第4話 未知の敵との出会い


<長野県松本市:松本駐屯地>


「川野総理代行、総理代行が案じた通りになってしまいました」

「木更津駐屯地の第1ヘリコプター団隷下の第107飛行隊と第108飛行隊

を勝手に青泉副総理代行が動かし、習志野駐屯地で特殊作戦郡と第1空挺団

を乗せて、東京の荒川と多摩川に掛かる橋を一部爆破し、被災者の非難を

妨げてしまっています」


「佐藤君、こんな時はどうしたら良いと思うかね」

「はっ、やはり、青泉副総理代行の身柄を拘束し、事態が収まった後に

裁判で、この事件の捌きを受けさせるのが妥当と存じます」


そう言うと、佐藤は直立不動の姿勢で、総理の返答をまっていた。


「裁判になったとして、彼の罪はどんものなのかな」

「死刑は無いにしても、重くて終身刑が妥当と思いますが、軽ければ懲役10年

程度になると思います」

「それは軽すぎるよね、国民の皆様も誰も納得しないよ佐藤君」

「そう言われましても・・・私には、どうする事も出来ませんので」

「佐藤君、生き残った国会議員は、どのくらい居たのかな」

「まだ半数にも居ません、正確に言うと松本駐屯地に辿り着いている議員は100人も

いませんが、どうされたのですか」


佐藤は、川野総理代行を見やると、川野は床を向いたままの状態で、何やら

考え込んでいた。


「緊急閣議を至急、開く準備を進めてくれたまえ」

「ですが総理代行、こんな状態で閣議を開くと言われましても、決議で決まった

事が後日、有効に働くとは思いません」

「佐藤君、君は政界をまだ解ってないね、そんなのは、ゴリ押しで何とでも

なるのだよ、それが政治と言う物だ」


佐藤は、困惑した表情のままだったが、総理代行の言う事には逆らえず、

困惑したまま、部屋を後にしていた。


、いい響きだね~」


川野は、そう呟くと窓の外を見みて、考えにふけっていた。



ーーーーーーーーーーーーーー


調布市役所方面に近づくにつれ、戦闘音は激しさを増している、激しい衝突音

や怒号、そして泣き叫ぶ女性の声、それらは、戦闘の激しさを物語っていた。


俺達は、調布駅南口の大通りから、脇道の細路地から市役所方面に慎重に進み

辺りを窺って前進していた。

そして、唐突に起こる衝撃の振動と音が、俺達の前進を躊躇させる。


「おじさん、行くのを止めない」

「怖いんだけど・・・」


秋月さんは、衝撃と音で直ぐにでも逃げ出したい気持ちで一杯の様であるが、

女性と思われる泣き叫ぶ声を聞いてしまからには、どうにかして助けたかった。

こんな壊れた世界でも、人助けをするとは思ってなかったが、人間ってのは、

土壇場になると、思わぬ行動力を発揮する生き物なのだと、つくづく痛感していた。


「君は、人助けをすると言っていたじゃないか」

「あれは・・・こんな怖い事をする為じゃないよ、家で引き篭もって避難が遅れた

人を救助しようって意味だったの」


秋月さんの人助けとは、つまりは逃げ遅れた人を助けて回るって事だったみたいだが、そんな時でも、今回の様な事は起きる可能性はあるのだ。

此処で、襲われている人を見捨てては、これから先も見て見ぬ振りをする事になる。


「見て見ぬ振りをするって、それは違うよ、おじさん」

「命があってこそ、他の人を助ける事ができるんだよ、おじさん」


そうか秋月さんは、まだ若いから自分の命が大事だったのか、其れに引き替え俺は

何も失う物がない、無敵の世代だから、もう命を失っても悔いは無いと言う、考え

だった。

そこの違いが、行動の違いになっている様だ。

危険に自分から飛び込む事は、理由も無くしたくは無いが、人助けならば、それだけで十分な理由になる。

もしも、それで命を失うとしても、それはそれで、今まで十分に生きたのだから

後悔も未練も何も無い、困っている人を助けて死ねる何って、カッコイイとしか

言えなかった。


死に方に美学を求めるのは、頭がおかしいのだろうか。

要訳すると、こんな感じになる。


「おじさん、何をブツブツ言ってるの、死に方に美学を求めるのは、頭がおかしいかって言ったの、おじさん」


どうやら頭の中で言ったつもりが、声に出てた様だ。


「おかしいわよ、おじさんの考え方は滅茶苦茶よ、逃げる事しか考えてなかったのに

いきなり、人助けに目覚めるとか、おかしすぎなの」

「俺も死にたくはないが、困ってる人を助けたいって気持ちはある、現に避難をしてる途中でも、困ってる人を何人も助けてたから、俺は逃げ遅れたんだ」


秋月さんに、そう言うと彼女は何やら考え込んでいたが、急に俺に向かって、

言い放ったのである。


「此処で死んだら、家族の仇を取れないけど、でも、此処でおじさんを失っても

敵討ちをする事は出来なくなりそうだから、おじさんに付いて行くわ」


不意に秋月さんの本音が、俺の耳に入ってきた事に動揺してしまい、俺は

秋月さんの頭に手を置くと、ポンポンと頭を撫で回していた。


「ちょっとおじさん、髪型がグシャグシャになるから止めてよ」

「君も、色々と抱え込んでいた事に、気が付いてあげれなかった」


俺は秋月さんに、そう呟くと、彼女は顔を下げたままの状態で、「止めて」と

だけ繰り返し繰り返し、言い返していた。

彼女の耳朶を見ると、真っ赤になって恥ずかしさを覚られないしている事が、

見て取れたのだ。


ーーーーーーーーーーーーー


俺達が細路地の出口から、市役所方面を見やると、市役所があった場所には

なんっと、小さな集落が建っていたのだ。

それも村と呼ぶには小さすぎだが、確りとした堀に外壁を完備していたので、

砦と呼んでも差し支えない見栄えである。


その集落を襲撃していたのは、奴等に生気を抜かれた市民と骸骨に骸骨騎士と

そして、凄く大きなトカゲの腐乱したいであった。

生気を抜かれた市民をゾンビと呼ぶ様に、秋月さんと決め、あのゾンビトカゲを

どう倒すかを2人だけの緊急会議で、急いで決めていた。


「おじさん、あんなのを倒すのは無理だよ、私達も死んじゃうって」

「いや、俺に考えがある」


そう言うと、俺は駅北口の近くにあった金物屋から番線ばんせんを何本も貰ってきて、

調布市 総合福祉センター前の道路に、コンクリートネイル番線針金を巻きつけた、

道路の端と端にネイルを打ち込み、高さは成人男性の首の高さに合わせて、設置していた。

そして、骨馬の首の高さにもコンクリートネイルと番線を設置しており、

それを二重三重に作り、罠を設置し終えると、調布駅南口のロータリーの近くに

あるコンビニから商品配送車2tトラックを借り受けて、横道にバックで乗り入れていた。


「おじさん、言われた通りに、逃げ道になりそうな脇道には、番線トラップを万遍まんべんなく、設置し終えたわよ」


俺がトラックをバックで止め終わると、直ぐに秋月さんが駆け寄ってきて、俺に報告

してくれたので、俺は彼女の頭を撫で回していた。

彼女は、俺が教えたとおりに、太い番線と細い番線を使い分けて、配置してくれたみたいで、この分で行くと、奴等は全滅させるのに対した時間は掛からない。

それと、彼女にはミッション車の運転の仕方を大急ぎで教えたのだが、やっぱり

ギアチェンジが出来なく、エンストを起こしてしまい、上手くバックが出来なかったので、見本をみせるが、理解ができないでいた。


「この左のペダルをゆっくりと離して行くと、トルクが掛かるから、クッと腰に振動が伝わる、それで、エンストしないでバックが出来るんだよ」

「ゆっくり離すのね、やってみるね」


何度かエンストをしていたが、やっと俺の言ってる意味が理解できた様で、クラッチが繋がったら、ブレーキを離して後ろにさがらせてみた。


「こんな感じかな」


この子って以外にも、車の運転に向いてるのかも知れない。

バックも真っ直ぐにさがれるし、感も悪くない、これは予想外だったが、

俺達が戦うのに、この技能があるとないのでは、生存率が違うだろう。

彼女も、それだけ必死だったから、これだけ短期でも覚える事が出来た

のだろうと俺は思った。


「さてと、秋月さんや、おじちゃんはトカゲさんを呼んでくるから、おりこうさん

にして待ってるんだよ」

「私は、そんなに子供じゃないもん」


子供扱いされた秋月さんは、頬を膨らませて怒ってはいたが、顔は真っ赤に

赤面させていた。


「人助けも、楽じゃないよな」


俺は大声で、そう言うと市役所に向けて走り出た。







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