3

 私の思いとは反対に、奴は私のお腹の中で暴れ回った。辛かった。冷や汗が止まらなかった。一刻でも早くこの悪魔を自由にしてやりたかった。この狭い監獄から解き放って、大空に羽ばたかせてやりたかった。いや、この苦痛から開放されたいのは私自身だった。


 幸い、運転手さんには私が漏らしそうなことに気づかれていない様子だった。が、今思えば気づいてくれていた方が良かったのかもしれない──


 だんだん痛みが治まってきた。どうやら安定期に入ったようだ。とりあえず、なんとか家まであと半分のところまで来た。いける!


 しかし、そう簡単に家には帰してくれやしなかった。屁だ。屁が出そうになったのだ。もしここでしてしまったら、本体である実が出てきてしまうかもしれない。そうなるとまずい。それでも私は屁がしたかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る