07.昼食の時間なのだが


 ようやく、4時間目が終わった。


 さあ、昼食の時間だ。


 昼食は原則校内のどこでも食べてもいいが、俺は基本的に楓、梶、政宗さんと4人で教室内で食べる。できるなら一人でこそこそ食べたいんだけどな。


「––––––毎日のように思うんだけど、小十郎の弁当って誰が作っているのかしら? 美味しそうね」


 政宗さんがふと思い出したように聞く。


「ん? 自分で作ってるけど?」


 今日の弁当は昨日の夜に作った唐揚げの残りをベースにした。気付いたら、コンビニの唐揚げ弁当のような構成になったんだよな。


 当然ながら、玲亜の弁当も全く同じ構成だ。


「コイツ、家事に関しては全国でもトップクラスなのよね」


 楓が箸を動かしながら言う。


「いや、このぐらいなら誰でもできるだろ」


 楓は「は? 何言ってんのよ、コイツ」とでも言いたげな顔をするが、俺には心当たりが一切ない。


「私のお母さんに料理で負けを認めさせた男が何を言ってるのよ」


 ……マジですか?


「マジかよ!」

「……俺も初めて聞いたぞ」

「あ! 本人には絶対に言うな、って言われてた!」


 楓が叫んだ。


 一瞬、クラス中の目線がこちらを向いたが、すぐに興味を無くしたかのように自分の事に戻る。


 はぁ、と俺は溜息を吐いてから言った。


「わかった。聞かなかった事にしよう」

「うん、ありがとう」


「羨ましいな、家事ができる男子ってモテるだろ?」


 梶が心底羨ましそうに言う。


「家事なんてできて当然だろ。なんで男子も家庭科受けてるんだって話」


 あと、別にモテねーぞ。告白なんて小学校の頃に一回しか受けてないんだから。


「専業主婦に負けを認めさせられる実力を持つ高校生がそう何人もいると思うかよ?」


 俺は少し言葉を考える。


「それを言ったら俺だって主夫だしな」

「どういう事?」


 政宗さんが首を傾げた。

 まあ、そういう反応が普通だろうな。


「……そうだな、引っ越しでいいか。俺、一回引っ越した事があるんだけど。引っ越す前のお姉ちゃんが凄まじくてな。あの人は本当にスーパーマン、いや、スーパーウーマンって言うのか、だったからさ。家事だの武術だの色々と叩き込まれたんだよ。けれど、そういえば、引っ越してからはお姉ちゃんと会ってないし、今何しているんだろうな」


 ウチのグループ内に変な空気が流れる。


「……ごめん。辛かったよね、小十郎」


 何やら感性にハマったようで政宗さんが静かにハンカチで目元を払った。

 そこまで辛かった、ってわけでもないんだが……。


「お、おう?」


 ……そんな重い話なのか? 自称戦国大名の価値観は俺にはよくわからん。

 ただ、ご飯の時間にそんな表情かおされると、食い辛いのだが……。

 見ると、やっぱりみんなも箸が止まっていた。



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