第7話信じきることができない
貴方との約束を破ったことはなかった
貴方とこのまま一緒に過ごしていくんだと心に決めていた
貴方の事を信じていた
だって貴方は嘘が下手でサプライズすらできないんだもん
そんな貴方だから私は信じてきた
思いもしない形で日常は壊れる
実家の稼業がうまくいっていないとは親から聞いてはいた
それがどうだ
「最近うまくいっていない」
からいきなりの急降下
「会社畳むことにしたが借金がかなり残る」
なんでそんなになるまで借金を繰り返したのか
いまどき銀行がそんな無茶な貸付するわけがないだろう
色々と確認しても実家は差し押さえられたって二束三文で売り叩かれ今後親の年金だけで返済できるはずはない額で…
「生命保険…」
最終手段のように確認しても金銭的に苦しくほとんど解約してしまっていて…それでも借金総額の半分にもならない保険金しか残っていない
親の借金だから知らないと言えるほど薄情でもないが一緒に背負ってくれとなんて誰にも言えない…
結婚する前で良かった…
貴方に知られたら地獄しか待っていないのに貴方はきっと一緒に地獄に付き合ってくれるのだろう
そんな貴方だから私は好きになったんだもの
そんな貴方だから付き合わせられない…
どうにかして別れないと…
実家の事に気づかれないよう会う時間を減らし
久しぶりに会ってもわざとそっけない態度を繰り返す
貴方は「どうした?」って心配してくれる
それでも別に、と冷たく突き放す
私の事を心配してくれているんだろう
「俺の事信用できない?ちゃんと話して!」
真面目な顔で珍しく声を荒げてくる
いっそ滑稽なほどに明るく最後の嘘を放つ。
それは本音とは真逆の嘘…
「だって…貴方の事、信じきることができないんだもん、ごめんね」
怒っていることが分る、顔が赤くなり握りしめた拳が震えている
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
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