第4話 嘘
翌日の学校は中々騒ついていた。
教室に入ると彼女が友人達から詰め寄られていた。
「ちょっと結衣?昨日花火大会一緒に行こうって約束したのにすっぽかしたでしょ?」
「どこ行ってたの?」
「ごめんねーちょっと用事があってー」
「それならメールくらいしてよー何かあったのか心配になったじゃん」
「何もなくて良かったけどさ」
「ごめんね。ありがとうー」
今の会話で大体の予想がついた。
彼女は一緒に行く相手がいないからという理由で僕を誘ったが、それは嘘だったのだ。
僕と一緒に行こうとして友達との約束をすっぽかしたのか。
僕は本を読みながら想像を巡らしていた。
昨日の花火大会で聞いた病室番号の紙を制服のポケットの奥にしまいながら学校を出る。
入院になるのは本当に大変な時だと彼女に聞いているのでその病室に行くことも少ないだろう。そういえば、健康診断に行った時、彼女は点滴を持っていた。
きっとあれは入院中だったのだろう。それを隠したくて自分も健康診断だと嘘をついたのだ。彼女は嘘だらけな人間だ。
僕は昨日の花火大会の熱がまだ残っている気がした。
彼女は友達との約束をすっぽかしてまで僕と一緒に行くことを選んだ。
それは少し矛盾している気がするが、僕は真っ直ぐに家に帰り、家に着くと今読んでいる途中の文庫本を鞄から取り出した。
昨日の花火大会の熱は夜になっても冷めなかった。
翌朝学校に行くと彼女がいなかった。
まだ来ていないのだろうと思い、文庫本を読み始めた。
しかし、授業が始まってからも彼女が来ることはなかった。
彼女は入院していた—。
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