第4譚 冷淡と披露のパレード
全身が痛い。光に目が慣れていないせいで、頭に響く。その痛みと風の音から、またこの地に舞い戻ったのを実感できた。以前使えていたスキルは使えないようだ。どうやらドルザークに与えられた「冥界術式」以外には何も使えず、覚えることすらできないようだ。目的は二つ、王女ジュエリと王を死んだ方がマシだと思うほど苦しめる。そして、王のふざけた処刑を何の疑問も持たず、話を信じた無能な国民ども。やつら全員に地獄を見せてやる。明確な目標を持ち、俺は王都へ歩を進めた。 その頃、王宮では「これで、我らの世界に真の平和がもたらされたな!」偉大な事を成し遂げたといわんばかりの自信満々な顔で、兵士たちと話をしているのは、アヴァゼルだった。その時、王座の間の扉が大きな音を立てて開く。「王様!なぜ凍夜を処刑したのですか!普通に考えれば、凍夜が強姦殺人をしないことなんて、分かることでしょう?」恐ろしい剣幕で、しかし麗しい見た目の女は凍夜に味方をしているようだった。彼女の名前は、ルミア・エリナリーゼ。凍夜の魔王討伐の旅に力を貸していた、マジックキャスターである。ルミアは、アヴァゼルを責め立てる。「ちゃんとした証拠もなしに、王女様の証言だけで処刑するなど、どう考えても尚早ではないでしょうか!」息をつきながらアヴァゼルはルミアに言い放つ。「やっていないという証拠も無いであろう?それにこちらには、王女の悲鳴を聞いたという証言もあるのじゃ」もちろん嘘である。「それにそなた、謁見の許可も無く、王座の間に入るとは... あやつの仲間は全員問題を起こす気なのか?」「ははは...」周りの兵士たちは笑い声をあげながらルミアを睨む。その圧と兵士に連れられルミアは追い出された。後の噂なのだが、王宮からでてくるルミアの姿を見たものはいなかったという。その後、王女には蘇生の禁術を施し、蘇ったと国民には広められた。それから数か月が立った。その日、イグジス王国は今までに無く盛り上がっていた。それもそのはず、今日は王女ジュエリの結婚披露パーティーが行われる。突然、人々が声をあげる。「おお、なんて美しいんだ。」ジュエリが純白のドレスに身を包み、婚約者である隣国の王子キルトと腕を組みながら、国民の名前に姿を現す。「ごきげんよう、国民の皆様。今日は私共の為に集まって頂き、大変うれしく思います。あの時、殺されて消えるはずだった私を父は、全力を尽くし、生き返らせてくれました。そして、私の夫キルトはずっと私を守っていてくれました。結婚できたことは、私に起きた奇跡の中でもっとも喜ばしい出来事です。今日は皆様も楽しんでいってください。」凄まじい拍手とともに国民たちは祝福のムードで盛り上がっていた。その中の一人が、ステージに上がっていく。フードを深くかぶり、顔を隠している男は、周りの注目を集め、とても冷酷で歓喜に包まれているような寒気のする声でジュエリに話しかけた。「本当におめでとう!今日までずーっと待ってたんだ。その純白のパレットに紅い華を咲かせる時をね」
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