第3話 花火大会
彼女は初めて僕の方を見、「びっくりした?」と微笑みを浮かべながら聞いた。
「冗談なんだよね……?」僕がおそるおそる聞くのに対して彼女はズバリと答えた。
「冗談でこんなこと言えないよ。あ、でも美花とかには黙っててね」
「なんで親友に言わないの……?」
「言えないでしょ。美花に言ったらその都度に泣かれちゃうもん」と笑いながら答えた。
「残り少ないのにそんな終わり方嫌でしょ?」
僕は聞きたくないが、聞かなければいけないことを口にした。
「なんの病気なの……?」
「心臓の病気。
僕はずっと彼女の方を見ていた。彼女はもう花火の方を見ていて、僕の方には見向きもしなかった。
「家族以外の誰にも言ったことないの。だから秘密にしといて」
「うん……。」
「君を誘ったのもそれで」
「は?それでって何で?」
僕は何も分からず速攻で聞き返した。
「君って本当に鈍いね」
「鈍いってことにしといて良いよ」
「ふふん。だからね、残り少ない時間を君と過ごしたいってこと」
「君は何を言っているの?」
「何も言ってないよ。ただ君と過ごしたいって言ったのに日本語分からなくなっちゃったの?」
「日本人なのに日本語わからなくなるわけないでしょ」
「だって君が……」
僕は彼女の言葉を途中で遮った。
「君の言っている言葉の意味を聞きたかっただけ。君が勝手に勘違いしたの」
「あはぁ、そういうことか。意味なんてないよ。別に喋る言葉に意味なんて必要?」
「うん」
彼女はしばらく黙ってから「普通に生活する上では全く問題ないから大丈夫なんだけどね」と言った。
「君は何について話してるの?」
「えぇぇぇ!もう忘れちゃったの?私の病気だよ。君って忘れっぽいのかぁ。まぁその方が私にとっては都合がいいのかも」
「君に忠告しとくけど君は突然何かを喋りだすからこっちはついていけないの」
「ふーん。でもさ、美花は普通についてきてるけど」
「ずっと一緒にいた親友と三ヶ月前に初めて喋った僕を一緒にしないでくれる?」
「はいはい」
すると僕たちの前に大きな花火が上がった。
どこからか「ラストだ!」という声が上がったので僕は慌てて上を見上げた。
花火は七色の綺麗な色で僕たちを包んで消えていった。
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