第5話お前の全部を忘れたいんだ

狡猾な奴だと思っている


女から嫁に、そして母になって家族としか見ていない


愛情がなくなったわけではない

愛情の形が変わっただけで・・・


どんな理不尽な仕事を押し付けられ外で大量のストレスを抱え帰ってきても

家に帰っても子供の付き合いによる、いわゆるママ友との生産性のない愚痴に付き合い

自分のストレスを発散させる場所なんてこの世には存在しないのだろうと諦めていた


そんな時ふとした一言から話を聞いてくれる人が現れた

ちゃんと既婚者であることを最初に伝えてある

そんな俺のしょうもない話を聞いてくれる


最初はそんなつもりなんかなかった

ただ相槌をうって俺の話に耳を傾け俺の話に合わせて表情を変えてくれる

お前が男だったらいい友達になれたのにな

これが異性だったから…心が揺れ動くのは仕方ないだろ


狡いこと言ってるのは分ってる

「ごめんなぁ…好きだわ」

家庭を壊す予定はない、それはお前も承知しているんだろう、だからお前は俺の告白に対して答えないんだろう?


忙しいのか…前までなら即レスだった連絡は減り、不在着信で声も聞けなくなった

一度ストレスの捌け口を見つけ、ストレス発散法を見出してしまったのに…

あの一言から避けられていると気付いてしまった


そっか…ずるいよな…


最後にしたいとメッセージしてからの電話には出た。

いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。

それは自分が傷つくだけの嘘だと分っていた。

「お前の全部を忘れたいんだ」

と・・・胸の痛みは消えやしないな。

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