初出勤です!

カーテンの隙間から差し込む光でも、シーツに広がる海は干上がらない。恵子を抱いて、抱いて、抱き続けて朝になった。陽ざしに抱かれ眠りについた。




「一夜楽しんで、昼までエッチした後仕事で女の子を抱く、最高の人生…」

「綾、性欲半端ないよね」

 恵子は身体から出た水分を補う為にミネラルウォーターを身体に流し込みながら言う。

「私の相手できるから恵子に言われたくないんですけど」

囁いた後、最後に恵子をイかせて新しい仕事場、キングダムに向かう。前は表から入ったけれどもうこれから社員になったので裏口から入るようにとのこと。店の場所が所謂、風俗街にあるので間違えて隣のお店に入らないようにしなければならない。間違って男の相手とか…想像しただけで股が裂けそうになる。攻められる何倍も無理。無理無理。女性経験はかなり豊富だと自負しているけれど、男性は一度もない。あれ?もしかして私処女?戦場に咲く鉄処女って感じ?膜はとうの昔に亡くなったけれど。あれいつだったかな。

 初めての彼女とした時に無理やり玩具を挿入されたんだっけ。痛すぎて朝まで泣いたなあ。懐かしい。私がネコできないのはそのトラウマがあるからかもしれない。

 裏口から入ってあの真っ赤な部屋に入ると知らない女の子が二人座って煙草を吸っていた。

「どうも~」

すうっと二人の間に入る。同じお店の同僚で皆さんレズビアンなのだろう。つまり私に抱かれる予定があるということだ。とりあえず連絡先でも聞いておこう。

「新入りの綾です、よろしくお願いします~早速ですけど仕事終わりに皆でラブホお茶会でもどうですか?まあ飲むのはお茶じゃなくて愛液になるんですけど」

 金髪セミロングの人は爆笑してくれたがもう一人の黒髪ショートの人は真剣引いているのがよくわかる。

「いいねー私紅茶がでるよ?」

 金髪ロングの人は気さくに返してくれた。ノリいいし、今日の人は新しい同僚なのが決まった。対して黒髪ショートの人は何事もなかったようにスマホに向かう。不愛想だけどこういう人を喘がせるときの達成感が人生楽しいと思える一つの瞬間なので後々は抱く。絶対抱く。今日はまあこの金髪ロングさん。

「優ちゃんも行くでしょ?」

 金髪ロングさんは黒髪ショートさん、優さんというのかな?に悪戯な笑みを浮かべながら訊いていた。

「私今日彼の家行くからパース」

 優ちゃんさんはバイセクシュアルなのか。これは燃える。私のテクで彼氏の元に戻れなくしたい。

「優さん、よろしくです~」

 どうもとお辞儀だけされた。いい!優さんの喘ぎ声の妄想が捗る。

 適当に雑談をして、「同僚なので連絡用に」という魔法の言葉で二人の連絡先も簡単に貰えた。あと今日仕事終わりに抱く予定の金髪ロングさんは楓さんと言うらしい。因みに優さんは王子で楓さんは姫らしい。

 今日は撮る予定だった宣材写真の代わりに恵子が描いて行った絵を使うらしい。なんでだよ。出勤の嬢二人、煌びやかな目だけを隠したパネルに、新人!と書いたお世辞にも上手いと言えない恵子の絵が挟まれる。なにこれ。いやなにこれ。こんなの指名されるわけがないと思っていた矢先、瑠衣さんの声が聞こえる。

「綾ちゃん指名~お客さん通すから二階の部屋で待ってて~」

 ええ?両脇の美人差し置いてあの絵選ぶ物好きが居るのか。出勤して一時間で初仕事が入ってしまった。選んだ人、絵のまんまの人が来るとか考えなかったのだろうか。まあ何にせよ私の初めてのお客さん。頑張って気持ちよくなって貰おう。難がある人じゃなければいいのだけど。

 赤のスエード生地を敷き詰められた階段を上る。スエード生地が良い消音材になって足音が響かないのは客間で待つお客さんへの配慮か、それともたまたまそうなっただけなのか。まあ後者だろうけど。

 指定された部屋に入って王様みたいな装飾がされた椅子に座りお客さんを待つ。これは私が王子だからであって姫だとよくあるシーツが上から吊るされているベッドに正座して待つらしい。姫の方は事後のシーツの交換とかに手間取る為遊ぶ料金が割高らしい。王子は最初だけしか豪華な椅子を使わないし簡素なベッドなので楽しんだ後も掃除が楽なので普通の料金らしい。

 足をクロスし組んでみる。これ王子っていうより王様じゃないか?下着で座っているのも…これ入ってきた人慣れてないと笑うでしょ。



 程なくして初めてのお客さんが入ってきたのだが私はまた辞めたいと思ってしまった。

「どうも、飛鳥です、いらっしゃいませお姫さ…」

 相手の姿を見て驚愕した。私の目に狂いはない。数年会ってなかったけれど、ちっとも変わってない姿を現した。

「え?綾じゃん」

 初めてのお客さんは数年前初めて付き合った、昔の彼女だった。

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