第6話 人のふり見て、、、

クラスに1人はいる存在——オタク。


あくまでも長女の持つイメージではあるが、オタクは面倒くさい。なぜならば、返答次第では殺られる可能性があるからだ。「ーと思うよね?」などのYesNo疑問文ならまだいい。とりあえず頷いとけばどうにかなる。しかし、「どう思う?」というのが難しい。聞き手は自分の中での答えを持った上で聞いているため、それに沿わなければ機嫌が悪くなる、テンションが下がる、怒るなどちょっとめんどくさくなる。



長女のクラスには、推しているものはバラバラであるもののオタクが多い。その中で、長女は様々なジャンルに精通しているという自負があった。そこで友達と様々な界隈について語る日々を送っていた。


アニメオタクの隣の席の子が推しているキャラクターの誕生日の昼休み。

そのアニメはゲーム化されているなどそこそこ有名なこともあり、クラスにも推している人が数人いた。そんな彼らによって繰り広げられる会話が長女の耳に入ってきた。


「うちさー、1発でゲット出来てんけどー、マジ神くね?」

「やば!めっちゃ羨ましいんだが!?私天井までやる覚悟で引いてんけど!金欠つらすぎ乙。」

「あれ、SSRなのに%#$?@&……」


ここまでが長女がギリギリ理解出来た会話であった。この後は、全ての会話が右耳から左耳に流れて いってしまった。それほどまでに知らないオタク特有のワードが大量に出てきた上、早口。もはや文の切れ目がわからず、日本語かとさえ疑ってしまう程だ。会話はどんどん進んでいき、途切れたところで友達が言った。


「ね、長女はどう思う?」


「えっ…?」


長女は絶句した。

私はいつからこの会話に入っているとされていたのか。そしてこの高度な会話をなぜ私が理解出来たと思うのか。


そして長女は思った。これだからオタクは、、と。


しかし、長女は知らなかった。



ーその日の朝。

長女は興奮していた。


「インスタみた!?○○様の顔面、今日も尊すぎて死ねるっ!はぁーっ、、天才すぎて無理!てか髪の毛ちょっと外ハネしてんのかわいすぎかよ!?まじで○&j@£€…」


「ははは、、」


右に座っている友達の愛想笑いに長女は気づかない。いや、気づいたとしても口は止まらないだろう。


「てかこの服似合いすぎん!?よねぇ?」


「、、うん!まじ似合ってるかっこいい!」


「やっぱぁー!?てかこのアングルどう思う?」


「…え?」


友達は思った。アングルとか知らねー。YesNo疑問文じゃなきゃキツいってー。



これだからオタクは、、。





…てか、今日ウチの推しの誕生日なんやしウチの話聞いてよ。

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