第3話世界で一番、大っ嫌い

付き合って6年

同棲して4年

今年でもう33歳

周りから「結婚はまだ?」なんて言われる年頃


お互い空気のような存在で「恋愛」と言う感じではすでになく「家族」という感じの方が大きい

いまさら紙切れ1枚提出するかしないかに大差なんて感じずなし崩しの関係が続いている

それでもこの日本と言う国はその紙切れを提出するかによって差が生まれる

うちの会社でも既婚者には「家族手当」が出る

子供ができれば籍入れればいいんじゃない?

そんな気楽に考えていた


今の生活に不満もないし

結婚の「け」の字も発しない彼も同じ考えだと思っていた

私の考えを尊重してくれているんだと思っていた


そんな思い込みが間違いだったのだ

所詮他人

聞かなきゃ…話さなきゃ解決しないのに


気付いた時にはもう後戻りなんてできないのに


彼の携帯がやたらと通知音を鳴らしているのは気づいていた

繁忙期に入ったのかな?

夕飯を共にする回数も減ったし

「大変だね」なんて他人事のような労いの言葉をかけていた


馬鹿な女


彼が子供好きなのは知っていた


なのに…「授かったら」なんて呑気なこと言って


33歳で初産なんて高齢出産扱いだなんて調べて初めて知った

考えればわかるはずなのに

4年も自然に過ごしていて「授からない」と言う事はもしかしたらどちらかに原因があるのかもしれない


彼の携帯の通知音も聞かないくらい一緒に居る時間が減ってきたとき

別れを切り出された


「ほかに好きな人できた」

なんて言葉ではなく


「子供ができた」


ああ…そうか…何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつく。

それは自分を守るための嘘

「浮気するような男…世界で一番、大っ嫌い」


・・・泣いたりしないよ。

・・・だから幸せにならないと許さないから・・・

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