第71話 はじめて校閲をしてもらった(23)
第九章第四話。
続いて第四話行きますね。このパート。表現が全体にぎごちないです。堅苦しい言い回しを避けて、できるだけ素直で簡素な表現にした方がいいです。
ここ、ルシファーとライアンのやり取りなんだよな。クールなルシファーとアクティブなライアン。この二人だとコミカルになるんだけど、まあこなれていないと堅苦しくなるわけだ(笑)
ライアン・クレイスンは、幼年学校時代にルシファーの先輩だった。当時のルシファーは、あたり構わず敵をつくる問題児。他人の裏が『聞けて』しまうのだ。人間不信から来る先制攻撃が当たり前となっていた。弾幕を張ることで自分を守っていたわけだが、当然のように学校では困り者である。
ライアンはそのフォロー役だったが、頼んでもいないことをされる側から見れば単なるお節介である。
← 表現調整。すこーしぎごちないかな。こなしましょう。
「ライアン・クレイスンは、ルシファーの幼年学校時代の先輩だった。当時のルシファーは、のべつまくなしに敵をつくる問題児。他人の裏が『聞けて』しまうがゆえに人間不信の塊になっていて、すぐに先制攻撃をぶちかます。弾幕を張ることで自分を守っていたのだが、学校にとっては扱いにくい困り者だった。ライアンはそんなルシファーのお目付役。もっとも、頼んでもいないのにしゃしゃり出てくるライアンは、ルシファーから見ればしょうもないお節介焼きだった。」
「ぶちかます」「しゃしゃり出てくる」「しょうもない」って、師匠らしい言い回しだよなあ(笑)一気に砕けた感じになる。
「ぶちかます」って意味は分かるけど、もしかして方言かなあ。「ぶちまかす」の方が私は馴染みがあるのだけど、もしかしてこれも方言? うーむ。決定稿は「ぶちまかす」の方にしました。
にたりと笑うライアンに一瞥をくれると、ルシファーはどかりと座り込んだ。苛立った態度だが頭のなかは急速に冷めていく。
← 表現調整。「にたり」と「どかり」。語尾の重なる形容詞を連用しない方がいいです。
たーしーかーにー。「にたりと笑ったライアンに一瞥をくれたルシファーが、椅子に身体を投げ出す。」に変えて、一方を削除。
組織表を広げられ、たいして興味もなさそうに覗き込んだカツミだったが、次には目を見張っていた。能力者部隊のトップに自分の名前が記されていたからだ。
← 表現調整。ここ、ものすごくぎごちないんです。「目を見張る」は頻出ワードなので回避し、文章の流れを整えましょう。
「ルシファーが組織図を広げたのを見て、カツミはむしろ安堵していた。なんだ、単なる部隊の組み替えじゃないかと。だが……能力者部隊のトップに自分の名前が記されているのを見て、思考が止まった。「なんだよ、これ……」」
このあたり、全体に文章がぎごちないです。ライアンに絡んだことで、展開はむしろ軽くなるはず。『転』の効果をきちんと持たせるためにも、表現を軽くすることを心がけた方がいいと思います。
なんだよなあ。
八章以降、ジェイの弟のアーロンが出て(こちらは、軽い展開には決してならないキャラ(笑))、ルシファーの幼年学校時代の先輩のライアン、それからシドの医大時代の後輩のサラ(気の強い女性キャラ)が出てくるのだけど。この三人の中で唯一シーンを軽くしてくれるのがライアンなんだよね。他との落差がけっこーある(笑)
多少変えたかもしれないけど、ほぼほぼ提案を頂いてます。砕けた表現ってのも書きなれないと書けないものですねえ。
五話。
急に声を落とすとグレイが → 急に声を落としたグレイが、
← さて……ここからがちと問題。上段13行目(オッジ。メーニェの衛星である……)から下段16行目(……完全に評議会に委ねられた。)までは、七章までの前半部分と幕間で、かなりの部分が既出なんです。読者は、同じ内容を二度読まされる形になりますので、そこで強い「既視感」「もっさり感」を覚えてしまいます。ダイジェストならもうちょいコンパクトにできないかなーというのが一つ。
もう一つは、視点。ここは状況を俯瞰的に描いた中立ナレーションであるにもかかわらず、視点がカツミやグレイに寄りすぎています。それが「この星」「こちら」「敵国」という書きぶりに現れてしまってます。そこは要調整かなあと。以上二点、検討してみてください。
こーれーなー。カツミの初陣での活躍は、こっちで最初に書いたのね。「幕間・エンゲージ」はだいぶ後になってから。んで、その幕間をこの話より前に入れたもんだから、だぶっちゃってるわけだ。
カツミの初陣であった前回の作戦。あの時は、オッジのレーダー基地を無力化したものの、両星が星間ミサイルを向け合ったことで戦場は凍り付き、シャルー星国王の崩御によって休戦が決まった。現在は国王の遺言により王政は廃止され、軍の指揮権は完全に評議会に委ねられている。
はいっ。ザックリと削除。概要だけ(笑)
経済活動の一環である戦争を終わらせたいと思う人物は少ない。しかし力関係のバランスを調節したい人間は多い。社会環境は大きく様変わりしつつある。戦況を変えたいと思う人物が評議会や特区に増えていた。
その一因となったのが先日の避難船事故。政治経済の頂点に君臨していた者の六割を失った謎の事故である。
被害者の元に流れていたのは、星間ミサイルの発射を誤認させた情報。今となっては怪情報としか言いようのないものだった。情報の出どころについては、様々な憶測がなされた。当然、ミューグレー家にも疑念が向いたが、その事故で社長夫妻が死亡していたことが判明すると、疑念は同情へと変化した。真相を知る者は少ない。
← 表現調整。ここも、ナレーションとしては細部がかなり欠けています。情に絡まない部分ですので、読者が背景を理解できるようにしっかり整備してください。以下は例です。
「戦争はもはや経済活動の一部になっており、戦争を終結させたいと願う政財界人は少なかった。一方、社会環境が大きく様変わりしつつあるなか、戦況の変化を望む者が評議会や特区に増えていたのも確かだった。
意識変化をもたらす一因となったのは、至近に発生した大型避難船爆発事故だ。事故原因は不明。だが、それにより政治経済を動かす上流階級者の六割が死去した。
彼らがこぞって避難船に搭乗したのは「星間ミサイルが発射された」という情報を信じていたからだ。しかし、それは発信源不明の怪情報であり、情報通であるはずの上流階級者がなぜ誤報に踊らされたのかは明らかになっていない。
情報の出どころについては、様々な憶測が流れた。裏社会に通じているミューグレー家にも疑念が向けられたが、事故で社長夫妻が死亡していたことが判明し、疑念は同情へと変化した。いずれにせよ。真相を知る者は極めて限られていた。」
この提案も、ほぼほぼ頂いてます。作者にとっては分かり切ったことでも、読者視点だとやっぱ説明は詳しいほうがいいよなあ。
ライアンの言葉に被せるようにしてルシファーが口を開いた。反撃を開始されたライアンは、顔に手を当てるしかない。
← 表現調整。もうちょい盛りましょうか。
「ライアンの説明をさっと遮ったルシファーが、反撃を始めた。復讐するは我にあり。ルシファーの笑みはまさに悪魔のよう。ライアンは、こめかみを押さえて耐えるしかなかった。」
師匠。ノリノリ(笑)
堪えかねた声を上げるライアンに笑いながら、セアラはすぐに食堂を出て行った。沈黙ののちテーブルに穴が開きそうな溜息をついたのは、もちろんライアンの方である。
← 表現調整。丁寧に。
「ルシファーからの屈辱的な攻撃に堪えかねて、ライアンが大声で抗議する。それをくすくす笑いながら見ていたセアラは、住所の書かれたメモに目を落としながら食堂を出て行った。その眼中に、もはやライアンは存在しなかった。しばしの沈黙。そして沈黙の意味はルシファーとライアンとの間で違っていた。沈黙を破ってテーブルに穴が開きそうな溜息をついたのは、もちろんライアンだった。」
修正後。私のほうが薄味かな(笑)
ルシファーからの攻撃に堪えかねて、ライアンが大声で抗議する。それをくすくす笑いながら見ていたセアラは、住所の書かれたメモに目を落としながら食堂を出て行った。その眼中に、もはやライアンは存在しない。
しばしの沈黙。そして沈黙を破ってテーブルに穴が開きそうな溜息をついたのは、もちろんライアンだった。
六話。
言ったが早いか、目を見張る勢いでセアラは行動を開始した。2ミリア後。最後の書斎に手をつけるまで、カツミには口をはさむ余地もなかった。
← 表現調整。「……が早いか」は、「何かの動作が終わるか終わらないかのうちに」の意味ですから、過去形を前につけるとおかしなことになります。「目を見張る」は形容詞的に使わない方が……。頻出ですし。次の文もちと。
「そう言うが早いか、すさまじい勢いでセアラが仕分けを始めた。2ミリア後。最後に書斎を残して片付けは完了。その間カツミは、口も手も一切出すことができなかった。」
ちょこちょこ散見されるんですが、キモの部分の修辞を盛る勢いで一般描写まで盛ってしまうと、逆に野暮ったくなります。すんなり流す部分は、表現の角を立てないでさらっと書いた方がいいんじゃないかな。このパートはそれが顕著なんですよね……。
こっちはシンプルにするパートだったか。んで、次のパートは「説明が足りません」の連続(汗)
「まんまと乗せられたわけじゃないの。軽率だったわ。それに、今のドクターはもっと許せない」
← 表現調整。うーん、ここ、セアラの発言の中身がうまく理解できません。もうちょい揉んだ方がいいかな……。
はいっ。きちっと説明(笑)
「ドクターはカツミくんにフィーアを近づけることで、ジェイを取り戻したかったんでしょう? ドクターの嫉妬は度を越してるわよ。それに、今のドクターは以前よりもっと酷いわ。ジェイが亡くなってタガが外れたみたいに」
この小説の初っ端。カツミは棘を剥き出しにしてセアラを傷つけてましたけど、一緒に食事に行くくらいには変化しました。セアラはシドの狂気を敏感に察しています。そしてカツミにこう話します。
「ドクターは、自分が必要とされたことを知ってたはずよ。大切な人の想いを守ろうとしたはず。貴方が奪ったんじゃなくて、貴方が選ばれたのよ。その意味も知ってた。でも今のドクターは想いを裏切ってる」
「……」
「ジェイを、自分自身を裏切ってる。頭いいくせに自分のことには疎いんだわ。貴方もよ。カツミくん。少しは自分のことも考えてね」
カツミの姉的存在のセアラ。主要キャラの外側にいるキャラですが、この話のオアシスですし、外側だからこそよく見ています。
もう一人の女性キャラ。サラは四話だったかな。彼女に関しては面白い見解の違いが出たので、それは後ほど(笑)
じゃ。今日はここまで!
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