


「もー、そんなこと言って・・・そんな汗かいてたら心配にもなるでしょ」


「え?汗・・・うわっ、なんだこれ」


気づいてなかったのね、そんなに汗かいてるのに


「どうしたの・・・もしかして怖い夢でもみたの?」


「そんなわけ・・・ないだろ」


あれ?もしかしてほんとに・・・


「それより、お寝坊さんね」


「は?」


「もう10時よ」


「マジか、今日が休みでよかったな」


「昨日あんなことがあったんだもの、疲れてたんじゃない?」


「そうかね・・・お前は、大丈夫だったか?」


「うん、しっかり眠れたわ」


ぜんぜん眠れなかったけど、そのくらいの嘘はいいわよね・・・あれ?なんかじっと見られてるんだけど


「そうか・・・じゃあ、ちょっとこっちに来てくれ」


「え?・・・何?」


「もう、朝ごはんには遅いし・・・昼までゆっくりしようと思ってね」


「うん・・・」


な、何かしら一体何を・・・


「ほら、頭こっちに・・・」


「え?・・・それって」


きゃー、ちょっと・・・ほんとに?


「一度やってみたかったんだ、膝枕」


「え・・・うん、じゃあ」


なんか・・・良いわねこれ


「なんか落ち着くね」


「そうなのか?」


「うん・・・ほんと・・・に」


「お」


想ったよりも気持ちが良くて眠ってしまったみたい。


その後も、麗華さんが家にきたり美樹さんから電話があったりと色々騒がしかったけど・・・今までこんなことなかったし、こういうのがずっと続けば良いなーなんて思ったりした。


そしてこれからも爽侍くんと一緒に・・・




【あとがき】


あ久しぶりです。なかなか更新が続かなくてすいません、ストックがなくなりちょっと滞りつつありますが絶対にやめません。ということで、もっと読んで評価していただけると嬉しいです。あ、感想もお待ちしています。




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