45.とりあえずデートをしたいのだが
とは言ったものの、僕がモール内でヒトを攻撃したのは事実なので、一応警備の方に事情を話しておく事にした。
監視カメラには相手が九条さんに攻撃しようとしている様子も映っていた。
それといつの間にか戻ってきた南條たちが第三者として説明をしてくれた事もあり、僕たちが自由になるまで、時間はあまりかからなかった。
その後、南條が友達を連れて颯爽と去っていく後ろ姿に少しだけ感動してしまったのは内緒である。
ありがとう、南條。
君の事は忘れないよ。
……
………
…………
「それで、僕たちはどこに向かっているの?」
僕はモール内を歩きながら、九条さんに聞く。
九条さんはエスカレーターに乗りながら、答えた。
「映画館ですよ。あ、片倉さんのチケットも取ってありますからね」
「映画か。僕としては構わないけど、割とありがちなのを選んだね」
ちょっと意外。
「確かにデートとしては定番です。まあ、今回は私としても初めてですので、王道に沿っていこうかな、と」
なるほど。真剣に考えてくれているようである。
僕はそれを素直に嬉しく思った。
「ちなみに、何の映画?」
「ふふん。デートで見る映画を飾る二大トップのウチの一つ。人の恐怖心を煽り、吊り橋効果を狙う逸品。頼れるのは隣にいる恋人だけ。物理的にも精神的にも距離が近くなる究極のテーマ」
いや、前置きが長いって。
けど、残念ながら『恐怖』と言う単語から答えは導き出せてしまった。
つまりは、ホラーだね。
「––––––そう、ホラーです!」
なんなのよ、そのハイテンション。
「ちなみに見た事はありません!」
それ、ドヤ顔で言う事じゃないよ?
「いいですね、片倉さん。その打てば響く感じ、好きですよ」
そうですか。
素直に褒められてちょっと嬉しくなった。
「片倉さんはホラーを見た事はあるんですか?」
え〜と。
僕は記憶を遡る。
「一回だけ、家で妹と見た事がある」
「どうでしたか?」
「う〜ん、普通だったかな。正直、怖い、だとか、夢に出る、だとか、言うほどではなかった。お姉ちゃんのせいで恐怖に耐性が付いちゃってる、ってのも理由の一つだろうけど」
「あー、それはご愁傷様です」
わかってくれるか。
玲亜は玲亜で無表情で俺の右腕を占拠していたし、別にいつも通りだった。
……いや、それは判断材料にならんか。
「……むむむ、ライバルは妹さんですか」
九条が何か呟く。
「ん? どうした?」
「別に、何でもありませんよ」
不貞腐れたような顔をする九条さん。
女子ってよくわからないな。
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