第6話 価値ある情報

<都内上空にて>


「十条2尉応答せよ、こちらは木更津管制塔」

「こちら十条2尉です、只今、命令に従い帰還中です」

「命令変更を伝える、帰還命令は中止し、東京湾上空で空中空油した後に

調布市役所跡地に向い、そこに何があるかを調査されたし」

「了解しました、命令を実行します」


十条2尉が操縦するV-22は都内上空から、一気に東京湾に出ると給油する為に

上空で待機していた。


「十条2尉、上は何で命令を変更したんですかね」


そう訊ねるのは、副操縦士の下志津3尉である、十条と組んでから、まだ半年しか

経っていなかったが、この2人は趣味が高じてプライベートでも、よく遊びに行く

間柄になっていた。

だからだろうか、他のチームの操縦士と副操縦士より、砕けた話し方で話す事が

多かったが、仕事ではメリハリを付けていても、少し話し方がフランクになっている。


「さーなー、行けと言うなら行くしかないだろう、後ろのお客さんにも伝えないと

わるいからな、下志津3尉、わるいがお客さんに伝えてくれ」

「了解です」


そう言うと、下志津3尉は無線で特殊作戦郡の部隊長に無線で呼びかけ、命令変更

を伝えだしていた。

そして。下志津3尉の無線で困惑した表情の部隊長が、コックピットまで来ると、

操縦士の十条に話しかけている。


「こっちは特殊作戦郡と言っても、工作を専門にする班なんだ、戦闘に特化した

班でないのに、何をさせようって言うんだ」

「無線で聞いた話では、調布市の市役所が消えたから、その跡地に何が出来てるかを

調べて来いとだけしか言われてない、それしか上からは情報が降りてきていないんだ」

「そうか、俺達は上から、き使われるしかない様だな」

「そう言う事だよ、お互いに大変な仕事に付いてるから仕方ないよ」


十条と部隊長は苦々しく笑うと、お互いの仕事に戻って行った。

十条は給油機を待つ為に上空待機を続け、部隊長は命令変更を部下達に伝え

る為に後方のキャビンに戻ったのである。



ーーーーーーーーーーーーー


<調布市内にて>


「二等軍曹、だからさっきの交差点を左だと言っただろう」

「あははは、これは見事に迷子ですな、中尉殿」

「笑い事じゃないぞ、真剣に任務をしろ」


在日米軍第1軍団隷下第7歩兵師団第201戦場監視旅団(通称:BfSB)のFチームフォックストロットは市内で、迷子になって彷徨っていたのだった。


「二等軍曹、司令部に無線連絡した場所まで、大至急戻るぞ」

「了解」


無線で先頭を走っていた二等軍曹に伝え終わると、車列は甲州街道をUターン

して、来た道を戻っていた。

そんな折に、司令部からの新たな命令が下ったのだ。


「フォックストロットリーダー、応答願います、こちらはズールゼロ」

「こちらFリーダー」

「命令変更であります中尉殿、新しい命令書では、同市内の市役所が消失し

そこに新たに脅威が発生しているとの、情報部からの報告があり、その地点

を最優先で威力偵察せよ、と書かれております」

「その命令変更は、誰が出しているんだ」

内のBfSBボスの命令です」

「ちっ・・・やっかいな仕事ばっかり俺に回しやがって、あのクソジジイ」

「良く聴こえなかったので、もう一度繰り返し言って貰えますか中尉殿」

「何でもない、命令変更は了解したと上に伝えてくれ、無線終了」


中尉は、直ぐに命令変更を部隊に伝え、再度のルート確認の為に、各車長を

指令車に集め、最短ルートを話あいだしていた。


「司令部のハゲから最優先事項の命令が下された、今までみたいにモタモタ

してられない、最短ルートで現場に向うぞ」

「中尉殿、道を間違えても、気にしない気にしない」

「二等軍曹・・・お前のせいで、こうなってるんだろうが」


中尉は頭を抱えながら、下士官の軍曹の発言に突っ込みをいれていた。



ーーーーーーーーーーーーー


石作りの建物から、獣人の大人や子供が十数人でてきていた、その人込み

の中には、背の小さなおじさんや耳が長い綺麗な女性も含まれており、

夢を見ている気分にさせられていた。

獣人の女の子と獣人の大人が話す会話は、何語なのか不明で、イントネーションも

独特な感じであった。

俺は、敵対する気は無いと相手に理解してもらい為に、手にしていた剣スコップを地面に

突き刺して、相手の出方を待った。


そうしている内に、秋月さんが俺の傍に来ると、秋月さんは俺の背中に隠れる様に

身を隠し始めている。

やっぱり、初めて見る種族は怖いのか、俺の腕を掴んでいる手が、少しだけだが震え

ていたのが見て取れて、俺は頭を撫でながら秋月さんに、心配ないとだけ呟いた。


そんな感じで相手の出方を待っていると、女の子の話も終わったのだろうか、獣人

の大人達が、こちらに向ってやって来る。

獣人の大人は、頭を深く下げて何やら言っているが、俺は理解できないで困惑して

いると、獣人の大人の後ろから耳の長い綺麗な女性が、何やら言葉を話すと淡い光

が発したと思った途端に収まり、その次の瞬間には、彼女が話す言葉がカタコトで

俺に聞こえて来ていた。


「ワタシノーハナスコトバハーツウジテイマスカー」


俺は頷くと、女性は嬉しそうな表情になり、カタコトで話を続けだしていた。


「アブナイトコロヲースクッテクレテースゴクーカンシャシテイマスー」

「ワタシタチノームラガーマアモノーシュウゲキサレテーゼンメツスルー

トコロニーアナタタチガータスケニキテクレターオカゲデーワタシタチハー

スクワレマシターホントウニーアリガトウー」


俺は疑問に思った事を直ぐに聞いていた。

何で言葉が急に通じだしたのかと言う事を聞いたのだ。

そうすると、彼女から帰って来た言葉は、夢の様な答えだったのだ。

彼女達は魔法文化があり、その魔法技術の中には、言葉の通じない相手と

話す事ができる物があると言う説明であった。

俺と秋月さんは、お互いのほっぺを抓ると、夢でない事を確認し、現実に

起こっている事だと実感したのだ。


そして、彼女から衝撃の言葉を聞いてしまった瞬間でもあった。

何でも、ダンジョンから魔物が大量に湧き出す事を異常出現現象と言い

今までは無かったと言っていた、その異常出現現象が起こり始めたのは

一ヶ月程前の事だそうで、この女性は、その調査の為に村に来ていた

王都で働く学者だそうなのだが、その学者さんが言うには、この異常な

状態が続けば、ダンジョンが劣化して壊れ、ダンジョンコアを破壊しな

ければ、星をも破壊する程の威力になるのだと、古文書に書いていたと

言っているが、大昔に星をも破壊する威力と解っているなら、何でこの

人達は生きているのかと疑問に思ったのだが、俺は大人の対応をして

何も言わないで話を聴き情報を集めていた。


彼女の情報が正しければ、星を破壊する威力はないが、ダンジョン周辺の

地形を変化させる程の威力がある事がおきると言う事なのだろう。

出来ればダンジョンを攻略して、ダンジョンを無力化するのが一番被害が

少ないだろうと推測されるが、そこで疑問です。

一体誰が、どの様にしてダンジョンを攻略するのかと言う事を思っただけ

なのだが、もしかして、目の前にいる学者さんが攻略するのかな。


彼女に聞くと、攻略する者たちが周辺の村々に討伐隊として派遣されていて、

その一部が彼女達だそうだ。

でも、その派遣部隊も彼女と他2名しか残っては居ないと、彼女は悲しげ

な表情をしながら俺に伝えたが、彼女が急に俺の手を握ると、貴方がも、

討伐に参加して欲しいと懇願してきていたが、俺は困惑するだけだった。


もしも、討伐隊に参加したとして、どうやって現状でダンジョンまで向う

のか、それが問題であったからだ。

調布市の市内でも、少なからず化け物はいる、ダンジョンに近づけば

この非ではなく、下手をすれば死んでしまうからだ。

俺は彼女に参加するかをするかしないかの、返事をするのを考えさせて

欲しいと伝えると、2tトラックに置いてきたタバコを取りに外に向った。


「おじさんは、困ってる人達を助けてあげないの」


秋月さんからの追い討ちの言葉が、俺の揺らぐ心に突き刺さり、更に

俺の心を迷わせていた。



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