コロナ禍 品薄

 マスクが根こそぎなくなり、それが周知の事実となった2月頃。

 これでようやく落ち着くかと一段落……するわけもなく、次に様々なものが品薄になり始めました。


 そう、アルコールの類いです。

 他にも体温計、ガーゼ、精製水などがあげられますね。


 連日店には、それらを求めてやってくる客が増えました。ただでさえお客の多い店なのに、それはそれは大にぎわい。ここにコロナ感染者がいたらクラスター間違いなし(当時クラスターという言葉はあまり馴染みはありませんでしたが)というくらいに、人が多い。


 そして人が多いということは、つまるところレジの稼働率が上がるわけで。限られた人員はすべてレジ要員に、電話がなったら調剤室の事務さんがとってくれ、接客がはいればレジを止めてそっちにいかないといけない。


 しかも各自仕事が残っている状態です。なにもレジばかりが仕事じゃないんです。むしろ私の勤めている会社は、スーパーのようにレジ専門の人を雇っていません。そのため売り場のメンテナンス、品出し、補充、発注等々……そういった仕事をしながらレジの対応も兼任しないといけません。


 私のいた店は特に、朝と夕方が忙しいかったです。通常ドラッグストアのピークは17-19時頃ですが、なぜがうちの店は朝開けてすぐの10-12時までも同様のピーク時間となり大慌てです。


 これにより何が起こるかというと、商品の補充ができなくなります。人がいない、というのが最大の原因なのですが、朝すぐに品出しをしても、とてもじゃないが終わらないんです。


 そしてそのせいで、いわゆる店内欠品が発生します。バックヤードや倉庫に在庫があるのに出せずに品薄になってる状態を言います。


 なら出せばいいだろ?と思われた方々。

 そうもいかないのです。何せピーク時間ではレジフル稼働で人がいなくなります。なんとか従業員4人いて3人レジにいっても、残りの1人はほとんど接客に捕まります。これが現状です。品出ししていても、急いでいるからはやくレジに行け、と言われる始末。


 これじゃ、出したくても出せないんですよ。実際私は品出し中にレジにいけと言われたことはあります。正直めちゃくちゃムカつきました。


 ドラッグストアはどこもかしこもこみあってんだよ!!急いでるなら他の店行って!!……まぁどの店も同じようなもんだけどね。


 そんな言葉を飲み込んで、笑顔で接客したものです。


 このとき辺りから、自分にも異変が起こり始めました。どんなときにも笑顔を貼り付けられるようになったのです。例え心の底から怒り狂っていても。まるで身体と心が別れたような、そんな感じです。


 しかしこれは仕事上とても利便性がよかったので、当時は悩みもしませんでした。そういう特技なんだろうなぁ、くらいで。


 人手不足で品出しができない、できてもすぐになくなる。そして狂ったように右肩上がりの需要過多のため、発注数も狂いっぱなし。忙しさの中無理矢理発注するので、ミスして誤発注……なんてこともありました。


 人不足の中多忙→品が出せない→店内欠品発生→商品はないのか!というお客様の接客に捕まる→また品が出せない


 こんな悪循環が毎日です。私も働きながら目を回しました。

 でもこんな地獄みたいな状況が、さらに悪化したんです。


 そう……トイレットペーパーショックです。

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