26.なぜだか修羅場になっているのだが
電車に10分ほど揺られ、アナウンスが、次が最寄駅だと知らせるのを聞いた。
それじゃあ、いつでも出れるように、と荷物を準備する。
ふと、楓の方を見たら––––––
……大層気持ち良さそうに寝ていた。
なんだろう、なぜだかすごく、いやされる。
じゃなくて!
「おい、楓。次だぞ」
ほっぺをツンツンしながら言う。
「……ん? 弥代? ……まだ朝でしょ?」
寝ぼけ顔の楓。
「いや、朝って言われたら朝なんだけど……。とりあえず降りるぞ」
「あれ? ああ、もうなのね」
電車が動きを止め、扉が開く。
満員電車と言うには微妙な電車だが、俺たちは人をかき分けて、駅に出た。
……
………
…………
改札を出た俺は思わず目を疑った。
そこにいたのは、楓と同じブレザーを着た少女。
いや、俺らと同じ制服を着たヤツらがポツポツいるのはいつも通りなんだけど、その少女の正体がビックリなんだよ。
「あ、片倉さん。偶然ですね」
「うん、おはよう、九条さん」
いや、君、リムジン登校じゃないの。なんで駅にいるんだよ。
って言ってて自分の耳を疑ってしまうが、本当の事だ。
みんなこちらを驚いたように見る。九条さんはめちゃくちゃ可愛いし、普段ここにいないしで、ビックリしているんだろうね。
「「ところで、」」
九条さんと楓の声が気せずして重なる。
「「その女、誰ですか(よ)?」」
修羅場ですか。これ、ひょっとして修羅場ってヤツですか。
九条さんは演技に身が入っているみたいだが、楓はどうした。
ともかく、こういう時の対処法を俺は持ち合わせていない。まずこんな事が起こるだなんて想定してないんだもん。
という事で、どうしようか……。
「お前ら、一回会った事あるはずだけど……」
「「いつ?」」
……凄く息ぴったりだな、コイツら。
波長がシンクロしてる。
「ほら、月曜日の階段のアレ」
「ああ、あの時のあの娘ね」
楓はピンと来たようだが。
九条さんも納得してくれたかな。
「ひ、酷いですよ、片倉さん! 私という者がありながら!」
無視ですね、はい。
「落ち着け、九条さん。楓はただの幼馴染みだ。ちなみに定番イベントの『一緒にお風呂』もコイツとはない」
「……幼馴染み? ああ、
「何よ、負けヒロインって……」
確かに幼馴染みって負けヒロインの代名詞だけどさ。
なんで九条さんはここまで噛みつくんだ?
「それで、この人とはどういう……?」
楓が恐る恐ると言ったように聞く。
「え? 私と片倉さんは恋人関係ですけど?」
「弥代、マジ?」
「ま、お試しみたいな感じだけどな」
「ねえ、弥代」
「なんだ?」
「私、感動した」
「「は?」」
「まったく、彼女ができたならそう言いなさいよ。それなら、時間の調節とかしたのに。彼女さんもごめんなさいね、モヤモヤさせちゃって。コイツ、変なヤツだけど悪いヤツじゃないから、変な事があっても見放さないであげてね」
「は、はあ……」
凄い。九条さんが押されている。
「それなら彼女さんとの時間を楽しみなさい♪ 後で馴れ初めを聞かせてもらうわね」
楓はそう言い残して学校へと走っていった。
==================
いつのまにか一週間が過ぎていましたね。
長い間、更新が出来ず、待たせてしまいました。
まともに申し訳ない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます