08.みんな幻を見ているようなのだが
「俺はそんな事よりも片倉がマスクを外すと実は美形だった、ってところにショックを受けているんだが」
梶の爆弾発言に俺はさっき食べたモノを吹き出しかけたが、どうにかこらえる。
さすがにマスクをしたまま食事をできるスキルは持っていないから、当然、昼食時はマスクを外す。
しかし、俺が美形だと?
「幻でも見ているんじゃねぇの?」
思わず口に出た。
「……自虐って悲しくない?」
政宗さんは俺に優しく聞く。
止めろよ。そういうのがさらに悲しくするんだよ。
「だって、私も弥代は美形だと思うんだもの。顔のパーツも整っていると思うし、それに肌白くて
顔のパーツに関しての評価は人それぞれだから、ふーん、としか言えない。だけど、俺の外見を褒めるヤツなんて玲亜ぐらいしかいないぞ。
肌が白い、ってのは否定できないな。日焼けし辛い体質だし、学校と買い物と週一のランニングと時たま楓に誘われるバドミントンぐらいしか外に出ないからさ。
だけどさ、滑らか、ってなんだよ。俺、お前と接触した記憶なんて全くないぞ、政宗さんよ。
「そういえば、コイツ、女装がめちゃくちゃ似合うのよね」
「うるせぇ」
思い出したくないよ、あんな記憶……。
「女装? そんな趣味があったの……?」
ねぇよ。ドン引きすんな。
「罰ゲームでやらされただけだ。気にしないでくれ」
「うん、問題なのはお前がイケメンだという事だしな」
いや、イケメンというよりかは美少年と言った方がいいか、と梶は続けた。
「ごめん、何言ってるかわからないや」
と言いながら俺は(できる限り)爽やかに笑ってみた。
その瞬間、クラス中が凍りついた。
いや、さっきからチラチラ見てきて何なんだよ、って思っていたんだけどさ。
そうか。そこまで致命的にザンネンな笑顔だったんだね、と俺は自嘲気味に笑った。
俺のスマホにメールが来た。
クラス全員が所属しているグループから個人を繋げたのだろうか、『春香』って人からである。
え? どなた?
って思ってしまったのは内緒の話。
喋る機会があるわけでもないし、女子は名前を覚えきれてないんだよなぁ。
春香:さっきの笑顔に惚れました! 付き合ってください!
んん? どういう事かな?
とは思いながらも、指は冷静に動いた。
やしろ:ごめんね。俺、好きな人がいるんだ
外見こそ、こう平常的だが、内心はパニック状態である。告白された事なんて今までに1回しかなかったんだもん。こんな唐突に来たのはハジメテだし……。
クラスをこっそり見回すと、気落ちしたような少女がいたから、おそらくは彼女なんだろうな。
「……お前、十大聖人、行けるんじゃね?」
「行きたかねぇよ」
さっきだって何かのバグで告白されたのに、ソウイウ系統で有名になるとかマジで面倒だ。
俺を見てくれるのは、彼女一人だけでいい。
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