第5話 敵か味方か
<東京都調布市国領付近にて>
ここは調布市の国領8丁目の狛江通りと品川通りが交差する交差点である。
その交差点で停止して、辺りを偵察していたのは、在日米軍第1軍団隷下
第7歩兵師団、第201戦場監視旅団(通称:BfSB)の
維持しながら停車していた。
BfSBで使っていた車両は
MRAPは移動指揮車両型で、他のMRAPとは違ったタイプの車両になっている。
通信機材が充実してるのと、被弾にも一般のタイプより強化されていた。
そんな編成からなるBfSBは、第7歩兵師団の作戦司令部からの命令で、府中霊園に
出現した奇怪現象を偵察する任務で出動していたのだが、30分前に通過した橋が
何者かにより破壊された事を司令部に報告している様であった。
「こちらフォックストロットリーダー、ズールゼロ応答願います」
「こちらズールゼロ、ノイズが酷い、何とかならないか」
「ノイズが酷い?こちらは鮮明に聞き取れている、何も問題はない、どうぞ」
「ならば、ゆっくり話してくれ、そうしないと聞き取れない」
「了解、30分程前に通過した橋の方から、爆発する音と煙を確認したのだが、
そちらで何か聞いているか、もしも、橋が破壊されていたら、撤退の指示を
任務終了までに考えててくれ、どうぞ」
「橋を爆破する話は、上からも自衛隊からも聞いてない、こちらで確認するから、
もしも、橋が通れないのなら、撤退する時は、キャンプ横田に向ってくれ」
「それと、フォックストロット悪い知らせだ、稲城にある米軍ゴルフ場に准将を
迎えに行った
「そりゃーありがたい忠告に感謝だな、十分に注意して進む、以上」
通信を終えた部隊長は、額から一筋の汗が流れていた。
隣のチームが作戦中に
部下を帰還させられるか、任務を達成できるか、色々な不安を掛けている。
その中でも一番嫌なのは、
苦楽を共にしてきた部下達が、たった一発の銃弾で命を落とすのだ。
それでも、戦いを止める事はできない、そこで止まれば全員が死ぬからだ。
部下を生きて連れて帰る、改めて、その思いを誓いなおし、部隊長は部下に
瓦礫と大破した車両を除けて、進むように命令していた。
(英語での会話でした)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おじさん、気をつけてね」
秋月さんは、そう言うと直ぐに2tトラックの運転席に乗り込み、エンジンをかけて
戦いに備えている。
俺は、道路に張り廻っている番線をしゃがみながら、市役所跡地に向っていた。
市役所跡地には、何時の間に現れたのか解らない、城砦があったが、規模はそれ程で
なく、精々イ〇ンモールの建物くらいの規模だったのだ。
その規模に住めるのは、多くても100人居るか居ないかだろう、そこの住民が化け物
共に襲われており、襲って居る敵も数は多くない、多くても100体と1匹だけだ。
その1匹が、問題なのだが、今は数が多い骸骨とゾンビを先に倒さないと、俺は確実に死ぬ。
俺の武器と言えば、家から持ち出した包丁と西友の園芸コーナーから貰ってきていた
剣スコップだけだったが、人間には生きる知恵と勇気・・・言ってて恥ずかしいが、
勇気あるのだよ・・・・・
やっぱり勇気は無し、知恵と策略がある。
近くの商店の前に括り付けてあった、特売品のノボリを取り外すと、ポールだけに
した状態で、骸骨共に槍投げの要領で投擲をはじめた。
流石に一本投げても、骸骨共は気が付かなかったが、続けざまに投擲をした為に
やっと気が付いてくれたらしく、俺を目掛けて走り出していた。
流石に100体近い化け物に、追い掛けられるのは、肝が冷えたが、それでも必死に
罠に誘い込む、俺は急いで1列目の番線を潜り、そこで路肩に置いてあったスコップを拾うと、化け物共に応戦する体勢に入っていた。
骸骨騎士の骨馬達は、番線が見えてないのか、凄い勢いで突っ込んできたが、全て
首が飛び跳ねて、あらぬ方向に首が飛んでいっていた。
そして、乗っていた骸骨騎士は、前のめりになって落馬し、落馬した所を俺が、手に
持っている剣スコップの一撃で、首を叩き斬られ、叩き割られ、突き破られ、
もう、数得ていられない程の忙しさであった。
そうしている内に、ゾンビトカゲが此方に向けて歩きだし、向ってきていたが、
番線トラップの前に骸骨騎士や骸骨にゾンビが群がっていたので、俺の所には
これないで足踏みをしていたが、急に後ろに下がると走りだし、俺を目掛けて
突っ込んできた。
流石にトカゲの前に居た化け物共は、トカゲに踏み潰されたり、吹き飛ばされて
絶命していたが、それは、トカゲの進路にいた化け物だけだ。
左右に分かれて、まだ30体は残りが居たが、今はそれ所ではなく、俺は直ぐに
秋月さんが乗っている2tトラックの荷台を目指して、掛けでしていたからだ。
トカゲは2列目と3列目も易々と破壊すると、最後の4列目の破壊を試みていた
所に、秋月さんがトラックをバックさせて、荷台に付いていた大型パワーゲート
をトカゲ目掛けて体当たりした。
4列目の番線を壊して、此方に進んできたトカゲは口を開けていた所に、パワー
ゲートが刺さり、トカゲは口を裂かれた状態で、荷台に刺さっていたが、まだ
息があった。
俺は荷台の中で、固定ベルトに摑まり揺れを凌いでいたが、衝突と同時に上あごに
なった状態のトカゲを荷台の中で眺めると、不意に笑いが込み上げてきて、高笑い
をあげていた。
「こいつは傑作だ、こんな状態でも生きてる、人間様を舐めてるから、こうな事に
なるんだよ」
俺は荷台の横の扉から顔を出すと、運転席に向けて、大声で秋月さんに指示を出していた。
「秋月さん、そのまま勢いを付けて真っ直ぐにバックしてくれ」
「うん、わかった」
そう言うと秋月さんは、徐々にスピードを上げながら、残っていた骸骨やゾンビを
薙ぎ払ってバックをしていた。
そして、市役所の交差点まで来ると、荷台のパワーゲートに刺さっていたトカゲも
体の3分の1を削り取られていたが、まだ息があったので、車が止まった時にスコップで止めの一撃とばかりに、脳天にスコップを突き刺して、トカゲを倒した。
だが、トラックが急発進した拍子に俺は、荷台の中でよろめいていた。
その後に、バキバキ、ドカドカと音が響いてきたのだが、これは秋月さんが
残敵を掃討していた音だと直ぐに、気が付いたから、荷台の横から顔を出すと、
容赦なく秋月さんは化け物達を跳ね飛ばし、そして、踏んづけていた。
運転席からは、秋月さんの声にならない嗚咽が聞こえてきたが、俺は合えて何も
言わずに、荷台で座り込み、タバコに火を付けていた。
秋月さんの興奮も収まり、俺はトカゲを路肩に蹴り落とすと、運転を代わり
城砦の正門に向って走らせた、正門は市役所の奥にあり、歩くより車で移動
した方が早かったからだ。
そして、正門を見やると、門の一部が破壊されており、中に奴等が侵入した
形跡があるので、警戒態勢のまま中に進入する事にした。
「おじさん、1人にしないでよ」
秋月さんが助手席から急いで降りてきて、俺が置いて行った事に抗議していたが、
俺は静かにと言う意味で、口元に指を立てて、しぃーっと伝えた。
城砦の中では、まだ戦闘が行われており、戦闘音が響いてきていた。
最初の建物の横から顔を出すと、そこには今にも殺されそうになっている獣人の
女の子が這って逃げていた。
直ぐに俺は飛び出すと、骸骨剣士を後ろから思いっ切り袈裟斬りで叩き斬り
獣人の女の子の一命を取り留めていたが、女の子は直ぐに俺のズボンを引き
こっちに来いとばかりに連れて行っていた。
奥に行くと、建物の中に篭城しているのだろうか、石作りの建物を取り囲む
形で化け物がいたのだ。
俺は直ぐ近くに居たゾンビの脳天をカチ割ると、周りに居た奴等は一斉に俺を
目掛けて襲い掛かって来ていた。
流石に10体近い敵を相手にするのは無理だったので、逃げながら敵を斬り倒し
て戦うしかなかったが、その内の一体が秋月さんに標的を換えて、秋月さん目掛け
襲い掛かっていた。
俺は戦いながら、秋月さんに撃てと何回も大声で言ったが、秋月さんはパニックに
なっている様で、拳銃を抜いてはいたが、腰が砕けたのか座り込みながら拳銃を前に
突き出して構えた状態でいた。
俺は必死に撃てぇーと叫ぶ、そして、鳴り響く銃声。
秋月さんの方を見やると、震えて泣きながら撃ち続けていた。
秋月さんに撃たれたゾンビは、顔に一発当たっている様で、秋月さんの前で
倒れこんでいたのである、続けて秋月さんに襲い掛かる化け物達は、銃声と
共に地に崩れ落ちていた。
俺の方も全て片付いたので、直ぐに秋月さんの元に近づいたのだが・・・・・
怖かったのだろうとだけ言っておく・・・・・
全ての敵を倒し終わると、物陰に隠れていた獣人の女の子は、石作りの建物の
ドアを叩きながら、意味不明な言語で話しかけていた。
そして、扉が開くと信じられないと言う顔の人々が、外に出てきたのだった。
俺は秋月さんに上着を下半身に掛けてあげると、そっぽを向いた状態で手を
差し出していた。
「おじさん、ありがとー」
泣くのか照れるのか、はっきりしない秋月さんは俺に、お礼を言うと上着を
腰に巻き立ち上がったのだった。
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