第5話 試験

 月日は流れた。啓司はあれから進展はなくまだ家族としか話せない。


 そして赤学の入試の日になっていた。啓司は試験官からの配慮で個室で試験を受けていた。時計の音と啓司が走らせる鉛筆の音のみが流れている。時間になると試験員が回答を回収して行く。




一方…違う会場では


「難しかったぁ…」


「そりゃ名門校の入試だからね…私も自信ないけど…」


 試験が終わり項垂れていた美来と梨恵がいた。


「いやぁ…先生に無理通してにするって言ったからね…」


「美来…あなたの成績だとボーダーラインじゃない?」




 それは入試から3週間前の事…


 高神先生が羽山家に訪問してから少したってからのこと


「先生この前どこにいってたんですか?」


「ん?水田か…羽山の家だよ。あいつの進路聞いてなかったからな」


「どうするって言ってました?」


「高校だって…赤学らしい…もしいけたらこの学校初になるけどな…偏差値70の所にいくのは…」


 とのことを聞いて柚木は先生に挨拶をして教室を後にすると、美来と梨恵のもとに来ていた。


「羽山くんの進路先わかったよ」


「ほんと!?どこ?」


 そう焦って聞いている美来とそれを制するようにする梨恵


「お、おちついて美来…」


「あ、うん…」


「赤峰学園……」


 柚木がそう述べると美来は頭を抱えた


「わ、私じゃキツイ…」


 美来も決して頭が悪いわけではない…毎回平均70点ほどを取っているが


「この学校だと平均80は欲しいくらいよね…」


「あれ?けーくんそんなに頭良かったかな…」


「ついでに先生から点数聞いたら…オール100…」


「「はい!?」」


 柚木が述べたことに美来と梨恵は理解が追い付かず


「いやいや…ってそうじゃないわよ…美来どうするの?あなた進路調査まだ出してないわよね」


「うん…けーくんと同じにしたかったから…」


「僕も赤学にするよ?」


柚木がそういうと梨恵は


「まあ私は元々赤学志望だし…私が教えてあげるわよ勉強」


「ほんと!?なら私も!」


こうして3人とも赤学を目指して勉強を頑張った



そして今に戻り、入試の帰り道


「不安で仕方ない…」


「霧島さんはがんばったよ!あとは待つだけだから!」


「そういう水田くんは余裕だね…私なんて途中わからなかったし…」


柚木はすこし余裕そうだったが…目の奥を見た梨恵は


(不安だけど悟らせないようにしてるのね…)


そして3人は別の所から出てきた啓司を見つけた


「…あっ」


啓司も気付いたようで小さく声を漏らして


「ひ、ひさ…」


すると啓司は膝から崩れてしまい


「っ!羽山!!」


すばやく柚木がかけより抱きしめる形になったしまい


「あ、ありがと……み、水田くん…」


「いいって…その…どうだった?久しぶりの学校…って言っても高校だけど」


「うん…少し楽しかった……それじゃあ結果発表…あそうか郵便だよね…それじゃあ…卒業式でまた…」


「……あぁそれと…幼馴染が謝りたいって…」


「そ、それは…」


啓司は目をそらして柚木の方も見ないようにして


「それはまた今度にちゃんとしておけよ?それじゃあ卒業式で」


啓司は立ち上がると柚木に見送られて歩いて行った。そして取り残された柚木は


「…なんだ…僕とは会話できるんじゃないか」


すこし明るい表情をしていた



入試から2週間後それぞれの下に通知書が送られ結果は……


柚木…合格

梨恵…合格

美来…合格






啓司…首席で合格

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