09.部活より妹の方が大切なのだが


 6時間目の表現英語が終わり、俺は下校の用意を始める。そんな俺に突っかかってくる梶。


「おい、片倉。部活見て行こうぜ」


 ん? 部活?

 ああ、そうだった。


 ウチの高校は5月から見学や体験入部が始まる。つまり、今日からである。


 部活の種類は豊富で、運動部、文化部と合わせたら、40種類ぐらいあるんじゃないかな。数えた事はないけど。


 まあ、玲亜が不機嫌になるから、俺は入る気はないんだけどね。


 余談ではあるが、玲亜は中学で剣道部に入っている。俺が剣道部に所属していたから、ついてきたんだとか。


「生憎、どこに入る予定もなくてな」

「そう水臭い事言うなよ」

「俺の帰りが遅いと玲亜が不機嫌になるんだよ」

「最近、コイツのシスコン疑惑が浮上してきたぞ……」


 シスコン、か。説明したところで理解できないだろうし、誤解も放っておく。


「さあ、弥代! 羽球バドミントン部を観に行くわよ!」

「小十郎、剣道部を観に行くぞ」


「くそっ。イケメンはなんて得なんだよ……」

「私にも話しかける勇気があればなぁ……」


 クラスの一部から怨嗟や嫉妬、羨望の声が聞こえてきたが、知った事ではない。


 コイツら、無自覚だけど、人気あるんだよな。


「……お前ら、さっきの話、聞いてたか?」

「「聞いてなかったけど、何か?」」


 二人揃って首を横に振る。

 全然違うキャラなのに、こういう時は息ぴったりなんだよな、コイツら。


 そんな二人を見た俺は無情な笑顔を浮かべ、歯を食いしばり、静かに拳を握った。


「おい、止めろ! いくらお前でも女子殴ったらダメだって!」


 後ろから梶に抑えられながらも、拳を震わせる。

 俺は深呼吸して、その拳を開いた。


「って冗談はともかくとして。買い物もあるし、家に帰らないといけないんだよ」

「あれ? 今日の夜は私ん家じゃなかった?」


 クラスメイトが騒めく。

 頼む。誤解を招きかねないから、発言をやめてくれ。


「まあ、そうなんだけどさ。冷蔵庫の中身が切れかけてると落ち着かないんだよ」

「––––––おい、さっきの楓ちゃんの発言について詳しく聞こうじゃないか!」


 梶が凄く食いつく。

 そんな大した話じゃないと思うんだけど。


「ただ家が隣だから、チョコチョコ夜ご飯に誘われる、ってだけの話だよ」

「なんだよ、期待させやがって」


 期待? 俺が楓の家に行く事の何を期待しているんだ?


 たまにとは言え、コイツの考え方がわからなくなるんだよな、特に女子に関する事だと。


 空気を読まない事で定評な変なヒトの政宗さんが叫ぶ。


「その玲亜とやらはどうでもいいから、剣道部を観に行くぞ!」

「やめてくれ、家に入れなくなる」


 アイツがドアを弄ると、マジで鍵が刺さらなくなる。ネタ抜きで家に入らなくなるので、笑い事じゃ済まされない。


「……お前、妹を可愛がりすぎではないか?」


 ……。


 俺はじっくりと考えて、


「否定はしない」


 溜息を吐きながら答えた。よくよく考えれば、確かに今まで甘やかしすぎたかな……。




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 寝坊したので、投稿が遅れました。

 申し訳ない。



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