コロナ禍 そして始まる地獄の1月後半戦

 中国爆買い者のお陰で過剰すぎる在庫は通常のものに戻り、売り場の人間は喜びました。しかし、どこか不安はあったのは事実です。


 それは、このまま中国で新種の肺炎騒動が収まらなければ、爆買い者が増え続けるのではないか、というもの。


 言葉は悪いですが、中国の爆買い者の買い方は品が無さすぎるのです。取りあえずあるだけ全部、買えるのが当たり前、そんな考えがにじみ出てる人が多いのです。全員がそうではないですが……。


 私の配属店舗は上に100円ショップがあるため客の数は他の店舗に比べてかなり多いです。おまけに店が狭いのでお客にはすぐ捕まります。


 免税が導入されてからずいぶん経ちましたが、いつもタイミング悪く中国人客に捕まる私は、必然的に免税担当になっていました。


 そのため、簡単な英語のフレーズは帰国子女の友人に聞いて覚えて、それを使う機会にも恵まれましたよ。本当にアウトプットって大切だなぁ、としみじみ思いました。


 話しはそれましたが、とになく人に捕まりやすい店舗で、なおかつ人員はかつかつ。レジは三台ありましたが、そもそも従業員が時間帯によっては3人とかザラでしたので、レジが三台とも稼働すれば接客に人が回せません。


 しかし中国人がこれからわんさかこられたらそうはいっていられない。高価なものは一切買わず、マスクのみを買う客が増加するのは目に見えていました。


 おまけに場所はどこだとかいくつまでしか買えないだとか、日本語英語交えて話していたら時間はいくらあっても足りない。その間にレジに長蛇の列……なんて地獄絵図になるのでは。そんな不安でした。


 しかしその不安は外れ、全く別方面で私たちは恐怖のどん底に落とされたのです。


 ……そう、日本人客の爆買いです。さすがにこの段階まで来ると在庫は過剰なものではないため、個数制限は1個などかなりきつくなっていました。正直、このときは日本人、というだけでなめていました。


 お一家族様と書いているのに家族で分ければいい、会計を分ければいいだろうと逆ギレをされ。貼り紙を貼っているのに、それは上の段で下の段では関係ないだろ、と意味不明な言い訳をされ。張り紙がそもそも見えにくい、貼っているのに見えない、だといちゃもんをつけられる……。


 マスクが品薄になってすぐは、列の並びで順番を抜かしただとかで客同士が喧嘩となり、整理券をもうけて「ここから先完売」と看板をたてても並ばれる始末。


 日に日になくなっていくマスクの在庫がついに底をつき、入荷も未定になれば今度はいつ入ってくるかの質問責め。


 この質問責めが本当に苦しかったです。

 当時はランダム販売ではなく、朝固定の販売でした。その方が、店としてはリスクがなかったのです。朝固定で売り切ったら、あとはないですとしか言えませんから。


 そんな中私が実際に「一人のお客様」から受けた質問が以下の通りです。


 Q.マスクはないのか?

 A.ないです。


 Q.入荷はいつか?

 A.入荷未定です


 Q.今日は入荷していたか?

 A.(入荷未定っていってるのに……)

 A.今日の入荷分は朝で終わってます。


 A.朝並んでたら買えのか?

 A.早い方ですと朝5時くらいからならんでらしてるようで……断言は難しいです。


 A.どんなマスクが入荷してるのか?

 A.それもまちまちで、私たちも当日確認してわかることなんです


 ここまでの質問を一人のお客様にされます。そしてそれが何人も何人も何人も……気が狂うかと思いました。そのうち、申し訳なさそうにすみません、と声をかけてくるお客様に条件反射でマスクはないです、と答えるほどになりました。


 差別するわけではないですが、まさか日本人でさえこんなに品のない買い方や質問をしてくるとは思わず、自国民にこれほど苦しめられるとは、1月終わり頃には想像もつきませんでした。


 だってマスクの次に、今度はトイレットペーパーから何から、本当になにもなくなったんですから。

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