第1-2話 秩序の崩壊(後編)


その日の目覚めは唐突で、今から11年前の大地震の時に感じた

地面にまともに立っていられないくらいの揺れであった。

私は、まだ小学生だったけど、よく覚えている。


激しい振動で目が覚め、立ち上がると唐突に揺れが激しくなり

直ぐ立つことも出来なくなり、床にしゃがんでいると家具が

私を目掛けて倒れ込んできていた。


その揺れは5分くらいで止まったのだけど、私は倒れた本棚の下敷きに

なり身動きが取れない状態でした。

それでも必死に本棚から単行本や雑誌を取り除き、本棚を動かそうと

必死で動いていた。


そんな時に、違う部屋から兄が私の助けを求める声に気が付いて、

駆けつけてくれたおかげで、何とか動ける状態になっている。

兄は直ぐに避難をするから服を着替えるようにと言い残すと、

両親の部屋えと向っていってしまった。


兄に言われたとおりに動きやすい服に着替えると私も直ぐに

両親の部屋に向って部屋を出ると、廊下に飾ってあった絵が

床に落ち散乱しているのが目に飛び込んできた。

お父さんが大事にしていた絵画だったのに、こんな酷い有様に

なっている。

地震で揺れたせいで、額縁は壊れてしまい、絵がむき出しで

床に転がっていた。

酷い有様の廊下を見て回っていたが、私は直ぐ両親の事が

気になり両親の部屋に向っていた。


両親の部屋に入ると直ぐに、目を疑いたくなる状態であった。

兄が倒れたタンスを何個も除けながら、両親が何時も寝ていた

ベッドを探していた。


やっと両親に倒れていたタンスを全部を退か終わるのに10分位は

掛かったかもしれない、兄も私も必死で両親の救助したけど、

お父さんは既に息をしておらず、お母さんはお父さんが庇って

くれたおかげで、一命は取り留めていたが、腕をタンスに挟まれ

たせいで骨折か亀裂骨折をしているかも知れなかった。


兄はお父さんを抱き起こすと毛布で包み始め。

そして1階のリビングにある長椅子にそっと置いていたの。

私は、お母さんの着替えを手伝い素早く着替えさせていたのよ。


お母さんは腕を怪我をしているからズボンだけ履き替え、上半身は

コートを羽織るだけにしていた、兄が言うには余震が起きる可能性が

高いから近くの学校や公園に避難しないといけないと言っていたからだ。

そうしないと、お母さんや私に危険があると兄が言うからである。


それでも無闇やたらに外に出る事は危険だと兄は言い、直ぐにリビングに

あるTVを付けていた。

そこに映し出されたのは、港区の青山一丁目だと言われていた地域の現在の

状況が映し出されていたわ。

国立競技場や赤坂御用地や新宿御苑が消失していたのだ。

生中継の途中で今度は、東村山市の市北部が消失していると言う情報が入り

直ぐに取材に向ったヘリに映像が切り替わっていた。


リポーターなど居るはずも無く、カメラマンが映像を写しながら実況はして

辺りの状況を必死に伝え始めていた。


「わたくしは東村山市に向ってヘリで移動中なんですが、上空を通過している

小平市の上空からでも東村山市の市北部に何も無い事がわかります。」

「一体何が今現在起こっているかは不明ですが、住んでいた住人や、周りの

周辺住民の人々は無事なのかも解らない状況です・・・」


TVを見ていると、外から凄い騒音がすると思い窓から外を見ると、そこには

ヘリが飛んでおり、もしかしたらTVで映像を映し出しているヘリなのかも

知れなかった。

ヘリのカメラマンは小平市の上空も丁寧に写してくれたおかげで、私達が住む

街がどんな状況なのかが直ぐに解ったのだった。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、TVを今すぐに観て」


私は避難袋に食料や飲料水を詰め込んでいた兄を直ぐに呼び、私達が住んでいる

街の状況を兄に見せていた。

小平市の北部の建物で無事な物は少なく、かろうじて残っている建物は鉄筋コンクリートの建物だけだった。

学校は無事みたいだが、道路が移動する事は困難な状況かもしれなかったのだ。

道路には崩れた家屋が散乱したり、走行中の車が建物や電柱の倒壊で巻き込まれて

おり、移動を困難にしていた。


「小平市に避難するのではなく、隣の小金井市に避難した方がよさそうだな」

「母さんの様態はどんな様子なんだ香織」


お母さんは、おとうさんの遺体にしがみ付き泣き崩れている。

腕の痛みからして骨折かひびがはいっているとしか言えない。

兄に、そう伝えると、兄は避難準備に戻っていったのだった。


「東村山市の上空に着きましたが、上空から被害状況を見ても余りにも酷い

状況だといえます」

「市役所は半壊しており、一軒家で残っているのは鉄筋コンクリートの家のみで

木造住宅の物は全て全壊しております」

「西は多摩湖周辺から東は秋津までの幅で、北側は・・・多分ですが、所沢駅の

周辺までが消失していると思います」

「消失地域周辺は、消失の余波なのでしょうか、その影響をもろに受けており

とても生存者がいるとは思えない有様です」


そんなリポートをしている時に、突然の発光と振動が取材ヘリを襲い、ヘリの操縦士

はバーティゴを起こし、パニックになってしまっていた。

日本語で言うと空間識失調と言う物らしい。


カメラマンがヘリパイロットが空間識失調、バーティゴを起こしヘリが墜落していると言ったから状況が解っただけである。

そのままヘリは警告音が鳴り止まないままの状態で回転を続け、そして地面と激突する音が鳴り響いて、映像が終わってしまった。

直ぐにTV局の方に戻ったのだが、現地に居ない人間が話す事に意味はないと思い、

私は直ぐに兄の手伝いをはじめていた。


地震から一時間ほどが経ったと思う、思うとは地震が起きた正確な時間など知らない

から、そう言うしかない。

ようやく、避難準備が終わり外に出ようと玄関で靴を入っていた時に、またしても

取材ヘリの音が近づいてきていた。


外に家族で出ると、空には何機ものヘリが東村山市の被災地に向うのが見えた。

あの色は、たぶん自衛隊の救助ヘリなのだと私の中で勝手に思い込んでいたけど、

ヘリには沢山の自衛隊員が乗っていたのが見えた。

その内の一機が、上空で留まって拡声器で避難をするようにと言っているのが

聴き取れたけど、何処に避難すれば言いかが良くは聴き取れなかった。


「-----方面に避難してください」


兄も聴き取れなく、兄が言うには府中方面に避難しろと言っているのだと、

そう解釈している。

状況を考えれば、兄の言う事が正解なのは解るけど、私の中で何か嫌なモヤモヤした

モノが渦巻いていた。

私はまだ学生だけど、米軍基地や自衛隊駐屯地がある立川方面に向った方が安全なのではないかと思っていたけど、兄が言うのだから大丈夫だと自分に言い聞かせていた。


バッババババババ

「こちらは陸上自衛隊です。国民の皆様は立川方面に避難してください」

「繰り返します・・・」


もしも、自衛隊のヘリの避難誘導のアナウンスが、しっかりと聴けていたら

私達家族は、あの地獄を経験しなかったのよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、家族や非難した人たちは、府中の多磨霊園に出来たダンジョンから湧き出した。

ガイコツ騎士に虐殺されたのよ、私だけが運よく、その場から逃げ出して調布方面で

おじさんに助けられたって事なの。


そんな説明をしている女の子は、秋月香織と言い、確か歳は17歳だったか

自転車で避難している時に横からぶつけられ、俺はおもいっきり自転車ごと吹っ飛び

近くに立てかけていた角材に突っ込んでしまったのだ。

そして、何故だか倒れてきた角材が、秋月さんを追いかけていた骸骨騎士の骨馬の首筋に命中し、馬はそのまま転倒、そして、骸骨騎士は俺の自転車にめり込み昇天してしまったのである。


秋月さんは、俺が骸骨騎士を戦って倒したと思っているが、俺は・・・俺にそんな

根性はない・・・たまたま運が良かっただけだ。


でも、骸骨騎士を倒した事で俺の身体に不思議な事が起こっているのは、この時には、まだ知る由も無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る