第3譚 終焉と復活のウロボロス
魔王討伐により浮かれまくっている国民を尻目に俺は、悩んでいた。確かに俺は魔王を倒した。それにこんな世界の中でも信じられる仲間も出来た、だが帰れはしなかった。この後俺は何をして生きていくのだろうか。そんな抽象的な悩みを抱え、俺は眠った。「そいつを処刑しろ!」「勇者だからって何をしてもいいのか」「あいつこそ悪魔だ!」騒がしいな。俺は誰かに向けられた激しい罵倒の中、目を覚ました。体が重い、腕と足を動かすことができない。うとうとしている脳を無理やり覚まし俺は自分の置かれている状況をようやく理解することができた。誰かに向けられている罵倒は全て俺に対するものだった。俺は戸惑いを隠せず、つい叫んだ。「これは、どういうことだ!なぜ俺は縛り上げられている!」俺の言葉を遮るように低い老人の声が響き渡る。すぐにその声が誰のものかは分かった。アヴァゼルだ。「そなたは昨夜、勇者という立場を使い、王女を犯したうえ、殺害し、その罪を兵士に賄賂を与えることによってもみ消そうとした!」俺は何が何だか全く分からなかった。そのはずだ。実際に俺は何もやっていない。「何をいってやがる!そんなことはしていない!」俺の主張は虚しく、俺の首に刃が刺さる。首が熱い。血が流れる。痛い。苦しい。そして俺は理解した。笑っている国王、その裏に潜む王女の姿を見て、そこで俺の意識は途切れた。 「目覚めよ...」喉を伝う刃の激痛を感じながら、俺は飛び起きるように目を覚ました。周りは真っ暗だ。俺は死んだ。ここは、天国かなんかか?自分でも驚くほど、冷静だった。「ここは、魂の保管所だ、そなたの所有権は一時的に我にある。」いきなり俺に語り掛けてきたのは、一見すると角の生えたヤギのような何かだった。ここまで色々なことを経験してきた俺は大抵のことなら驚かない自信があった。だが、その何かには本能的な恐怖を覚えざるを得なかった。整理しきれていない俺に話しかけてくる。「我の名は、冥界を統べるものドルザーク、我はそなたにチャンスを与えに来た。」こいつを信じてはいけない、そんなのは考えなくても分かった。だが、俺はそのチャンスとやらに興味を持ってしまった。「チャンス...?」疑問を簡潔に伝えた俺にドルザークは続く。「ああ、チャンスだ。簡潔に言おう。そなたを蘇らせてやる。」俺は、驚きで声が出なかった。蘇らせる?何を言っているんだ?俺は確かに死んだんだぞ?ドルザークはそんな俺の気持ちを置いていき、話を進める。「もちろん、ただで蘇らす訳にはいかぬ。我に得がないからな。」理解することはまだできていない。だが、誰でもいうであろうセリフをそのまま俺は言った。「何をすればいいんだ。」ドルザークは待ってましたと言わんばかりに続く。「なに、簡単なことだ。そなたはあちらの世界でやり残したことがあるだろう。」その通りだ。俺はあいつらを殺す。死ぬ前にそう心に決めた。「ああ、だが俺のやり残したことと、あんたが得を得る。俺の中では全くつながらないことなんだが。」ドルザークは見た目とは裏腹にきちんと説明をしてくれる。「我は人間の憎悪が大好きなのだ。そなたの中には激しい憎悪がある。それを味わいたいだけなのだ。だが、ただ味わうだけでは芸がない。だから、そなたを蘇らせる。そして、そなたが目的を果たせば果たすほど、そなたから憎悪を我が戴く。どうだ、我と契約するか?」俺は復讐ができる。あいつもそれを楽しむということか。悪趣味だな。だが、願ってもないチャンスだ。俺は覚悟を決めて答える。「そういうことなら契約する。俺の憎悪をお前に味わせてやるよ!」ドルザークはニヤッと笑う。「面白い人間だな。契約成立だ!さぁ、見せてみろ。お前の憎悪を、お前の中のもう一つの顔を!」突然、頭の中に声が響く。 称号が勇者から、終焉をもたらし者に変更されました。全てのスキルを忘れ、冥界術式を覚えました。貴方の新たな人生に祝福を そこで俺の意識はまた途絶えた...
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