第9話 回想終わり、カオリの真実。

 それからの二人は冒険者らしく普通に依頼をこなしていった。

 主に薬草採取の依頼ばかりを何度も何度も。

 しかし必ずといって良い程、依頼にない魔物をついでに狩ってきてはギルドに買い取りを行う。

 依頼として狩ってくれば恐らく既にBランクには確実になっているくらいに。


 ギルド職員も気になって尋ねた事がある、どうして依頼として件の魔物達を討伐しないのかと。


 すると帰ってきた返事は……


 「魔物退治がしたくて冒険者になったわけではないので、薬草採取のついでにエンカウントした魔物を狩ってるだけ。」

 「ついでに現れたから食後の運動をしただけ。」


 である。



 この辺りで既にギルドマスターの見る目は変わっていた。

 ついでに狩ってきた魔物の中にはBランクがざらにいたのだ。

 たまにはAランクですら混じっている。

 どう考えてもDランク冒険者の成せる事ではない。


 一度こっそりギルドマスターが薬草採取の様子をこっそりストーキングしたことがあった。

 遠視の能力があるため、一般の人間では気付かれない距離からの視察。


 その時に採取……もとい、ついでに狩ったのはダンジョン内に巣くうAランク魔物・ピンクスコーピオン。

 名付けの由来は、件の蠍の毒を受けると淫らな気分になり、誰彼構わず性的に襲う色々な意味で放送出来ない魔物だった。

 その襲う対象は同種族とは限らない、まさしく酒池肉林と化す事から特に女性冒険者からは忌み嫌われていた。

 ただし、この毒は例によって貴族や夜の街からは重宝されている。

 調合により適度な媚薬となるためだ。


 厄介なのはその毒だけに非ず、単純に身体は硬い(亀程ではないが)、鋏は鉄の鎧なら簡単に切断出来ると戦闘力的にも申し分なかった。

 そんなピンクスコーピオンをいとも容易く討伐し、必要な素材をなんと空間収納へと保管してしまったのだ。

 遠視の能力で一部始終を見ていたマスターは当然驚いた。

 その後の蠍の毒なんて関係ない淫らな行為も含めて。


 色々な面で一目置かれる存在となるのは、この時見た事をギルド職員に会議で報告したためである。


 もちろんその前にマスターに呼ばれ個室で説明してもらう事になったが。


 「お前ら実力隠しすぎだろ。」


 「隠すのは身体だけのつもりだけど?」


 「いや、そんなボケはいらねーよ。こないだのついでの蠍討伐見させてもらったよ。」

 頭を押さえながらギルドマスターはやれやれとため息をついた。


 「あ、あの時のストーカーはマスターだったか。誰かに見られてるとは思ったんだよなー。」


 「だから余計萌えちゃったよね。燃えちゃたかな。」


 「ダンジョンであんな事するアホもそうそう見ねえよ。まぁそのおかげでお前らが男なんて興味ないのもわかったけどな。」


 「で、お前らは何をしたくてそういう事してるんだ?Sランクに上がりたいとか、誰も倒したことない魔物を倒したいとかそういうのではないんだろ?」


 「他言したら潰すんで、それ約束してくれるなら良いよ。」


 「物騒だなおい。これでもマスターやってるんだ、余程の事でない限りは個人情報は秘匿する。」


 

 「……私達は、AランクとなってAカップ以下の女の子だけのパーティを作るためだけに冒険者をやってるの。」


 「まぁ実際のところはBカップまでが許容範囲だな。正確にはトップ84以下に限られる。バスト100のAカップはいらん。」


 「つまり可愛い女の子たちだけできゃっきゃうふふなパーティということです。世界とか魔物の脅威とかには興味ありません。」


 「あぁ、わかった。つまりお前達は変態という事だな。まぁ人の趣味にとやかく言う事じゃないな。ただな、Aランクだと場合によっては強制招集とか出るわけだが?」


 「そういうのがいらないからランク上げ止めてるんだよね。強制招集なしだったらランク上げして、もう少しは高ランク魔物をついでに狩っても良いんだけど。」


 「そこについてはいくらマスターでも一人の一存では決められん。Cランクまでであれば可能だが。」


 「じゃぁ暫くまだDのままで良いよ。」

 本当はDカップを連想させるからとっととランク上げたいんだけど……とは二人とも思っていた。


 「そうだ。この先もついでに狩った魔物に関してはこの街でなら普通に換金出来るよう今後も便宜を図ってやる。だから数か月はこの街で活動してもらいたい。」

 性格はともかく、冒険者としての実力は認めているためギルドマスターとしては他所への流出は避けたいところだった。

 現在街に所属しているAランク冒険者の数は少なく、大抵遠征と称して遠くへ行ったりダンジョンに籠ったりしている。


 「まぁ良いけど。依頼で他の街に行くくらいは許してよね。」


 「私らの邪魔さえしなければ、多分人畜無害ないち冒険者として活動してやるさ。」

 どこが人畜無害ないち冒険者なんだとツッコミたいのをマスターは飲み込んだ。


 「それと頭の緩い冒険者がちょっかい出さないようにお触れでも出しておいて欲しい。こっちから喧嘩は売らないけど、返り討ちにはするよ?」


 「ある意味ではAランク魔物よりお前達の方が脅威って奴もいるからな、なんとかしよう。」


 こうして貧乳乙女隊は薬草採取をメインに大物をついでに狩ってくるというあたまのおかしい冒険者というのが出回る。


 


 「と、言うわけで昔話と関係と目指すところはこんな感じ。」

 カオリは開いた口が塞がらなかった。


 「ねぇ、その貧乳乙女隊が求める人材って、冒険者じゃないといけないの?」

 カオリはどうにか正気に戻ると質問を投げてきた。


 「そういうわけじゃないけど、いずれどこかに本拠地?集落?でも構えようとは思ってるから。別にこの国に固執する事もないし?」


 「私を専属商人……お抱え商会にしてもらえないかしら?」


 「ダメ。」

 夏希が一刀両断した。


 「なんで?」


 「あんた、Cカップはありそうだから。」


 その言葉にショックを受けたが、突然開き直り。


 「これはパッドよっ!!」

 バッと胸元を開いて見せた。

 そしてぽろっと床下に何かが落ちた。


 変態は変態を呼ぶ。

 変態は変態同士惹かれあう。

 この出会いは果たして……

 

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