第15話 真実
僕は大きな彼女の声で目が覚めた。
目を開けると彼女が僕の顔を覗き込みながら「眠りが深くて中々起きなかったよー」と言って隣のベッドに座った。
僕は起き上がると焦点の合わない目で彼女を見た。
聞かなければならない。聞きたくない。本当は。聞いたら何かが壊れそうで。
でも、真実を聞かないことには分からない。
僕は意を決して彼女に聞いた。
「君さ、夕食の時、なんであんなこと言ったの?」
彼女は一瞬驚いたように目を丸くし、それから少し湿った髪を触りながら笑った。
高い笑い声を上げて。その目も焦点は合っていなかった。僕はそんな彼女を見続けた。
彼女は数分の沈黙の後、こう切り出した。
「何も考えてなかった。ただ自分に分かってほしかったのかも。君じゃなくて。自分に。でもさ、あれはマジじゃないから。気にしないでー」
彼女は半分微笑みながら言った。
「何か隠してるでしょ?君さ、今まであんなこと僕の前で言わなかったじゃん。なんで?」
彼女の目は何も隠しているようには見えなかったが、僕は心配でたまらなかった。
「君、小説の読みすぎじゃない?私だって君にだって冗談は存在するでしょ。別にいいの。冗談だから。これ、本当だよ」
「そう……。本当に何もないんだよね?」
「うん!それよりお風呂気持ち良かったよーせっかく来たんだから入りなよー」
「じゃあ入ってこようかな」
「くれぐれも女風呂に入らないようにねー」
「君は僕をなんだと思ってるの?君はとんだ馬鹿だね」
「ひどーい君が間違えないように言ったのにー」
「君の言っていることが全然分からないよ。分かりたくもないけど」
「ちょっと君ー私の言うこと分かりたくないってどういうことー?」
彼女は屈託のない笑い顔を浮かべて和室の方に入って行った。
僕は部屋を出て風呂があるエリアへ向かった。
部屋に戻るとサブテーブルに袋が置いてあった。
「あぁそうそう。君がお風呂に行っている間に近くのコンビニでお菓子買ってきたのー」
そう言って彼女が袋から取り出したのはガムや梅、昆布だった。
「君って渋いね……」
「そう?梅のお菓子美味しいのぉー後昆布もパリパリで好きー」
「普通だったらポテトチップスやチョコを買ってくるでしょ?」
「そんなこと言われてもー私が好きなものなんだからー」
彼女は袋を和室のサブテーブルに並べ、昆布の袋を開けた。
僕にとっては苦い香りが部屋中に漂う。
僕が顔を顰めると彼女は笑って袋からサイダーを取り出した。
「まぁまぁ好き嫌いもあると思ってサイダー買ってきておいたからーこれは君用、私はコーラ」
「別に昆布は嫌いではないけど匂いがなんとも言えない」
僕はサイダーを彼女の手から受け取りながら言った。
「そーう?君、もう眠いでしょ?寝ていいよー」
意外にも彼女は早く寝かせてくれたので僕は引き止められないうちにさっさとベッドに潜り込んだ。
彼女は隣のベッドに寝転び、電気を消した。
彼女はすぐに寝息を立て始めた。
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