第2-1話 君の保護者ではないのだから(前編)
「本日未明に発生した全世界同時多発地震で、世界中の大都市は壊滅していると
臨時政府は発表しました」
「無政府状態が、今現在も続いてる国もあり、世界は大混乱に陥っている状態です
日本臨時政府も、外遊に出かけていた
「総理の留守を預かっていた副総理ですが、北海道で発生した地震で、消息が解らなくなり、依然として副総理の足取りを追っているとの事です」
「臨時政府を預かっている、
「続きまして、臨時政府の川野大臣が事が収束するまで、長野県の松本市に政府要人を集め、事にあたると表明しています」
「今回の災害で、どれ程の政府要人が生き残ってるかも、まだ情報が集まっておらず
閣僚名簿で名が載っている大臣は、至急、長野県の松本駐屯地に出頭するようにと
川野大臣からの発表です」
「続きましてのニュースは、全国で地震の後に姿を現した怪奇現象、通称ダンジョンに付いてです。ダンジョンから湧き出した通称化け物は、ダンジョン周辺に広がりながら、国民の皆様に危害を加えております。もしも、化け物を見かけても直ぐに逃げて下さい。決して戦わないようと臨時政府からのお願いです」
俺は、まだ政府が昨日している事に安堵し、その日は眠ることにしたのだが、
昨日の昼に知り合った秋月香織と言う女の子も、隣で寝ていたが、寝言でうなされている事がわかる、必死にもがきながら何かを言っていたからだ。
「お母さん、お兄ちゃん、何処、何処なの・・・」
「・・・・・・・」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ、お母さんーお兄ちゃんー」
いきなり泣き叫び目を覚ます秋月さんの口を覆うと、直ぐに大丈夫、此処は安全だからと諭し、秋月さんを落ち着かせる。
もう時期は秋から冬になりかけている、既に夜は冷え込みが厳しくなり、焚き火をしないと寒いくらいである。
俺達2人は、未だに調布市の付近で足止めを食らい、避難できないで居たからだが、
その理由は、稲城市にもダンジョンが出来たせいである。
調布市の大多数の人間は、港区と東村山市のニュースを見て直ぐに東京から避難を
はじめていた御蔭で、府中市のダンジョンや稲城市のダンジョンの大災害に遭わずに
災難を切り抜けられていた。
俺も人助けなどしてないで、さっさと逃げ出しておけば良かったと後悔が込み上げてくるが、悔いてもしかたがない。
今は、現状でどうするかが問題なのだから、自衛隊はダンジョンから湧き出した化け物と戦闘を続けているが、それも何処まで続けられるかは不明なのだ。
冷戦時代は、自衛隊の戦える備蓄弾数は7日間だと言われていたが、それも、もう20年も前の事である。
全国でダンジョンが出現している状況で、今の自衛隊が後何日間の戦闘続行が可能かが、俺達が生き残る鍵であったのだ。
もしも、府中霊園のダンジョンか稲城市の中心部に出来たダンジョンが自衛隊により
破壊できたなら、今計画しているルートを通らなくても済む、でも、その望みは限りなく低いのである。
もしも、狛江市に掛かってる多摩水道橋まで行かなくても済むなら、それだけでも
長野県の松本市に行ける時間が短縮されるからだ。
それか、此処に留まり奴等と戦うと言う道もあるが、一般人の俺が何も出来るはずも無い事は明白である。
昨日の出来事は、ただの運が良かったとしか考えられない、あれ程の事がこれからも
続くはずもなく、俺に残された道はやはり、遠回りになろうが安全なルートでの首都脱出である。東京に上京してから25年も住んでいる街から逃げ出すのは忍びなかったが、生きる事を天秤に掛ければ、致し方ない事である。
秋月さんを諭しながら、俺の思考は、そんな事を考えていた。
この子の保護者は、皆死んでしまっていて、近くに住む親類も安否は解らない
頼る人も知り合いも居ない状況で、1人ぼっちで逃げないといけないと考えたら
この子は、あの化け物に殺されるのではないかと考えてしまう。
だが、俺には、この子の保護者になる事は出来ない、今まででも自分の事で
精一杯だったのに、子供の面倒など見れるはずが無いからだ。
悪いが、この子とは朝になったら違う道を行こう、この子が1人で好きな道を選ぶ
だろうが、それは、この子が決めた事なのだから、それでよいのだ。
俺には、何の責任は無いのだから・・・・・
そして、調布市の京王線調布駅構内で、俺はその日、夜を明かしたのである。
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不眠症のせいで、眠りは浅い。
まだ秋月さんは寝ていたが、俺のお腹は空いていたのだ。
昨日は、色々な事がありすぎて、碌な食事も取れず、着の身着のままの
状態で、調布駅構内に避難していたからである。
調布駅周辺には、パルコや西友があり、電気さえ落ちてなければ、弁当や惣菜も
まだ食べれる状態だろう。
1日くらい放置されていても、真夏であればヤバイが、もう時期は冬だから
痛んではないと判断し、俺は秋月さんが寝ている隙に、西友の地下に食材を貰いに
出かけた。
店内は、略奪の後が所々に垣間見えたが、全ての商品が持ち去られている訳ではなく
もしも、陳列棚に品物が無いとしても、バックヤードの在庫置き場には、カップ麺や
お菓子などは多少は残っているだろうと判断し、向ったのだが、地下の電気は付いておらず、俺は4階にある家電製品売り場に、懐中電灯を探しに行ったのである。
4階に行くと、台所商品も目に入ってきたので、俺はフライパンと片手鍋もお店から
貰って帰る事にした。
秋月さんの為に懐中電灯を2本に換えの電池を数個、それとフライパンに片手鍋を
俺の分と秋月さんの分でそろえて袋に詰めていた。
流石にビニール袋は煩かったので、二階で売っているリュックを2個と片手バックを
1つ貰うことにした。
それと、タオルや男女の下着や換えの肌着なども、バックに詰め終わると、本題の
地下の食品売り場へと行ったのだが、そこに、化け物に襲われて生気を抜かれた
被害者が佇んでいたのだ。
中央階段の踊り場にバックとリュックを静かに置き、何か武器になりそうな物と言えば、家から持ち出した包丁に、4階の売り場に置いてあった園芸用の剣スコップでったが、園芸用と言っても土木などで使用するスコップの大きさである。
被害者をじっくりと観察しているが、どう見ても生きてる人間とは思えない状態であったのだ。
腕や脇腹を喰いちぎられており、そんな状況なのに、足元には血貯まりも出来ていないとか、どう考えてもおかしかった。
俺は一旦、4階に戻ると工具売り場に来ていた。
そこで、剣スコップの先端をヤスリで磨ぎ、先端を鋭利にした後に、洗濯物の物干し
を置いてあるコーナーで、伸縮自在の物干し竿を分解し、工具売り場から持って来た
パイプフレーム も楽々切断できる
相手は複数体居るのだから、こちらも武器を何本も用意しないと、奴等に対抗できないと俺は思い、物干し竿の伸縮槍を5本作ったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーー
今まで生きた中で、こんなに緊張した事などあっただろうか?
命の遣り取りなど、普通に生きていれば、そんな事にはならないからだ。
でも、今は時代が違う、今までの生活や秩序は通用しない時代に入ったのだ。
これからの時代は、生きたいなら戦うしか道は無い。
孤立無援な俺には自分自身が最大戦力であり、頼れる友軍であるのだ。
勇気を振り絞れ、男を見せろ、お前は九州男児だろうが。
自分自身に気合を見せろ。
そう、自分に暗示をかけると、一気に槍の間合いに入ると槍を突き出し
奴等の顎下から脳天に槍を突き刺していた。
槍は一回使えば、もう使い捨てだ。
引き抜いてる暇などは無い、過ぎ近くに居る奴等が気が付き、俺を目掛けて
襲ってきていたからだ。
流石に長い槍では分が悪いと判断した俺は、すぐさま短槍に持ち帰ると、
奴等の胸に目掛けて突き刺した。
突き刺したのに・・・奴等は止まらなかった・・・
退くな、踏みとどまれ、そう自身に言い聞かせ、腰に差していた包丁を
素早く引き抜くと、奴等の眉間に深く突き刺していた。
その後の記憶は、正直に言うと、あまり覚えてないのだ。
無我夢中で包丁を振り回していただけだからだ。
奴等を全て倒し終わると、俺は疲れた体に鞭を打ち、商品だなにあった
最後の野菜コロッケを掴み、涙していた。
そして、西友から駅の構内に戻ると、直ぐに秋月さんが俺に駆け寄ってきて
泣きじゃくっていた。
何って朝だったんだろうか、こんな朝は生まれて初めてだ。
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尚、この通知は本人には通知しておらず、本人に自覚は無い。
その時、何処かで、何か声が聞こえた気がしたが、気のせいだあろうと
気にも留めなかった。
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