研修始めます!

 ダメだ私この仕事できない無理だ辞めよう無理だこれはほんとに無理。

「あの…沙織さん私ほんとダメ…」

「姫華って呼んでよぉ」

 この人のふわっとした見た目に完全騙されていた。というか、恵子が最初ナンバーワンはバリタチって言ってたの忘れていた。そしてイケメンバリキャリ瑠衣さんネコかよ…

「貴方王子でここに在籍するのでしょう?それならお客さんの気持ちと仕事の流れを知らないと。」

 沙織さんは同じ身長くらいだと思っていけど、近づくと拳一つ分くらい高かった。壁に押し付けられて逃げられず。

「待って…いっ…」

 少し強めに耳に噛みついてきて主従関係を明確にされる。先手を取られた。予想外で今まで経験のない場所を責められ、脳の処理が追い付かずダウンする。絶望。ストリートじゃ負けなしの喧嘩師でもプロのリングで活躍する格闘家には勝てないのだ。

「耳凄く弱いんだねぇ。S気質かなと思っていたけど、意外とM?」

 耳元で囁かれる。手の平が背中に回り逃げられないように捕まえられると耳を舐められた。舌と耳が唾液と絡みいやらしい音が頭に響く。噛む。舐める。噛む。噛む。舐める。噛む噛む噛む噛む。彼女の息使いが直接脳に響く。絶対歯形付いている。頭が蕩けてくる。

「おっと。もうダメになっちゃった?まだ何も教えてないよ?」

 私の心臓が脈打つ音が聞こえる。

「はあっ、はぁ、ちょっと、もう、やばい、です、」

 猫被った女性にネコにされた敗北感と快楽で死にそう

「耳だけで息切れるってやばいよぉ。休憩ついでにお風呂いこっか」

 ゆるふわロングの髪を丸めてお団子を作った姫華は右手の指を私の指と交互に重ね握る。長く細く、柔らかい。

「まずここ重要。お風呂は王子側が誘う。あとこの店のお風呂少し広いから離れて寂しい思いをさせないためにお姫様をなるべく抱き寄せて後ろのシャワーを左手で取って密着した状態で浴びる。お湯を髪に掛けられるのが嫌な人のほうが多いから注意ねぇ」

 さっきまで攻められた後に業務内容を真剣に説明されるとちょっと盛り下がる。まあここで休憩。つまり私が攻めに戻ることもできるってこと。先手必…

 シャワーの柄が落ちる音が風呂場に響いた瞬間王子姫華に唇を奪われる。深く舌と唾液が絡み混ざり合い音を立てる。姫華の繊細に動く舌が高速で私の歯の裏や下顎の裏を走る。快楽で落ちそうになる。がここで反撃だ。姫華の舌が一瞬止まった瞬間私も舌で応戦を試み、舌を相手の舌先に伸ばした。がその瞬間噛み止められ姫華にまた奪われる。テクニックが段違いだ。勝てない。

「どう?不意にキスされるのいいでしょう?少し強引にするといいよぉ」

 その後姫華は石鹸を泡立て洗いっこする。石鹸でぬるぬるした体を壁に押し付けられ股の間にするりと脚が侵入してくる。さながら王子の帯刀する聖剣を当てられているようだ。これから生きる道はないぞと。強制的にイク道を選ばされている。

「ふ~ぬるぬるして気持ちいいねぇ、流したらもうベッド行っちゃおうか?貴方の可愛いところもっとみたいなぁ」

 私が言われ慣れていない言葉を与えてくる。私の見た目と反応で的確に選んで投げているのか?こんなの。こんなの。好きになる。

「王子は姫を心から愛して相手を心から好きにさせる。これが気持ちよくさせて気持ち良く仕事する鉄則よぉ。おぼえてねぇ」

 仕事という言葉で我に返る。危ない。そう仕事。これは仕事

「あっけどこれは社員の研修だから仕事じゃないかなぁ。好きよ。顔はいいしそれに似合った髪は綺麗で形のいい胸…抱き心地もいいし反応もいい」

 あ、もう無理好き。バリタチだった私は完全に篭絡された。もう気持ち良ければいいのではなかろうか。

「あ、あと名前何だっけ」

 ぴしりと凍った。私はこの人に名前も知らん女枠で抱かれていた。私の中でいっぱいになっていた王子姫華もとい沙織さんがすっと消えていく。千年の恋も冷めるというやつだ。というか行為中絶対言ってはいけないワードでしょ!私もビアン合コンでワンチャンした女の子と行為中あれ…この子名前何だっけ…ってなりながら朝ライン交換した時に思い出したことあるけど!言っちゃいけないでしょう!

 ふふふ…ムカつく燃えてきた。私を一生忘れられないようこの女も噴水にしてやる。

 次期噴水女を突き放し一歩下がる。

「私は“王子”飛鳥。お姫様をイかせます」

 



「お疲れ綾ーどうだったん?」

 ニヤニヤする恵子はどうなったか理解して聞いているようだ。

「途中ちょっと頑張ってたわよぉ」

 ナンバーワン王子の腰に抱えられ真っ赤な部屋に戻ってきた。

「あの…立てない…」

 もうお分かりの通り、完敗しました。噴水女は私です。

「飛鳥さん?大丈夫?今日は私が抱こうか?」

 私のこんな姿を見るのが初めてなのだろう。恵子は満面の笑みを浮かべて煽ってくる。源氏名で呼ぶなや。

「うるさい噴水女。」

「飛鳥さん潮吹きすごかったわよぅ。鯨みたいだったぁ」

沙織さんも弄ってくる。色んな場所を弄られ攻められた後なので逆らえない。

「噴水女は“飛鳥”さんのほうじゃなくて?」

 ホホホと笑う恵子がとても生き生きしている。はぁ…今日の夜はこいつで存分に憂さ晴らししてやることを神に誓う

「王子の仕事わかった?やれそう?」

「やれます!証明したいので瑠衣さん今から…どうですか?」

 今はとりあえず女の子を抱く側に周りたい。聞いてきた瑠衣さんを誘う。

「綾ってバカ?見境なし?」

恵子ににバカ認定を喰らう。

「私は女を抱ければバカでもいいの」

 こんないい女、抱かないほうがバカだ。

「ええ?ほんと?じゃあいこうかな?」

 瑠衣さんはあっさり乗ってきた。不本意ながら沙織さんのレクチャーでスキルアップできた気がする私は瑠衣さんの手の平に指を絡めさっきの部屋に引っ張る…が。

「ダメだよぉ綾ちゃん、死ぬまでイかされちゃうよぉ」

 沙織さんに引き留められる。瑠衣さんは不敵な笑みを浮かべる。

「行こうよ。沙織より気持ちよくしてあげる」

 瑠衣さんの吐息が耳を撫でる。沙織さんに死ぬほど攻められた後なので敏感で背中が跳ねた。

 瑠衣さんやっぱり見た目通りのタチ⁉

「え、あのう…瑠衣さんネコじゃ…?」

「瑠衣はバリタチだよぅ」

 なるほど、沙織さんがタチリバで瑠衣さんがバリタチ…沙織さんより凄いのか、私本当に死ぬのでは。

「あ、やっぱり次の機会に…」

 瑠衣さんの手を離し後ずさる。

「綾ちゃんから誘ってきたのに悲しいなぁ、まあ、また時間あるときにね」

 髪をかき上げバチッとウインクを飛ばされる。瑠衣さんの首元にある蝶のタトゥーが羽を揺らしているように見えた。

危ない。一日二回も犯されるところだった…

 というかあの沙織さんをもイかせる瑠衣さんって相当凄いのか。二人でヤッてるとこ見せてくれないかな。

「じゃあ今日は店お休みにしようかな。沙織、うち来るでしょ?」

「いくぅ~物足りないから抱いて~」

 瑠衣さんの胸元に収まる沙織さんは猫が飼い主にじゃれつくように見える。さっきまであの子に攻められていたのか…

「じゃあ明日から出勤ねー宣材写真は…明日でいっかな」

 瑠衣さんは早く帰って沙織さんを抱きたいらしい。

「お疲れさまです!じゃあまた明日」

 ハードな研修が終わり、新しい職場を後にした。


「あたしも帰ろーっと」

 駅に向かおうとした恵子の手を掴んで引き寄せた。

「あんた今日楽しそうだったよね。帰さないから」

 バリタチの感覚を戻すため、朝まで恵子を攻め倒す。

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