第5譚 執拗なる深淵の導者

やっとこの時が来た。まるで子供のようなテンションになってしまって自分が少し恥ずかしくなったが、今だけは考えないでおこう。老若男女が困惑と疑惑の目線で俺を見る。ああ、興奮してきた。別に俺はサディストではないんだけどな。「なぜ、あなたが生きているの?」当然な質問が飛んできた。こいつらからしたら少し前に燃やしたばっかだもんな。「そんなこと今はどーでもいいだろう、こんなおめでたい日なんだから」自分でもバカだなと思うほど強引に誤魔化した。魔王を倒した俺でも語彙力は小学生に負けるな。「彼女から離れろ。」ジュエリの婚約者のキルトが派手に装飾された剣を俺に突き付ける。「ちゃんと嫁を守るとはな。いい夫をもったじゃないか!」俺は祝福する。だが、こいつは俺の復讐の邪魔だな。「冥界術 一式 冥府の霧雨」俺が唱えると、キルトの頭上に黒い雨が降り始める。「な、なんだこれは」キルトがハッと驚く。無理もない。この世界の魔法にこんな魔法は無い。雨は肌にあたりそのまま貫通していく。頭に体に小さな穴がどんどん開いていくのを見るのはとても気分がいい。「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」キルトは叫びながら雨から逃れようとあたりを走る。だが、雨はキルトの頭上から降り続けるため逃げ場はなかった。悲鳴、雨音、怒号、すべての音が俺を喜ばせてくれる。ああ、なんてゾクゾクするんだ。」とうとう雨は、キルトの体をレンコン状にして降りやむ。ジュエリを絶望させるには十分すぎる光景だろう。「警備隊!何をやっているの!私を守りなさい!!」こいつは本当に屑だな。だが、むしろありがたい。なんの罪悪感も無く殺せるんだからな。「さあさあ、お待たせいたしました。現実世界で婚約を誓ったもの同士あの世でも、仲良くさせてあげましょう。まぁ、こいつらは間違いなく地獄だろうけどな。」ジュエリは俺の方をキッと睨む。こいつには本当の地獄を味合わせてやる。「冥界術 五式 彷徨う霊魂の開闢」先程死んだキルトの霊魂を術の代償として払う。キルトの死体はぐちゃぐちゃと音を立てながら姿が変わっていく。キルトの死体はこの世界の魔物オークに姿を変えた。「この魔法は、対象とした人間の魂を代償とし、そのものの魂のランクと同等の魔物に変換させる魔法だ。お前の旦那はオークみたいだな。クスクス、お前の旦那、性魔獣だったのかw」オークという魔物は主に女を襲う魔物だ。一度オークにつかまると死ぬまで性奴隷にされる。これはまた面白いものを引いたな。オークはまっすぐにジュエリに向かっていく。「あぁ、やめて、こっちに来ないで、低俗な魔物風情が!」オークはジュエリを掴んだ。そして自分の性器を露わにし、ジュエリの服を引ん剝く。「やめて、やめてください、凍夜様、この魔物を止めてください。貴方の性奴隷でもいいです。お願いします、助けてください。」本当に面白い女だな。最後まで俺を楽しませてくれる。「そんなにオークが嫌いなら、好きになるまでふたりっきりにしてやるよ。冥界術 二式 虚無にいざないし淵底の愚者」唱え終わると、空間に歪みができる。そこから無数の手がオークとジュエリを掴み、歪みに引きずり込む。ジュエリの悲鳴とオークの鳴き声、愚者の呻きが絶妙なコンチェルトを奏でる。この魔法は対象のものを虚無空間に誘う。そしてその空間に入ったら、死ぬまでその空間から出ることは出来ない。これでジュエリは死ぬまでオークの子供作りの器になることとなる。「お前の死に顔が見れないのは、残念だけど死ぬまでキルトと愛し合ってくれ。ま、今はもうオークだけどな☆」俺はウインクをしてジュエリを見送る。「いやぁぁぁぁぁあ」とジュエリが虚無へ消えていき、空間の歪みが無くなった。その様子を見ていたものたちはみんな嘔吐をし、涙を流す。「安心して欲しい。お前らまだ殺さない。」こいつらを生かしておくことでアヴァゼルの信用は無くなる。「それでは皆さん本日は私のパレードに参列していただき誠にありがとうございました。また逢う日まで」俺は深々と挨拶をして、姿を消した。

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