第11話 最初の犠牲者。

 拍子抜けするくらいに特筆すべき点のない護衛任務。

 商人からすればその方が良いのだけど、面白みに欠ける。

 夜営時にパコってるあたまのおかしい奴らはいるけれど。


 道中魔物が少ないのは定期的に冒険者による街道及び街道近辺の魔物狩りが行われている故なのであるが。


 元々街……側の方がそれは盛んなため出発早々は少ないのは頷ける。

 丸一日以上進んでいるため初日に比べれば遭遇する確率は上がるのだが……


 商隊一行は昼食のために街道脇に馬車を止め、1時間程の休憩を取る。

 昼食をとり自由時間ともなると各々馬車から離れ過ぎない程度に好き勝手に過ごしてた。


 真希は見回りと称して森の中を散歩していると、湖らしき水辺を視界に捉えた。


 ついでに捉えなくてもいいモノまで……

 

 そこにはスワップのメンバーのうち、男女二人が食後のハッスルをしているところだった。

 ちなみにこの組み合わせは番の二人ではない。

 パーティ名が表す通り、この幼馴染4人組は互いの了承の元ハッスルする組み合わせを変えている。


 「あら、覗きとは良いご趣味で。」

 女がよがりながら話しかけてくる。


 「一応人避けのスキル使ってたんだけどな。」

 このチームの斥候を担っているのだろう男であるが、この男の人避けははっきりいえばザルである。

 意識がハッスルに集中しすぎているのが、そのザルの最大要因であるのだが。

 抑々の練度が低すぎるのだ。

 真希くらいになればハッスル行為で意識が飛んだとしても、Cランク冒険者くらいまでには看破されないスキルを持つ。


 「このくらいなら通り抜けられる。それに見つかって困るならこんなところでシなければ良い。」

 見られる事も想定してのことだろ?と。


 「どこで何をしても良いけど、この後の仕事の影響のないようにね。昨晩は何もなかったから良いけど。」

 その言葉は昨晩の行為の事も知っているということであるが、それがどういう事か理解出来ない二人だった。

 テントで見えないというのに。多少声が漏れていても、自分のテントにいてどこの誰が何をしていたかなんて通常わかるはずもない。 


 用はないとばかりに真希は馬車へと戻る。



 それにしてもほとんど魔物を見かけない。

 二日目ももうすぐ夕方となり、あと2時間程度で夜営ポイントに到達するのだけれど。

 これまでに出会った魔物と言えば、統率の取れないゴブリンかスライムくらいのものだった。

 

 やがて2日目の夜営ポイントに到達する。

 馬車を壁のように配置し、テントを張り夕食の準備をする。

 計算出来ない冒険者なんかは途中の食べられる魔物をあてにしていたりするが流石商会、そのあたりの準備は抜かりない。

 当然真希達は収納に色々入っているため困らないのだが、他の冒険者に見られるのは避けたいと思っている。


 貧乳乙女隊は、見張りの時のためにビーフジャーキーを提供した。

 完全に飲んだくれのおっさん定番必需品といったところだ。


 2時間の見張りは何もなければ暇なため、それでもくっちゃくっちゃしているだけでも気は紛れるだろう。

 絵面は綺麗とは言い難くなるが。

 

 夜も更け、1時も半を迎え貧乳乙女隊の見張りの時間の終わりに近づく。


 「気付いてる?」


 「探知系では真希には劣るけど、私でも感じる。」

 真希は何かを感じとり、周囲への警戒を強めた。

 

 「商会と他パーティを起こしてくる。」

 夏希は紅蓮を起こし、他のパーティを起こすよう伝える。

 


 「寝込みを襲われるかと思った、主に金銭的な意味で。」

 紅蓮のメンバーはそう話した。


 「あほか。そんな事より他パーティを起こしてこい。囲まれているぞ。」

 夏希と紅蓮の声掛けで全ての人間に危険が迫っている事を伝える。


 全員が出てきて周囲の警戒にあたる。

 しかし真希達以外に危機を感じたのは紅蓮の斥候の男と姫だけだった。


 「これ、魔物じゃないな。」

 紅蓮の男が呟いた。

 

 「ぁ、ぁ……」

 姫が何かに怯えていた。足はがくがくと震え足には何か液体が伝ってきいているのが確認出来る。


 「そこの青〇女、避けなさい。」

 真希が昼間湖の傍でハッスルしていた女に注意を促す。


 「ぇ?」


 と振り向いた時には遅かった。

 どこからともなく飛んできた矢が右から左のこめかみを貫いていた。


 「はしたのに。」

 ドサっと地面に倒れ伏した女の死体に取り乱すスワップの残り3人、姫の怯えに意識を集中しガチガチな親衛隊の3人。

 目に見えぬ攻撃による脅威と恐怖は始まったばかり。

 

 

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