三章4話 猫の日子猫



翌日もやはり土下座から始まった。


どちらかというと二人同時に土下座している。


起きた瞬間からこの状態だ。


「なんか、ごめん」


「私のほうこそ、また薬のせいで申し訳ないのです……」


「今日もシリルハーブの実必要?」


そう聞けば頷いた。


「腰をすごく振ったので痛いのですよ……」


「あぁ……納得」


世の中の男性ってあんなに動くものなんだなぁって感心したよ。


いやでも本当に気持ちよかったから良かった。


どうせ私の処女は立て直しのためにどこぞの貴族との縁談で消える予定だったし。


それを考えると今、大好きなヒナに捧げたのは悪くない。


私はベッドから降りようとして腰に力が入らないのに気が付いた。


「あ」


「どうしたのです?」


「腰に、力が……入らないんだ……」




少しの空白の後二人して苦笑する。


「もう少し、ゆっくりするといいのですよ。今日は最後の日ですから……」


「え、あ……」


今日で家政婦お試し期間三日目だった。


当時の自分に何で三日にしたのか問い詰めて殴りたくなる。


これでヒナと一緒にいる理由が無くなってしまった。


「ちなみに延長は……?」


「しないのです。これ以上巻き込み事故はごめんなのです」


「うぐぅ」


よほど寂しい表情をしていたのかヒナが私の頭を抱え込むように抱いた。


「でも、たまには会いに来ていいのですよ」


それは来訪の許しで、私にとって今一番欲しいモノの一つだった。


あまりの嬉しさに抱き返す。


素肌同士が触れ合う。


温もりが心地よい。


私達は動けるようになるまでそうしていた。






◆◆◆






もう掃除する場所も全然なくなってしまった。


ビックリするくらい綺麗に整頓された本棚や器具を見ると充足感に満たされる。


これを三日でやりきったのだから私ってばすごい。




「レイ」




呼ばれたので工房の方へ向かう。


「どうかした?」


また薬でも被ったのかと思ったが違うみたいだ。


彼女は私に手を差し出すように言う。


素直に差し出した手の上に小さなペンダントが落とされる。


トップに使われている石は透明なのに虹色の虹彩を放っていた。


「これってもしかして……」


「あぁ、買ってきてもらった虹色鉱石です。粉末にして不純物を取り払って融解させるとこうなるの。守りの術式も刻んでおいたから。今日までのお礼だと思ってもらってほしいのです」


キラキラと光るそれに目を奪われていた私はヒナの言葉に頷いた。


その場でつけてみせる。


「ど、どうだ?」


「うん、思っていた通りレイには虹色が似合うね」


「あ、ありがとう」


生まれてすぐに没落貴族になったおかげでこんなおしゃれしたことなかった。


わざわざ作ってくれたことが正直言って超嬉しい。


家宝にしよう、そう心の中で決める。


「そういえば調合のほうは進んでいるのか?」


毎日フラスコを割ってるけど時期とやらには間に合うんだろうか。


「問題ないです。もうすぐ出来上がりますから」


そう言って見た容器の中では白に近い色の液体が少しずつ蒸留されていた。


あの容器ならもう割る心配もなさそうだ。


「じゃあ今日の分の買い出しに行ってきますね」


「うん、お願いね」






◆◆◆






本日もやはり街に降りて最初に向かったのは冒険者ギルドだった。


ギルド長に用事があると言えばもうすぐに通してくれる。


「今日はどうした?」


「経過観察に、例の件はどうなっている?」


「あぁ、領主様から直接バカ息子へ魔除けの森の魔女に近寄らないように厳命してもらったから大丈夫だろう」


「ならいいんだ」


「大変な任務を任せてしまって悪いな。報酬はそのうち用意させてもらうからよ。もうちょっとがんばってくれな」


「わかったよ」


そう言って私はギルド長室を出た。


「あら、レイじゃない久しぶりね」


そのままギルドを出ようとしていた所で声を掛けられ足を止める。


振り返れば見知った顔がいて、思わず微笑んだ。


「エレナじゃないか。久しぶり」


彼女はエレナ・リリオという長耳族エルフの女性で、よくパーティを組んで旅をしている。


だから彼女は私が女性だと知っているので接しやすい人物だ。


私達は近くのテーブルに座って世間話をすることにした。


軽い飲み物を二人分注文する。


「で、どうしたのよ最近忙しそうだけど」


毎日ギルド長室に向かうところを見られていたらしい。


「んー、ちょっと重い気持ちで受けた件がかなりやばめの案件になっちゃった感じ?」


「重いわね。運がないというか……」


飲み物が来たので二人で乾杯してから飲んだ。


「だいたいなんで私にあんな案件回してきたんだっていう!」


「そんな面倒な案件だったの?」


「魔除けの森の魔女を殺せって言われた」


「それは?!たしかにかなりやばめの案件みたいね」


エレナも魔除けの森の魔女の件は知っているのか驚いている。


長耳族だからそう言った話はよく聞くんだろう。


「守りの魔女じゃない。手は出していないのよね?」


こうして毎日ギルドに来ているのだから。と聞かれる。


「手、手は出して……ない、かな?」


いろんな意味で手を出しましたが。


「な、に、をしたのかなぁ?」


「……ナニをしました」


「どうしてそうなったの」


「私が聞きたい。最初は惚れ薬を被ったのが原因だったんだけど毎日なにかトラブルが起きて毎日毎日土下座をするハメに……!!」


今日なんか二人とも腰が痛くて立てないなんて状態になってたし。


「なんか……大変面白い事になってるのね貴方」


「面白がらないでよ……それもこれも今日で最後なんだよなぁ」


「どうしたのよ」


今日が最終日だということを思い出してしまって重い気持ちになる。


「家政婦お試し期間で三日だけ一緒にいる約束だったから」


心配した表情でこちらを伺ってくるエレナに苦笑してみせた。


「家政婦ってあんた何やってるのよ……」


「いや自分を売り込むのに必死でつい」


責任とりたかったしな。


「彼女にとって僕はただの家政婦だったんだろうなぁ……」


だから期間の延長もしてくれなかった。


色々やったのに少し寂しい思いもする。


「ただの家政婦とナニするとは思えないんだけどねぇ」


「だからそれは薬のせいで……あれ?」


最初の一回目は惚れ薬のせいで、二回目と三回目は私が半ば無理にヤってないか?


もしかしてそのせいで嫌われてる?


「もしかしたら嫌われてるのかもしれない……」


「ちょっとちょっと、何言いだしてるのよ」


「結構無理矢理ヤってた!どうしよう、嫌われてたら!私死ねる!!」


「ちょっと落ち着きなさいよ!」


すぱこん!と頭を叩かれる。


少しだけ冷静になれた。


「すぐにそう言う思考になるのは悪い癖よ」


「う、ごめん……」


「その魔女だって嫌ならハッキリと拒絶しているはずよ」


確かに、はっきりきっぱりと拒絶されたことはない。


でもだからって嫌われているかどうかわからない。


どうにかして確認しないと。


「ど、どうやって確認すればいいと思う?!」


「……なんとなくだけど『嫌い』かどうかの確認方法を聞かれているのでいいのよね?」


頷く。


すると彼女は呆れたようにため息をついた。


「直接本人に聞けばいいだけの話じゃないの」


「私が素直に聞けるとおもうのか?!」


「無理そうね」


そう言って彼女はごそごそとカバンから何かを取り出す。


コトンとテーブルに置かれたのは見たことのない丸い石だった。


「魔法石よ。ちょっとした魔法が閉じ込めてあるの。最近手に入れてね」


「魔法石……」


「これあげるから互いの気持ちを確認してきなさいよ」


「ありがとう!頑張ってみる!!」


私はその魔法石をポケットにしまった。


お礼もそこそこに私はギルドを飛び出したのだった。




「あの子、魔法の中身聞かないで行ったわね……まぁ大丈夫でしょう」






◆◆◆






「ただいま、戻ったよ」


今度は驚かさないように注意しながら家に入った。


「お、おかえり……」


今だにどもりながら返事を返してくれる。


やっぱり会って三日じゃ慣れてくれないか。


私は買ってきた素材などを棚にしまっていく。


「レイ」


珍しく名前を呼ばれたのでそちらの方を向くとヒナが少し険しい表情でこちらを見ていた。


「レイからなにか魔法の匂いがする」


「魔法の匂い?」


「何か魔法を纏った物をもっているの?」


そう言われてエレナからもらった魔法石の事だと気が付いた。


「あ、それ多分これだ」


私はそれをポケットから取り出してヒナに渡そうとする。


すると魔法石は狙ったかのようにヒナの手のひらから転がり落ちて足元で割れてしまった。


「「あ」」


ぼふんと煙が発生してあたりを包む。


げほげほと咽ながら手で煙を払う。


「大丈夫か?!」


「う、うん大丈、夫?」


煙が晴れるとそこには猫耳猫尻尾を生やしたヒナがいた。


もう一度言おう、猫耳猫尻尾を生やしたヒナがいる!


「くそかわ」


「にゃによこれわあああ?!」


驚きすぎて尻尾がぴんと立っている。


可愛過ぎか。


「ごめん。今日偶然会った友人にもらったものでこんな効果があるとは思わなかったんだ」


「魔法石……おそらく一日は戻らないにゃよ……」


「語尾がにゃんになってるヒナ可愛い」


「なにをいっているにゃ?!」


あまりにも可愛過ぎたのでギュウっと抱きしめてしまった。


「可愛い、ヒナ超可愛い」


「やめろにゃぁああ」


私はソファに座ってその膝にヒナを乗せる。


逃げられないように腰を強く抱いた。


すり、と尻尾を撫でるとビクンと反応する。


どうやら尻尾も性感帯らしい。


じゃあ耳も、とふわふわしてて気持ちがいい。


いじっている間ヒナはピクピクと耳を動かしていた。


耳をいじっている間に私の手はヒナの服を脱がし始めている。


そこでハッとして私は手を止めた。


「ご、ごめん!嫌だったよね……?」


「……にゃ……」


「?」


俯いて何かを呟いたので聞こえるように耳を近づける。


「……やじゃ、ない……にゃ」


「え?」


「だから!触れられるのは嫌じゃないと言っているにゃん!!」


てっきり嫌々流されているのかと思っていたので驚いた。


それにヒナが大声を出したことにも驚いている。


「むしろ、レイのほうが薬の効果で嫌々やっていたんじゃないのかにゃん?」


「そんなことないよ?!むしろ大好きだから襲っちゃってるんだよ?!」


「にゃん?!」


服のボタンを全て外して素肌を晒した。


「嫌だったらこんなことしないし」


ブラをずり上げて現れた乳首に吸い付いて舌で舐める。


「にゃう?!」


空いている手で尻尾をすりすりしながら胸を愛撫した。


そのたびにビクンビクンと跳ねて、感じてくれているのだと分かって嬉しくなる。


尻尾を撫でるのを止めてショーツの上から上下に擦ると少し濡れているのが分かった。


「好きじゃないならこんなことしないよね」


ショーツをずらして膣内に指を入れる。


気持ちのいいポイントならもう分かっているのでそこを擦る様に指を出し入れした。


「あ、あぅ、にゃああん」


じゅぷじゅぷといやらしい音が立ち始める。


「ほら、気持ちいいでしょ?」


「にゃあ、ひん、あっあうぅ!」


「ヒナが好きだからこうなってるんだよ?」


徐々に指の数を増やして不規則に動かす。


「あ、あぁ、ぁ、にゃ、あぁ!」


びくびくと背筋を伸ばして弓なりになってイった。


そこで私の悪戯心が働いてヒナの尻尾をヒナの膣口に当ててみる。


「ひぃあ?!」


ゆっくりゆっくりと中に入れていくと気持ちいいのか私にしがみ付いて体をびくつかせた。


「んにゃあああん!」


まだ入りきっていないのに嬌声を上げる。


ゆるゆると抜き差ししながら奥に進めていく。


ヒナはいやいや、と首を横に振った。


「め、だめぇ、ら、め、にゃぁ!」


今度は激しく抜き差しをしたらさらに反応が強くなる。


快感が強すぎるのかぽろぽろと涙を流しているので手でぬぐう。


「可愛いよ、ヒナ」


耳元で囁いた。


「ひにゃあああ!」


じゅぽんと音を立てて尻尾を引き抜くとさらにイってしまったらしく、くたりと私に寄り掛かってくる。


私は優しく抱き上げるとベッドまで連れて行って寝かせてあげる。



これで最後、そう思うと名残惜しくなって唇にキスをした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る