第2-2話 君の保護者ではないのだから(後編)
青泉副総理代行と言うのが、今の僕の肩書きだ。
まさか、こんなに早く転機が訪れるとは思いも寄らなかったが、
これも、偏に日頃の行いの賜物であろう事は明白である。
父上も総理時代になった時は、こんな昂揚した気分だったのだろうな
僕も父上に負けないくらいの興奮である。
菅沼前総理の行方も不明だし、浅生前副総理の行方だって解っていない
まさに、僕の時代がやっと来たって感じだな。
後は、あの鬱陶しい川野さへ消えてくれれば、僕が親子そろっての名首相に
なって日本国民を導いてやるのに、早く川野を始末しないと行けない
どうにか策はないものか・・・・・
そうだ、川野が命令した事にして、東京の橋や重要施設などを破壊させよう
そうすれば、川野が責任追及をされ、今の地位を追われる事になるだろう。
そうと決まれば、僕が作る命令書を秘書から行政官に、そして、自衛隊の
現場のトップに行くように手配しようではないか。
「これぞ、選ばれしエリートの計略と言う物だな」
「クッククククーーーーー」
僕が、まだ首都圏に留まって国民の為に戦っていると言う事も、国民に
知らせないといけないな、そうすれば僕の人気も鰻上りで、誰も僕を止める事など
できなくなるのだから。
幸いにも、此処は千葉県の習志野駐屯地だ。
隊員には、特殊部隊も居る、裏工作をするには持ってこいな場所とも言える
土地なのだよ、第一空挺団に特殊作戦群、まさにエリートの僕が指揮するに
相応しいエリート中のエリート達だよ。
そして、木更津駐屯地には第4対戦車ヘリコプター隊、あの航空騎兵がいるのだから
僕の守りも完璧だ。(ほっこり)
僕の邪魔ばっかりしていた、無能な老害共は、もう居ない。
誰も僕の野心を止められるヤツなど居ないのだから・・・・
「はっははははははは」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
<長野県松本市にある松本駐屯地にて>
佐藤君、私の名前で、習志野駐屯地と木更津駐屯地に勝手な行動をしないように
と伝えてといてくれ、これは総理大臣代行の名だと、くれぐれも釘を刺しておいて
くれたまえ。
「畏まりました総理代行」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おじさん、おはよう」
「・・・・・」
「あれ、高林のおじさん居ないの」
香織は高林の声がしない事に不安を覚え、寝ぼけていたが直ぐに目が覚め
起き上がると辺りを探し始めていた。
昨夜は、調布駅構内の地下一階にある駅員室で夜を明かしたのだが、目を
覚ますと、高林と名乗っていた中年男性の姿が見えなかったのである。
香織が高林を探して回って10分程して、構内から地上に出て居た。
地上では、何時もの人が行きかう光景が、目に入って来ると、昨日の事は
全て悪い夢だったのだと、香織は思いたかったが、調布駅周辺には誰も
歩いてはおらず、静寂が香織を現実に引き戻していた。
「私は、これからどうすれば良いのよ」
「お父さんもお母さんも、お兄ちゃんも死んでしまったのに」
「これで、あのおじさんにも見捨てられたら、私は家族の仇が討てない」
「女子高生1人で、なんな化け物と戦えと言うの、無理よ」
「あの、おじさんみたいな人が、近くで一緒に戦ってくれないと、
敵討ちなんってできっこないわよ」
香織は、家族の敵討ちを高林と一緒にしようと画策していたらしく
人を利用しようとしてる事に、罪悪感を感じてはいたが、家族を殺された
恨みの方が勝り、形振りかまっていられなかったのだ。
香織は駅構内の入り口の階段の一番したで、泣き崩れていた。
小さな子供みたいに、我侭を言ってるだけなのかもしれない。
でも、家族を殺され、復讐する事でしか、今の香織には生きる
糧がなかったのだから・・・・・
「秋月さん、こんな場所に居たら危険だよ、早く室内に戻らないと」
不意に香織に対して、声を掛けていたのは、高林であった。
背にはリュックが2個と両手には片手バッグとスコップを手に持って
高林は佇んでいた。
香織は高林の方を見ると、直ぐに駆け出していた。
「おじさんの馬鹿ー」
「何で1人で居なくなったの、出かけるなら一言いってよ」
俺は秋月さんに、食料を調達しに言ってたと伝えたが、彼女は今も少しだけ不機嫌のようだが、俺が西友から貰ってきた惣菜のコロッケとバックヤードにあった菓子パン
を食べていた。
「おじさん、今度から出かける時は、私も連れて行ってね」
食べながら話す秋月さんに、俺は行儀が悪いと注意したのだが・・・・・
「だって、しょうがないじゃない、お腹が減ってるし、おじさんに言って置くべきは
ちゃんと言っておかないといけないの」
そして、2人は朝食も食べ終わり、移動に付いて話をしようとしたのだが、俺は
コーヒーを飲みたくなったので、話しながらコーヒーを入れる準備をしていた。
西友から貰ってきた調理器具のなかには、やかんもあり、あとアウトドアコーナーに
置いてあった、野外コンロも貰ってきていた。
お湯を沸かす間に、俺は今まで考えた事を伝えたのだが、秋月さんは俺を目掛けて
凄い勢いで距離を詰めると、胸倉を叩きはじめていた。
「お願いおじさん、私に力を貸してよ、私は家族の仇を取りたいの」
「あの化け物達を私達の街から追い出したいのよ」
唐突にそんな事を言われても、俺は困惑するだけで、いい返事が出来ないでいる。
もしも、俺が自衛隊ならば、彼女の望みを叶える事が出来るかも知れないが、
如何せん俺は、何処にでも居る、只のおっさんだからだよ。
「おじさんは、只のおっさんじゃないもん、あの骸骨の化け物をいとも簡単に
私の目の前で倒してしまったじゃない」
あれ・・・秋月さんは、俺が簡単に骸骨騎士を倒したと勘違いしてるぞ・・・
これは困った・・・
その後、秋月さんに、あの時はぶつかった拍子に、近くに建て掛けてあった
角材が、たまたま、運よく化け物に当たって倒したのだと、根気欲説明をしたの
だった。
「でも、おじさんが倒した事には代わりないじゃない、強運の持ち主と一緒に
居れば、化け物を倒す事だって出来るかもしれないしね」
近頃の若い子にしては、前向きな考え方が出来る子だなと思ってしまった。
「それと、化け物を倒す序に、おじさんと私で、まだ逃げ送れた人達を救って行きましょうね」
仇を取りたいとか言ってたのに、急に人命救助もしたいとか、どんだけハードモードな事をしないと行けないんだよ。
俺は引きニートなポンコツだぞ、冗談もやすみやすみにしてもらいたいよ。
ゲームの中だったら話は別だけど、現実世界で未知の敵を相手に、女子高生と
人命救助をしながらの敵討ちとか、どんな時代劇の設定なんですかね?
忠臣蔵でも、もう少し難易度は下がると思うよ・・・
いや・・・この場合は、幕末の京都に近い状況かもしれない・・・
不貞浪士を容赦なく取り締まる新撰組・・・んっ・・・
この場合は、俺達が不貞浪士で化け物が新撰組って事になるのか?
「おじさん、おじさん、おじさんってば聞こえないの」
「もしも、おじさんが報酬が入るのなら、私に払えるもの何って身体しか・・・」
俺は秋月さんを座らせると、10分程の時間、説教をしたのである。
若い子が、簡単に差し出して言い訳がなかった。
俺は、秋月さんに好きになった男性にだけ、そう言う事をしなさいと、嗜めて
説教を終えたのだった。
「おじさん、ごめんなさい」
本人も俺の言った事が、ちゃんと伝わっているようだったから、とりあえずは
一安心である。
「でもね、おじさん、おじさんのお嫁さんになっても良いよ」
おぉーーーーーい!
この子は、ちゃんとさっきの説明が解っているのか?
頭が痛くなってきたよ・・・
少しの間だけ、秋月さんに協力するか、しないかの返答を待って貰う事にして、
俺は再度、説教をする為に、今度は正座で座らせて説教をはじめたのである。
そんな事をしてる間に、時間だけが経ってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます