第10話 再戦だぁ!!
なになに?この作品は、異世界物と見せかけたコメディ作品です。主人公の和登が活躍する痛快ストーリーではございませんので、ご了承ください?ちょっと待ったぁ!!活躍しないって何だよ!?俺、めっちゃ魔物倒すよ!?痛快活劇だよ!?見届けて下さい!俺の活躍を!!
※いつも通り和登の個人的妄想が含まれておりますので、ご了承ください。
俺は今、再び戦場へと戻って来た!そう、あの忌まわしき草原へと!!ヒュオーっと音を立てるほどの風…は吹いていないが、俺の中では突風のごとき風が吹いている!!
そう、ついに俺にとってのリベンジマッチが始まろうとしているのだ!!一週間…長いようで短かった!そう!俺は特訓の果てに力を付けたのだ!・・・つけたはずだ!!やってやるぜ!!!
「何か、和登が凄くやる気だね?僕たちの力も試すって事を分かっているのかな?」
「そんな事を言わないで上げてよ!和登っては、魔物との再戦のために一週間間違いなく一番頑張っていたんだから!!」
「そうよ、私も後半はずっと見ていたけれど、あれだけ頑張れるのは和登だからだと思うわ。最初は、彼に任せてあげましょう?」
「やれやれ、いつの間にか僕たちが少数派になってしまったね、彩夢」
「あはは。まあ、和登君が頑張っていたのは事実みたいだし、やらせてあげても良いんじゃないかな?」
「反対は僕だけって事かな?分かった、まあ見守って見ようか。彼なら怪我もないだろうからね」
む?何やら俺が一人で盛り上がってるうちに、俺に任せてくれる事になったみたいだな?よし!全部俺が倒してやるぜ!!返り討ちに合うなよ?もちろんだ!見てな!生まれ変わった俺の姿を!!
俺の闘志に引かれたのか分からないが、一匹の魔物が姿を現した!一匹!まさにおあつらえ向き!!
姿を現した魔物は、青いおっさんだった。あ、前の緑のと同じ種族?の魔物らしいよ。何でも、この気持ち悪い色のおっさんは、青・緑・黄・赤・黒・白と多彩な色の奴がいて、それぞれ強さが違うけみたいだけど、魔物と言う言葉で思い浮かぶ代名詞になっている魔物らしい。
因みに、この青いのが一番格下らしく、名前はそのまま
「みんな!あいつは俺に任せてくれ!!おおおおお!!!」
俺は、叫び声と共に魔物に突撃する!やはり、全力で走っても何処か余裕がある。俺は、疲れも怪我もない無敵超人!!と、うぬぼれるとまた失敗するのはさすがに学んだ俺だ。
走り近付きながら、魔物をよく観察する。下級で初級者の獲物である魔物とは言え、先日全ての攻撃をかわされたのも事実。観察しながら近づくと、魔物も俺を観察するように見ている。
前回の俺は、力任せに剣を振り上げて振り下ろすと言う、単純かつ読みやすい攻撃をしてしまった。しかし、俺は特訓の成果?で予備動作を減らし、かわし辛い攻撃をすることが出来るようになった!つもりだ!!
「はぁ!!」
俺は、気合を込めるも、練習の事を忘れずになるべく小さく動き、最小限で剣で相手をなぐように片手で横に振る。
すると、魔物はそれをかわすために少し後退した。俺は、その隙を逃さない様に、もう片方の手で受け止めるように止め、そのまま袈裟斬りを狙い剣を振るった!!
すると、驚くことに確かな手ごたえと共に魔物を切り裂くことが出来た。俺は、自分の目を疑い、少しの間い熟考してしまうも、倒れた魔物が消えて
え?魔源石って何だって?聞いたところによると、魔物は倒すと魔源石って言う生活に欠かせなくなっている石になるんだってさ!初めて見たけどな!多分、これが魔源石だ!!まあ、そんな事よりも!!
「うおお!見たか!?これが勇者の力だぁ!!」
見たか?見ましたか!?今の格好良くなかったか!?一撃で魔物を倒しましたよ!!え?二回剣を振るっただろ?一回目はフェイントだっての!!それよりも、当たった一撃で魔物を倒した俺を褒めろよ!凄かっただろ!?弱い魔物なんだろって?そうだったとしても!大きな一歩だろうが!!褒めて下さいよ!?
俺は、みんなに褒めてもらいたくなって振り向いて、もう一度叫んだ。
「今の結構良かっただろ!見たか!俺だってやれば出来るんだ!!」
剣を高く掲げて叫ぶ俺。え?鬱陶しい?良いじゃん!!初めて魔物を倒したんだし!少しくらいテンション上がるってもんだろ!?え?少しどころじゃなく鬱陶しい?君らは、俺を落とすことしか出来ないのですか!?
「和登!?」
「ふっ、どうしたんだい、風香?俺の格好良い雄姿を見て惚れてしまったのかい?」
「後ろ!後ろ!!」
「ん?後ろ?」
俺が風香に指摘されて後ろを振り向くと…木の棒を振り下ろそうと…いや、すでに振り下ろされている棍棒が目に…
「いったぁぁああい!!?」
青人に不意打ちされた!?卑怯な!?え?魔物がいるところで叫んで後ろ向いている馬鹿が悪い?誰だそれ!?俺ですね!!?
「くそがぁ!!俺の実力を見せて…いってぇ!?」
何と!?よく見れば、俺の周りに青人が5人もいるではないか!?いつの間に!?お前が騒いでたから?その通りですね!?くそぅ!やってやらぁ!!
「てめぇら!!俺の華麗な剣舞の餌食にしてやるぜ!!!」
「ちゃんと反省しているの?」
「はい…調子に乗り過ぎました」
俺は今、反省させられている。格好良い俺の雄姿を見て惚れ直してくれた?はずの風香に。何故か?それは、さっきの魔物との戦いのせいです!!
あの後、俺は痛みと羞恥心のせいで我を失い、剣を振り回すだけの阿呆に成り下がってしまった。そして、我に返る前に攻撃を更に貰い、余計に怒り狂って剣を振り回すだけと言う、度し難い大馬鹿者に進化。
それを見兼ねた風香が、たったの5本の矢で敵を封殺した。全部脳天に一撃でした。何かもうね、一気に冷めました…すっごく調子に乗ってました!!ごめんなさい!!!
「分かってるの?和登?この間、あんな風に剣を振り回してすっごく危険な目にあったんだよ?反省しているの?」
「はい、その通りでございます。申し開きもございません」
さらに小さくなる俺。前回、俺が無茶したせいで風香を泣かせてしまったのは記憶に新しい。しかも、もう無茶しないでね?と言われたのだ。仲間を守るためならするかもしれないと言ったら仕方なく許してくれたが、今回の暴走は流石にまず過ぎた。
「あのね、和登?私は、別に和登を責めたいわけじゃないんだよ?和登が余りにも自分を」
「和登様!凄く格好良かったです!!」
「うわっぷ!?何だなんだ!?」
見ると目の前にステーシィの顔があった。どうやら、正座していた俺はステーシィに飛びかかられ、地面に押し倒されたようだ!幸せ!じゃない!一体どういう状況なんだ!?
「最初の一体を見事に斬り伏せた後も、不意打ちから始まった攻撃を全てかわされるなんて凄いです!流石、私の勇者様です!!」
「へ?全てかわした??」
「だって、和登様は無傷じゃないですか!」
俺は、なるほどそう見えたのかと思いつつ、いってぇ!!と叫んでいた俺の声は聞こえなかったのかな?とか色々な事を思いつつも、他のメンバーを見回してみた。
風香は、珍しく唖然としていた。珍しい顔を見れてラッキー♪とか思うが、まあその反応が当たり前だよな。
続いて、古都。こちらも呆然としている。さっきまでは、俺に説教をする風香を我が意を得たりと言う風に頷いて見ていたが、今はもう何言ってるのこの娘?と言う風に固まっている。
月姫は、何といつものやれやれだった。何なのこの娘?と俺は月姫に向けて言いたい気分だ。
そして、最後に彩夢。彼女は…こちらを見てもいなかった!?いつも通り何処かを見てました!!ちょっとは俺に興味を持って下さいよ!?
結論!俺がステーシィに現状を聞かないといけないみたいだ!!すぐにそうしろ?確認って大事なんだよ?え?抱き着かれている状態を維持したかっただけだろって?正解です!ごめんなさい!!
「ステーシィ…勿体ないけど、落ち着いてくれ。勿体ないけど…」
「あ!すみません、和登様!?私ったらはしたない…」
そう言って、慌てて離れるステーシィ。勿体ないけど仕方ない。え?心の声が漏れていた?馬鹿な!?そんなはずは!?
「和登…ステーシィが離れちゃって残念だね?」
「そうね、ステーシィにデレデレな勇者様?凄く残念そうよね?」
「い、いえ…自分はそんな事を思っては…」
やばい!?風香と古都の視線がすっごく怖い気がする!?俺って、そんなにスケベな顔をしていたのだろうか!?同じ女として許せないくらいに!?き、気を付けねば…え?気を付けるところが違う?何の事だ??
「ステーシィ?今回、国からの見届け役として同行したんだよね?そんな、和登びいきじゃちゃんとした報告出来ないんじゃないの?」
「風香の言う通りじゃないかしら?ステーシィ、きちんと事実を報告しないと、今後に支障が出るかもしれないわよ?」
「はい!もちろんです!!その、先ほどは和登様が余りにも格好良すぎて我を忘れてしまいました。申し訳ございません…」
謝っているステーシィだが、先ほどの事を思い出しているのか、頬を抑えて恥ずかしそうにその身を揺らしている。大きな胸がたゆんたゆんと揺れて俺の視線を釘付けにしやがる!!ひっ!?二人に何か睨まれた!?また凄くスケベな顔をしてしまってましたか!?
「和登も大変だね」
「え?何がだ?」
何やらニヤニヤして俺に話し掛けて来た月姫。何だ?何が大変なんだ?まあ、ステーシィの胸は大変素晴らしいけどな!!いたっ!?今度は君らか!?俺の芸術鑑賞を邪魔しないでくださいったぁ!?
「そろそろ落ち着きなよ、ステーシィ?」
「はっ!?私としたことが、申し訳ございません」
そう言って、頭を下げるステーシィ。ボーナスタイムは終了って事か…変態ドスケベ?し、仕方ないだろ!?あれは良いものだ!!いっったぁ!?全力投球は止めて下さいよ!?
「まあ、和登については補正するなって方が無理だろうから、次は僕らが魔物を倒さないとね?風香は、一応は倒して見せたし、次は僕が良いかな?」
その月姫の意見に、みんな同意してみせた。まあ、月姫は謎の安心感あるから大事だろう。王子様効果?俺がそれ欲しいっす!!無理だとぅ!?
「は、はい。次は、冷静に見届けさせて頂きますので…」
あ、ちなみにステーシィの事を今更だけど説明しよう。実は、今回のこの草原リベンジ?だが、王がまたハンターを同行させようとしたんだが
「あんな最低な男を同行させられたら迷惑だ」
と言う、月姫の一閃を受け、今回は同行させない事になった。まあ、前回は主に月姫が被害者だったから何も言えんわな。そして、代わりに見届け人としてステーシィが付いてくることになった。
お察しだろうけど、ステーシィが王様を説得していた。いや、脅迫?まあ、すっごい剣幕で最後にはお約束の、どうしてもだめと言うなら親子の縁を切ります!と言うのが止めになったようだったな。父親は娘には勝てない悲しい現実を目の当たりにしてしまったよ…
そんな経緯でついた来たためか、最初は真面目そうに後ろをついて来ているだけだったのだが、さっきは何故か俺にタックルをかますと言う嬉しい…もとい、可笑しなトラブルを自分で引き起こしてしまったので反省したようだ。
「ステーシィ、魔物が怒り狂って突撃してくるかもしれないから、俺から離れるなよ?」
「はい!一生離れません!!」
「あ、ああ…それくらいの気構えの方が守りやすいのか…?」
たまに可笑しなことをステーシィは言うんだよな。フィーナ曰く、お姫様のステーシィは、勇者と言うフィルターを通してみているから俺が特別に見えるんだとさ。特別って何だろうか?馬鹿には見えない物?失敬な!?俺はバカじゃないっての!!多分な…
「おあつらえ向きに、5匹の青人が来たね」
ふむ、確かに遠くから走って来る青人が見える。ふむ…しかし、砲術士の能力について俺って何も知らないんですが?
「月姫…大丈夫なのか?」
「仕方ない、心配性な和登のために少し説明しよう」
「お願いします!!」
「・・・何でそんなに素直なんだろうね、君は?」
「何でと申しましても?」
「まあ、良いよ。とりあえず、砲術士がどんな職業かすら分かってないって事で良いよね?」
「もちろんです!!」
俺は、元気よく返事する。え?そこに元気を込めるのは可笑しい?そうかね?
「・・・この世界での砲術士は、弾となる物を何でも大砲の砲撃の様に放つことが出来る職業なんだよ」
「え!?つまり、手ですっごい勢いで大砲の弾を放つことが出来るのか!?」
「理屈ではそうなんだけど、魔術と同じでイメージが無いとしっかりとした威力を出せないようなんだ」
「ええと、つまり…?」
「つまり、結局は実際にある砲台…大砲を使って威力の高い砲撃を行うのが限界と言うのが砲術士と言う職業らしいね」
「えっ!?ここに大砲何てないじゃん!?どうすんの!?」
「いや、余りにも想像通りの言動をするよね、和登は」
「そうですか?そんなに褒められると照れますな!」
「褒めてはいないけどね…」
「そうだよ!それどころじゃないだろ!?どうすんっいて!?な、なんだ!?」
「今、空気を放ってみたんだけど、少しは痛かったようだね?」
「空気を!?はっ!?それで、魔物を倒すのか!?」
「本当に想像通りの反応しかしないね、君は。さすがに、僕の想像力じゃ、空気の弾で魔物を殲滅するような威力は出せないと思う、精々牽制かな?まあ、勢いを止めるくらいは出来ると思うよ」
「じゃあ、どうするんだ!?結構近付いてきているぞ!?」
見れば、今度は完全に肉眼で青人の姿が捕らえられるくらいに迫っていた。と言っても、まだそれなりに距離はあるから砲撃は出来るんだろうが…
「百聞は一見に如かずだね。こうするんだよ!・・・てぇ!!!」
月姫は、何やら袋から小さな黒くて丸い玉を出したと思ったらおもむろに上に投げた。そして、すぐにその小さな玉はすぐに大きな砲弾になった!?そして、それに驚く暇もなく、月姫の声とともに凄い勢いで青人に向かって飛んで行ったのだ!!
「うおぉぉお!?すげえ爆発だな!?」
「本当に、凄まじいです。流石は、勇者様のお仲間です!!」
月姫の放った砲弾は、実は5弾だったわけだが、それにしても威力が凄すぎる!!普通に大砲ではなったとしたらこうはならないだろう…で、どういうことなの?
「僕のイメージでは、やはり砲台はともかく、砲弾は必要だったんだ。だから、古都に相談したところ」
「ええ、私の魔術でカバー出来ることが分かったの」
「古都の魔術?」
「私は、和登のイメージとは違うと思うけれど、異世界の冒険もののライトノベルと呼ばれるものくらいは読んだりしていたのよ」
「マジっすか!?」
それなら、色々話し出来るじゃん!って、今はそれどこじゃないですよね…
「それで、この世界では物などの運搬とかどうしているのか気になったのよ。所謂、アイテムボックスとかないのかしら?とね」
「まさか、あったんですか!?」
「あったわ。無限とはいかないけど、質量を無視した袋とかね」
「マジか!?それがさっきの!?」
「落ち着きなさい、そんなものが簡単に手に入ると思うのは早計よ、和登。この国の財力ではどうにもならないくらい高価なものらしくて、流石に得ることは出来なかったわ」
「なるほど、そう言う所もテンプレっぽいな!むしろ、これから頑張れば手に入るかもと更にたかまるな!!」
「そ、それは良かったわね」
「ん?しかし、そうなるとさっきのは一体?」
「それを説明しようと思っていたのだけど、聞いてくれるのかしら?」
「あ、すまない!飛んでも情報にトキメキが止まらなかった!で、一体どういう事なんだ?」
「では、改めまして。実は、その過程の情報で分かったのだけれど、質量を凝縮する魔術があると分かったの」
「質量を凝縮?」
「…簡単に言うと、まあ、物を小さく軽くすることが出来る魔術と言えば良いのかしらね?」
「そんな便利な魔術が!?」
「ああ、古都、続きは僕がするよ。君のように、和登の驚きを挟んでいると話が先に進まないからね」
「異議あり!相手に反応があった方が語り手が乗りやすいと思います!!」
「それも時と程度にもよると思うよ?和登のように、全てに反応されてしまうと逆に放し辛くなるよ」
「何と!?古都、マジなのか!?」
「そ、そんなことないわよ?全部に反応してくれているから、しっかり聞いてくれていると判断しやすいし。話しやすいかはともかくとして、ちゃんと理解するまで話してあげようと思うから良いんじゃないかしら?」
「う~む?」
「つまり、おバカで愚直な和登にも懇切丁寧に話してあげる古都は、とても優しいって事だね」
「なるほど!ありがとう、古都!!」
「え、ええ。何故か思いっきり主旨がずれた気がするのだけれど…」
「さて、そんなわけでこうやって砲弾を小さくしたものをたくさん持ち運べるわけさ」
「おお!なるほど!!」
「それでも、それなりに面倒な魔術らしくてね。古都のカバーがあるにしろ、全てのものにかけるなどの事は出来ないし、今回のこの戦闘に置いて役に立たないと判断されれば砲弾の圧縮化は今後してくれないと言う話だったんだけど、どう思うかな?」
そう言って、ステーシィの方を見て問いかける月姫。なるほど、そんな試験的要素もあったわけだ。
「正直、素晴らしいとしか言えませんね。砲術士は、エルドマにも何人かおりますが、全て防衛のための戦力として考えられております。月姫様のように、砲台などなく砲弾だけを撃ち出すなどと言うことが、出来ると言う話すらも聞いたことがございません」
「ええと、つまり?」
「はい、和登様。今後、砲弾圧縮については国で出来るだけサポート致しますので、必要になったらいつでも言って下さいね」
「必要なのは僕なんだけど、和登を通さないとダメなのかな?」
「も、申し訳ございません!もちろん、月姫様から直接言って頂ければ!」
「ちょっとからかっただけだよ、そんなに焦らなくても良いよ」
そう言って笑う月姫。どういうことだかよく分からんが、姫様であるステーシィをからかうのは良くないと思います!!
「さて、それじゃあ後は彩夢だけだね。いや、古都も一応確認して貰わないとかな?どちらが先にやるかな?」
「わ、私は前回のあれがあるから、彩夢から先にやって欲しいのだけれど?」
「そうだね、また一帯を焦土にされたら続けられなくなるからね」
そう言って、前回古都が焼き払った場所に目をやる。未だにそこはマックなクレーターが出来上がっていた。いや、黒いだけじゃなく色々なものが混ざったような何かが転がっていたりするんだけども…まあ、深く考えたら負けだろう。
「そう言う事よ!彩夢、いけるかしら?」
「えっと、私のも結構派手だけど大丈夫?」
「・・・軽いので良いじゃないかな?相手は、下級の魔物らしいからね」
「は~い!分かりました!!」
そう言って、元気良く手を上げて前に出て行く彩夢。軽いの?つまり、結構火力あるのか?と言うか、器術士なんだろうな?深く考えなかったが?
「なあ、ステーシィ?器術士って強いの?」
「あの、和登様のお仲間である彩夢様には申し訳ないのですが…私が知っている戦闘職の中では最底辺となっております…」
「なんと!?」
「も、もちろん!それなりに戦える者もおりますが!その…本職には劣ると申しますか…」
「どういう事だ?」
「つまり、器術士と言うのは、武器を創造して戦う職業で、自分の作った武器は自分でしか扱えないのです」
「何と…強そうじゃないか!?」
「確かに、切れ味の良い剣などを作り出せる者はそれなりにいますが、やはり、剣を扱う専門家の剣術士と比べると扱いがどうしても…」
「一流の武器も使い手次第って事か…」
「その通りです」
「二人とも甘いね。まあ、こちらに被害が出ないかだけが心配だけど…大丈夫って事にしておこうか」
「なんだそれ!?余計に心配になったんだが!?」
しかし、彩夢にしては珍しくすでにやる気モードへと移行しているようだ。はっ!?まさか!?剣とかもつと性格変わっちゃう娘なのか!?今宵の斬○剣は血に飢えちゃうあれなのか!?俺たちも危険になっちゃうんじゃないのか!?
俺は、内心戦々恐々としているが、当たり前のように現実は違った。まあ、少しだけ当たったような感じではあったが。
タイミングが良いのか悪いのか、魔物がたくさんやって来た。全部で…20はいるんですけど!?青人ばっかりだけど不味くないか!?
「あの数はやばいだろ!?俺が前に行って足止めした方が良くないか!?」
「え~?大丈夫だよ?私に任せて♪」
何かご機嫌だな、彩夢は。って、本当に大丈夫なんだろうな?
「クリエイトぉ♪」
「はぁ!?」
思わず大声を出して驚いてしまったのは仕方ないと思う。だって、彩夢がクリエイトとか言ったら、両手に銃が握られていたんだぜ!?銃ですよ、銃!?
「ふぁいや~♪」
やる気のない掛け声と共に、彩夢は銃弾を放った!いや、凄い速さで二丁拳銃を乱射していた。轟音が響き渡る中、俺はそれよりも驚愕する事実を目の当たりにした!?
「全部当たってませんか!?」
そう、遠くの魔物を観察するに、次々と魔物が倒れて行くのが見て取れた。つまり、ほとんどが命中しているのだ!ここからだと、やっと見える距離の魔物なのにだぞ!?もはや、神の領域だろ!?
リボルバー式の銃なので、弾とか無限なのか?と思ったが、どうやら次々と銃を新しく出して交換しているようなんだが…速度が可笑しい!?残りの弾数が分かっているようで、撃ち切ったらポイッ!で、次を召喚しているようだ。これ…格好良すぎ!!俺、こっちの能力の方が良かったです!神様!!
「掃討完了~かな?」
かな?で首を傾げるのは可愛らしいけど、戦闘終了の掛け声としてはどうだろうね?しかし、性格は変わったように見えなかったが、銃を撃っている間はどこか好戦的な表情をしていたな…彩夢も怒らせない方が良い娘なのかもしれない…
「圧倒的じゃないか、我が軍は!!」
「君の火力が底辺って事になるけどね?」
「か、火力だけが活躍の場じゃ無いやい!俺の防御力は最強なんです!守る力、最高なんです!!」
強がりじゃないぞ!?ほら、不意打ち受けても俺平気!きっと強いよ!?え?その前にネタに気がついても貰えなかった事は良いのかって?だ、黙ってれば傷は少ないので触れないで下さい!?
「あ、まだいたみたい」
「何だって!?」
驚いて、彩夢が見ている方を確認すると、遠くに大きな影が…あれって!?
「ニーガじゃん!?宿敵ニーガ!?しょっちゅう来るもんなの!?」
「え!?ほ、本当ですね!?この平原にそんなに現れると聞いたことはないのですが…」
俺の声に、余りの火力に?呆然としていたステーシィが答えた。という事は、イレギュラー多発って事か。匂うな!?火薬臭い!!え?違うだろ?デスヨネー?
「あいつは危険だ!俺がやっぱり囮に…」
「これで良いかな?ふぁいや~♪」
「へ?うっは~い!!?」
俺が間抜けな声を上げたのには訳がある!その訳とは、ニーガが吹き飛んだんです!!文字通り、近代兵器に吹き飛ばされました!!いや、何かが射出される音がしなんだよ?で、見たら彩夢さんが…ロケットランチャーぽい何かを構えてらしてね?
で、そこから射出されたであろう何かが、ニーガにあたったんですよ?すると、ドカーン!!と大爆発!!先ほどの奇声が出てしまったわけですね、うん。俺は悪くないと思う!!
「あの、月姫さん?ニーガが木っ端微塵なんですけど?」
「ああ、そうなったみたいだね…」
「もしかして、彩夢さんはもっと危ない兵器とか出せたりは…?」
「・・・彼女、実は兵器マニアらしくてね?向こうでは、細かく調べるくらいの可愛い物だったみたいだけど、こっちで生かせて良かったじゃないか?」
「良くないと思います!怖くてもっと凄いの出せないか?って聞けないレベルですよ!?」
彩夢の性格からして、核弾頭とか出せない?とか聞いたら、出せるよ?はい♪って感じで渡して来そうだもん!そしたら俺、一時間くらいフリーズする自信あるよ!!
「ははは…彩夢一人で魔物殲滅出来るんじゃないか?どう思う?ステーシィ?…ステーシィさん!?」
ステーシィが驚きの余り完全に固まってしまっていた!?俺は、慌てて彼女をゆすったりなどして正気を取り戻したが、しばらく先ほどの事を忘れているほどの衝撃を受けたらしい。
俺たちは、彼女の精神的安全を考慮して一度帰還する事になった。ここで続けて古都の魔術なんて見たら卒倒して記憶を飛ばしちゃいそうだもんな…大惨事の予感しかしない!!
古都には、安全に弱めの魔術を使ってもらうようにしよう、うん。しかし、俺の活躍って完全に何処かに吹き飛ばされたな…俺の、初めての魔物討伐記録が…とほほってやつだよ、本当に!
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