一章第2話 美少女に拾われました


結局俺は上で眠るユウリを起こすわけにもいかず火照った体をどうすることもできずに一晩を明かした。


「んにゅ」


と可愛らしい声を上げてユウリが起き上がる。


そして俺の上にいることに気付いて飛び上がった。


「ひゃわっ?!」


「お、おはよう?」


飛び起きたユウリはきょろきょろと周りを見渡している。


あれ、もしかして昨日の事覚えていない?


「あ、そっか……私昨日お姉さまと一緒に寝たんでしたね」


「う、うんそうだよ」


ユウリの指がぼんやりと自分の唇に触れる。


「なんだか、とっても暖かかったような気がします……」


あ、これ覚えてないの確定だ。


「そ、そうだね。二人で寝たからだと思うよ」


そう言っていそいそと寝袋を片付ける。


テントを出ると良い感じに雪が解けだしていた。


不思議なのは花畑周辺は雪が積もっていないことだ。


もしかしたら地熱が高いのかもしれない。


朝ごはんにと用意していた果物を切りながら温かいスープを用意する。


それを二人でもぐもぐしながらこれからのことを考えた。




私はもう領地に戻りたくない(ガチ家出)。


ユウリはガチ迷子。


なんとかしてユウリの、魔族の街に行って保護してもらえないだろうか。


保護は無理でも領地で結婚させられるよりかはいいはずだ。


「ユウリ、お家はどっちのほうにあるかわからないの?」


「……お花さんの声に呼ばれて来たのでなんとも、多分山を越えないとダメだと思うんです」


「山って、あの山?!」


北都スノーラントの北には人はおろか魔族すら踏破できないだろうと言われている切り立つ断崖の山が存在する。


「あの山のふもとにですね、通り抜けができる場所があるんです」


それ人間側の私がいい話なんだろうか。


結構重要な話題な気がする。


「多分あそこまで行ければ帰れると思うんですよね」


「じゃあそこまで行ってみようか?」


幸い今日は吹雪ではない。子供の足でも遠出は可能だろう。


テントも片づけて身軽になった私達は手を繋いで歩きだす。


ユウリは片手に花束を持って、私はキャンプ道具を持っている。




ふわふわと鼻歌を歌いながら歩くユウリは超絶可愛い。


昨日あったことが嘘のようだ。


ユウリの知り合いに会えばきっと昨日のユウリの状態についても聞けるはず。




二人して暫く歩き通した所、本当に山のふもとに洞窟があった。


これ、人間側には絶対秘密にしたほうがいい場所だよね。


「ここです、ここを抜けるとお家につきます!」


「ユウリ様!」


ユウリの言葉を遮る様に洞窟の中から魔族が飛び出してきた。


その手に持たれた槍が私を狙っていたので反射的にレイピアで受け取る。


キィン!と金属音をさせて剣と槍が交差した。


「ヴェイン!止めてください!」


ユウリの止める声が聞こえる。


「人間め!ユウリ様に何をした!!」


「迷子を連れてきただけなのに随分な挨拶だな!!」


ぎゃりんと擦れる音をさせて距離を取った。


「もー!やめなさーい!」


そう言ってユウリはヴェインと呼ばれる魔族の背中にある翼に飛びつく。


「うわ、やめてください!」


「ヴェインが人の話を聞かないからですー!ジンジャーは私を送ってくれたのに槍を向けるなんて!」


「しかし相手は人間です!!」


「人間魔族の前に礼儀がなってないです!そんなヴェインなんて大っ嫌いです!!」


「だい、きら、い……?!」




あ、大ダメージが入った音が聞こえる。


あの超絶美少女のユウリに大嫌いなんて言われたらダメージすごそう。


他人事のようにそれを見ていた俺はヴェインという魔族が崩れ落ちるのを見た。


心の中で合掌をしておく。


生きろ。




「ジンジャー、こっちです!お家までいきましょう!」


せっかくだからユウリに手を引かれるまま歩き出す。


その途中なんども魔族とすれ違ったがヴェインほど敵意をもって接してくる奴はいなかった。


多分あいつが特別なんだろう。


それよりも怖いのがユウリに手を引かれて歩いていると段々巨大な空洞の方へ歩いて行くことかな。


階層わけがされているのか門を通るたびに建物様子が豪華になっていく。


それらにわき目もふらずに歩き続けるユウリは一体何者なんだ。




暫く歩いてとうとうユウリの家についてしまった。


魔族の街の中心にあるであろう巨大な城の前に。




「ゆ、ユウリ?本当にここがお家なの?」


「そうですよ~」


そう言って門をくぐる。


ユウリと一緒にいるからか門兵は顔パスで通してくれた。


城の中でも俺を見てぎょっとする者はいても呼び止めることはない。


長い廊下を歩いた先にいた侍女らしき女性に二人とも身を清めるように言われてお風呂に連行される。


いくら自分の体で慣れたといっても他人の裸体を見るのにはまだ心の準備ができていなかったので目をつぶってやりすごした。


身ぎれいにされて通された部屋はとても綺麗な部屋でその一角にユウリの母親らしい人の横たわるベッドがある。


「お母様!」


そう言ってベッドに駆け寄るユウリ。


後ろをついていくと確かにユウリの面影をもつ女性が横たわっている。


彼女はうっすらと目を開けた。


「まぁ、ユウリどうしたの?」


「お母様のためにお花を摘んできたの!飾ってもいい?」


「えぇ、いいわよ」


そう言うと壁際で控えていた侍女らしき人が花瓶をもってきて花束を活ける。


「そちらの方は?お友達かしら?」


「んーん、私のお嫁さん!!」




ん?!


今何かおかしい単語が混ざっていた気がする。




「あらまぁ……ちゃんとお話はしてあげたの?」


「たぶん?」


いや多分じゃないから何の話も聞いてないから。


俺の雰囲気で察したのかユウリの母親はいったんユウリを下がらせて俺と二人きりの状況を作ってくれた。


ベッドサイドに用意されていた椅子に座って話を聞く体勢をつくる。




「急な事でごめんなさいね、驚いたでしょう?」


「えぇ、まぁ……なんで連れてこられたのかもわかりませんでしたし……」


「貴方のお名前を伺ってもいいかしら?」


「ジンジャーです。ジンジャー・スノーラント」


そう名乗ると驚いたように目を見開いた。


「まぁ、じゃあお隣のお姫様なのね?」


「いやまぁ自分は次女で家出してきてるんであんまり家のことは気にしないでください」


そう言えば安心したように息をつく。


「……ジンジャーさんはサキュバスという魔族はご存知?」


「……多分、他者の生命力を吸う魔族でしたか?」


あの世界では他人の精をよく吸い取ってたな!


「えぇ、そして私はサキュバスです」


「え、そうなんですか?」


頭にある角くらいしか魔族らしい特徴のないこの美女がサキュバスだって言う事実に驚いた。


「私はいいのですが、ユウリはサキュバスのハーフになるのです」


「あ……」


なんとなく言いたい事が分かったかもしれない。


「サキュバスのハーフは1人を『花嫁』と定め、その人物以外の生命力を受け付けなくなります」


「その花嫁になぜか私が選ばれた、と?」


頷かれた。


まぁ昨日のあれが原因だろうというのはわかる。


「……昨日、まるで夢うつつのような状態のユウリにキスをされました。それが原因でしょうか?」


「そうなりますね……まさかこんな方法で花嫁を見つけてしまうとは思っていなかったので驚いています」


「私も吃驚ですよ」


ス、と持ち上げられた手が私の頬に触れる。


「ユウリとのこと、嫌ではありませんか?」


中身が35歳独身男なので正直おいしいと思っています。なんて言えるはずもなく首を横に振る。


「嫌じゃないです。でもまだ出会って一日しか経っていないので私でいいのかそれが不安です」


「恐らく体の相性はいいはずですわ」


体の相性と言われてボッと顔に血が集まるのを感じる。


あの時確かに口付けだけで体は火照ったのだ。


相性が悪いわけがない。


「あなたさえよければここにいていいのよ」


「え、本当ですか?!」


「だって娘の大切な『花嫁』ですもの。追い出したりなんかしないわ」


うふふとほほ笑む表情はユウリにそっくりだった。


「ただし『花嫁』としての義務は毎晩ありますのよ。ちゃんと受け入れてあげてね?」


「う、あ、は、はい……」


これから毎晩あれがあるとなると俺は無事でいられるのだろうか。


生殺し、という言葉が俺の中に浮かんだ。




それからユウリの父親、つまり魔族の王様にも会わせてもらい『花嫁』として挨拶を終わらせる。


なぜ女子なのかと何回言われたかわからんけど中身はおっさんやぞと何度も心の中で返した。






◆◆◆






美味しい夕飯をいただいて、再度の湯あみを経てユウリにベッドに押し倒されている。


「お姉さま……」


するりと小さな手が薄手のワンピースの中に入ってきた。


少し冷えた指先の感覚にビクリと反応してしまう。


「……ぁ」


太ももをさらりと撫で上げる。


今日も今日とて体の動きは封じられていた。


「うふふ……可愛らしいお姉さま」


そこで気が付く。


ユウリの瞳が薄く金色の光を放っている。


恐らくそれが金縛りの原因か、サキュバスのハーフとしての部分の発現なんだろう。


すい、と服が胸のあたりまでたくし上げられてしまう。


肌寒さに少し震えた。


「んちゅ……」


と昨日みたいにキスが落とされる。


唇を割って舌が侵入してきた。


互いの唾液を混ぜ合わせるように舌を絡めあわせると昨日の比じゃないほどの電流が体を駆け巡る。


しかも今回は開いた手で胸への愛撫も追加された。


「ふぁあ……んふぅ……」


巨乳という夢は叶えられなかったが貧乳じゃないレベルである胸を愛おし気に揉み上げられる。


触れる全てが甘い電撃となって俺の思考を焼き焦がして行く。


「ぷぁ」


唇が離されるとお互いの唾液が糸を引いた。


ぷつりと切れる。


その様子に欲情してしまう。


俺とユウリの唾液に濡れたユウリの唇が胸の頂きへ落とされる。


「ぁ、や、だめぇ……!」


ぺろぺろと猫みたいに愛撫された。


そのたびに電流が走ったように体がびくびくと震える。


女の子同士ってこんなに気持ちいいんだ……


「お姉さま……気持ちいい?」


「やぁ……きか、ないでぇ……」


「やっぱり可愛い……相性もこんなにバッチリなんて、素敵……」


胸への愛撫によって開いた手がショーツへ伸ばされる。


止めようとしても体が動かせない。


すり、とショーツの上からなぞられただけで体が跳ねた。


「んにゃぁああ!だめ、それ、だめぇ!」


悲鳴のように嬌声が上がる。


楽しむようにユウリは何度もをそこをなぞった。


なんで、昨日はキスだけだったのに……!


遠慮なくショーツを下ろされる。


「う、そ……!や、やめ……!」


ユウリの舌がそこを舐め上げた。




「ふああぁあああ!」




感じたことのない快感に視界が真っ白になる。


「うふ、いっちゃった……お姉さま、可愛い」






楽しそうに言う声を聞いて俺は意識を飛ばしたのだった。








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