31.少女と弁当を食べるのだが
昼休み、生徒会室前。
俺が着いて2分ぐらい経った頃に九条も来た。
「申し訳ございません。遅れてしまいました」
「いや、俺もさっき来たばっかりだよ」
何なのよ、このデートの決まり文句めいた掛け合い。
九条さんが生徒会室を開けて、迷わず入ったので、俺も後ろに着いていく。
そういえば、初めて入ったな、ここ。
名前の雰囲気からもっとオタカイ場所かと思っていたけど、イマイチオーラはなかった。
小さな部屋に長机が一つとパイプ椅子が七つ。
私立なら、もっと豪華かもしれない。
ともかく、九条さんがパイプ椅子の一つに座ったので、俺はあえてその隣に座った。
「ちょっ、片倉さん。椅子、七つもあるのになんでそこに座るんですか?」
「んー、中途半端に離れていると逆に気不味いから。それとも、九条さんは離れて欲しかった?」
そう聞き返すと、九条さんは慌てたように言った。
「べ、別に嫌とは言ってませんけど、––––––まさかここまで躊躇なく隣に座ってくるだなんて」
「ん? なんか言ったか?」
「さあ。ただの独り言ですわ」
「じゃあ、そろそろご飯にするか」
「そうですね」
長机に置かれた二つの弁当箱は同じ柄をしている。九条の分も俺が作ったのだから、当然だ。
俺は弁当箱にまでパターンを求めない。
「開けていいですか?」
ワクワクしたような表情の九条さん。
俺に焦らす趣味はない。
「どうぞ」
と俺が促すと、九条さんは弁当箱を開けた。
「わあ」
今日のレシピは日の丸ご飯に卵焼き、ブロッコリーのサラダ、
そして、そう、タコさんウインナーだ。
九条さんは箸でタコさんウインナーの一つを取る。
それを目に近づけて感嘆の表情を浮かべる。
ちなみにタコさんウインナーを作ったのは今日が初めてだ。
そして、その理由は、
「……初めて見ました」
ただの遊び心だ。
だけど、具の中ではだいぶ定番だし、お嬢様な九条様は興味を持ってくれるかな、と期待したが、全くその通りだった。
「……可愛い」
へへっ、そう言ってくれると、職人冥利に尽きる、ってモンですよ。
「いただきます」と俺が言うと、九条さんは慌ててタコさんウインナーを弁当箱に戻して合掌した。
「美味しい」
へへっ、そう言ってくれると、職人冥利に尽きる、ってモンですよ。
って、何回言うんだよ、俺。
「そういえば、ありがとね、九条さん」
「むふ?」
満面の表情で口を頬張らせていた九条がキョトンとする。
「ああ、すまん。食い終わってからでいいよ」
九条さんは口を空にしてから聞いた。
「急にどうしました?」
「いや、本当に俺にもメリットがあった、っぽくてさ。九条さんのお陰で少しだけポジティブになれた気がする」
「なに、私たちは運命共同体なんですから。それに貴方が自信を持ってくれるほど、偽装とは言え、彼女として嬉しいものですよ」
「そっか」
二人で弁当を食べながら、これからの事、二人の設定などについて詳しく話し合った。
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そろそろ真剣にネタが切れかけてきた……。
最近、ふと新しい話が頭に浮かんできたので、そちらを執筆中です。
フォロー数が100人になるか、PVが10000行ったら、そちらを投稿しようかな、と思います。
とりあえず、この作品も頑張らないとなぁ……。
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