第9話 魔法習得?だぁ!!
今、俺は魔術を覚えるために、古都と一緒に魔術書なるものを見に保管場所の金庫室へと向かっている。何故こうなったのか?もちろん、先日の夜に行われた報告会の事がきっかけだ。では、昨日の夜の出来事を回想しよう!!では、どうぞ!!え?いつもながら軽い?今更だろ?
目覚めると美少女が!?まさか、一日に二度同じ体験をするとは思わなかったぞ!?しかも、次は別人…モテ期だな!!え?誰がいるのかって?言わせるなよ!?俺、今心臓バックバクなんだからな!?
「う…ん…?」
俺の心臓が落ち着く前に、目の前の美少女が起きてしまった!?その人物は、何を隠そう…
「あれ?和登…?」
「あ、ああ…おはよう、風香」
「おはよう♪」
うん、寝起きも可愛いな♪って、違う!そうなんだよ!件の人物は何と、マイエンジェル風香だったんだよ!!びっくりだろ!?今も、同じベッドに寝ていると言う事実で心臓の鼓動が凄い事になっております!しかし、事情を聴かねば…
「あのさ、風香?何で、俺のベッドで一緒に寝てるんだ?」
「ん?ああ!そうだった!えっとね、そろそろ和登が戻ってないかな?と思って、部屋の様子を見に来たんだけど、呼んでも返事ないからいないのかな?と思って開けたら和登が寝てたの!だから、起こそうかな?と思ったんだけど、すっごく気持ちよさそうに寝てたから、私も何だか眠くなって来ちゃって…一緒に眠らせて貰ったの!和登って温かいよね♪」
そう言って、嬉しそうに俺に抱き着く風香。何だこれは…俺はまだ夢でも見ているのか!?そう思っているのに、身体は反射的に風香を抱き締めていた!そして、自然と頭を撫でている…ミステリーだ!?
「えへへ、和登に頭を撫でられるの好きかも♪」
「俺も、風香の頭を撫でるの好きかも♪」
何と言うwin winな関係!!これは、しばらく続けても良いって事だよな?そうですよね!?
俺は、誰に言うともなく心の中で言い訳をしながら風香を撫で続けた。まさに、人生においての至福の時間と言っても過言ではないだろう。何時までもこの時間が続けば良いのに!とか思うと、邪魔が入るもので…
「和登、そろそろ集まって…おや?どういう事かな?」
抱き合っているところをバッチリ月姫に目撃されましたとさ!?ノック位しようぜ!?
「君、失礼だね!ノック位したらどうかな!?」
俺は、どこかの高飛車貴族っぽくそんな事を言ってみる。もちろん、現状を指摘させないためのブラフである!!猿以下?とっさに誤魔化すなんて芸当、俺には無理なんですよ!?
「それは失礼。しかし、もし君の裸を目撃してしまっても、大したものじゃないから問題ないだろう?」
聞きました?奥様?私の息子を大したものじゃないと言い切りましてよ!?こうなったら、見せつけてやらねばなるまい!!ちょっと待って!?冗談だから通報しようとしないで下さい!?
「月姫、また邪魔しに来たんじゃないよね?」
「おや?そう言うって事は、風香から彼を誘ったのかい?」
「誘ったって何かな?私は、和登がすっごく気持ちよさそうに寝ていたから、一緒に寝て見たくなっただけだよ?」
「なるほどね、そう言う事か。風香も段々と行動が大胆になって来ているね?」
「月姫が何を言っているのか分からないよ??」
何だろう?たまに、この二人の会話が何か怖く感じる事があるんだ。みんなは理由が分からないか?え?お前の頭蓋骨の中はスカスカだろ?し、失礼な!これでも学校での成績では赤点はなかったぞ!ぎりぎりだけどな!!そう言う事じゃない?う~む??
「まあ、結局こういうしかないって事だね。和登、純粋な風香を邪な目的でベッドに連れ込むのは感心しないな?」
「何ですと!?風香から来たって聞いてなかったのか!?」
「抱き合っていたじゃないか?邪な心がなかったとでも?」
「それは…その…何と言いますか…」
し、仕方ないだろ!?相手は女の子だぞ!?美少女だぞ!?風香だぞ!?ちょっとだけはそう言う想いを抱いてしまっても仕方ないだろ!?むしろ、健全な証だ!!言い訳が酷すぎる?悪かったな!?
「邪って何のこと?」
「ああ、それはだね」
「おいぃぃ!?月姫さんや!風香に何を吹き込もうとしているんだよ!?」
頭に?マークを浮かべている風香を見て、ホッと息を吐いた。風香が自覚してスキンシップが減ったら一大事だろ!?ちょこざい?甘んじて受け入れよう!!!いたっ!?女の敵は成敗?悪かった!反省するので物投げるのやめて下さい!?
「冗談ぢょ、冗談。さて、無駄な時間を使ってしまったし、さっさといつもの場所に向かおうか」
「そうしよう!そうしましょう!!」
「そうしよう♪そうしよう♪」
どうやら、俺の勢いに風香も乗ってくれたようだ。これでもう大丈夫だな!!しかし、これだけ密着イベントが多いって事は…俺の事を嫌ってはいないよな?問題は、友達から昇格出来るかって事だが…じっくり頑張るしかないな!チキンに出来るのか?ば、馬鹿者!やる時はやる男ですよ?俺は!!
そして、集まっていつもの報告が終わった。展開が早すぎ?いや、特に変わった事はなかったし…俺だけ成果がなかったのも同じだし?どうせ、俺なんて勇者のなり損ねだし?え?拗ねても可愛くない?ほっとけ!!
「和登…その…明日なんだけど、良かったら一緒に魔術を覚えてみないかしら?」
「へ?俺?でも、俺って魔術士じゃないから…」
「知ってるわよ。でも、盾って今までなかった職業何でしょう?それなら、覚えられないと言い切るのは早計だと思わない?」
「た、確かに!今までなかったって事は、可能性は無限大って事だよな!?」
「そこまでは言っていないんだけど…」
ちょっと古都の顔が引きつった気がするが問題ない!!確かに盲点だった!!盾と言うのは未知の存在だ!つまり、俺の中には無限の可能性があったのだ!!魔術を極めて見せるぜ!!
「和登は単純で羨ましいね」
「なんだとぅ!?」
「そこが和登の良い所だと私は思うな!」
「風香が良い所だと言うならば問題ないな!!」
「本当に羨ましいよ」
む?なんだか馬鹿にされている気がするが、風香が良いと言うなら問題ないだろ?羨ましい?あんたらもか!?
「じゃあ、明日は風香は僕たちと一緒に別のアプローチで強くなってみようか」
「えっと…和登と一緒が良いなぁ?」
上目遣いだと!?もちろん、俺も風香と一緒が良い!!
「じゃあ、明日は3人で行動だな!!」
「だよね♪」
「はぁ…和登、君も風香が強くなった方が助かるだろう?」
「それはそうかもしれないけど…風香が俺と一緒が良いって言ってるし…」
「へぇ?つまり、古都と二人じゃ嫌って事かな?可哀そうに…」
「へ?ち、違うぞ!?そんな事言ってない!!言ってないぞ?古都!!」
「え?わ、分かっているわよ…?」
「本当にか?何か様子が変じゃないか?」
「そ、そんなことはないんだけど…二人きりで行動したいような、したくないような、微妙な心境なのよ」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもないわ!」
「月姫…私に何か恨みでもあるのかな?」
「そんなものないよ?ただ、これからの事を考えると、風香にも強くなってもらわないと危険度が増すかもしれないからね。それに、強くなった方がいざって時に和登を助けられるんじゃないかい?」
「むぅ…それはそうだけど…」
おや?雲行きが怪しい?相変わらず、二人は何やら通じ合ってるよな。ただ、バチバチって感じで通じちゃってるから下手に入れないんだよな…関電は勘弁して欲しい所だ。え?お前ならいける?簡単に言ってくれるな!?
「俺は、風香の意志を尊重するよ」
出来れば、俺と一緒に居て欲しいけどな!そう言えば良いだろ?そんな女々しい真似は出来ないだろ!?え?すでに手遅れ?マジか!?
「…分かった。和登がそう言うなら、明日は別々に行動してみる。お互いに頑張って強くなろう!明日は別々になるけど、和登の応援はずっとしてるからね!」
「お、おう!ありがとう!!俺も絶対に強くなって見せる!!」
くっ…裏目に出たか!!まあ、古都とデートだと思えば…身の程知らず?分かってるよ!!思うだけなら迷惑掛からないし良いでしょうが!!
「明日はよろしくな!古都!!」
「え、ええ…よろしくね、和登」
むぅ…テンションが違うな?やっぱり、俺と二人っきりは嫌なのではないだろうか?明日は、俺の粋なトークで盛り上げるしかあるまい!え?主旨を忘れるな?わ、わかってますってば!?
まあ、そんな経緯で古都と一緒に居るわけですよ!!え?肝心の魔術書についての説明がない?着いてから説明するから待ってなさい!今すぐ話せ?いや…実は、俺も知りません!いたっ!?開き直るとすぐに物を投げるのやめませんか!?
えっとですな、古都が迎えに来て、着いたら説明するって言ったんだよ!つまり、俺はついて行ってるだけ!何も分かってません!!偉そうにするな?でも、それが俺ですからね…
「しかし、古都の魔術は凄いよな!一面焼け野原にしちゃったんだからさ!」
びくっと反応する古都。え?何かやらかしたか?
「あの時はごめんなさい。熱いと叫んでいたし…怒ってるわよね?」
「へ?いやいや!あの時言ったじゃんか!?感謝してるって!本心だから!俺、偽るの苦手だから!信じなさい!!」
「偽るの苦手…確かにそうよね。和登、ありがとう」
「何だか納得しかねる感じだが、気にしたら負けだな!それと、礼を言うのは俺だからな?ありがとう!!」
俺が礼を返すと、くすっと口元を抑えながら笑い、どういたしましてと返して来た。やっぱり、古都って美人さんだよな!え?浮気?ばっかもの!可愛いと綺麗が共存している古都を、正直に表現しただけだ!
「和登は…不安になったりしない?私は時々なるの。でも、風香たちの前だと素直に不安だって言えないのよ。ほら、私って気が強いと思われているみたいだから」
そう言って笑う古都。ふむ、そうなのか?俺は、ただの和風美人だと思っていたけどな!!でも、確かに風香と彩夢よりも大人っぽいし、素直に不安を吐露出来ないのかもしれないな。
「俺は不安になったりしないな!だって、それが俺だからな!!そんなものは、俺の前でははだしで逃げ出すのさ!!よし!古都が次に不安になったら、俺の胸に飛び込んで来な!全身全霊で受け止めてやるから!!」
「あら、ありがとう。でも、そのまま押し倒されちゃいそうよね」
くすっと笑う古都に見惚れそうになってしまった!いや、ここで止まったら俺じゃないだろ!?
「いやいや!俺は、女の子の弱みに付け込むなんてしないぜ!押し倒すなら、堂々と口説き落としてからだ!!」
って、何言っているんだろうな!?古都の魅力にやられてしまったようだ!元々だろ?ただの馬鹿?うっさい!俺だから仕方ないんだ!!
「そ、そうなの?それって…私を口説き落としたいくらい好きって事なのかしら?」
「へ?そ、それくらい古都は魅力的だけど!ほ、ほら!まだこっちの世界に来て不安いっぱいの古都に迫るのは、弱みに付け込む感じだから!!俺の主義に反するから!!」
え?彼女欲しいくせに?そうだよ!悪いかよ!!しかし、弱みに付け込むとかまずいだろ!すぐに別れる事になる何て嫌だからな!お互いの気持ちが大事なんだ!ロマンチスト?悪いかよ!!
「そう言う所が真面目だから逆に困ってしまうのよね」
「ん?何か言ったか?」
「もうすぐ着くわよって言ったの」
「そうか!もうすぐ俺が大魔術士として生まれ変わるんだな!!」
「ふふっ、そうなると良いわね」
「おう!そうなって見せるさ!!」
0点?何がだよ!?変な事言うのはいつも通りだろ!?何がいけなかったと言うのだ!?
で、魔術と言うのは才能で決まる物らしい。と言うのも、この魔術書の説明を聞いたら俺でも分かる理屈だった。
魔術書とは何か、魔術を使うための唯一の手段だそうだ。つまり、魔術書を見れば魔術が使えるか一発で分かるという事。
具体的には、魔術書の内容は見る人にとって違うという事。何それだって?俺も思ったね。で、聞き返したところ…え?古都とのやり取りまで省く必要ないだろって?確かに!いつものノリでやっちまったぜ!!てわけで、今から古都先生による、魔術書の説明に入ります!心して聞くように!!
「古都先生!もう一度だけ魔術書についての講義をお願いします!!」
「え?さっき分かったって言わなかったかしら?」
「読者のために…じゃない、俺って物覚え悪いので、もう一度だけお願いします!!」
「…別に良いけど、今度こそちゃんと覚えて欲しいわね」
「今度は大丈夫です!先生!!」
「口だけは回るのよね、本当に」
仕方ないわねって感じで、教えてもらえることになりました!本当は覚えているんだけどな!お前たちのために聞いてやっているんだからな?感謝しろよ!!え?スキップ機能を使いこなせてないからだろ?何のことか分かりませぬな!?
「この世界での魔法…魔術は、魔術書から覚えるしかないみたいなの。そして、その魔術書は見る人それぞれで内容が異なるの。ここまでは良い?」
「はい!先生!ばっちりです!!」
「元気良すぎて逆に不安になるけど…まあ、良いわ。それで、その内容が異なること自体が才能によるものらしいの。そして、魔術書の内容だけど、そのまま魔術を使えるようになる詠唱みたいなものが書かれているわけよ」
「つまり、魔術書片手に魔術を使うなんて格好良い感じでやれば、すぐに使えるんですね!!」
「・・・本当に、もう一度説明して正解だったみたいね」
「え?あれ?」
何か違うのか!?えっと…魔術書の内容を覚えなくてもカンニングすれば完璧じゃん!!あ!貴重だから持ち出せないのか!?え?結局覚えてないっぽくないか?ち、違うし!ちょっとして勘違いだし!!
「多分、魔術を覚えられるって言う話で盛り上がり過ぎて、聞いていなかったみたいだから、もう一度言うわよ?魔術書の中身は見ただけで記憶されるの。ううん、記憶の中に焼き付けられるって感じかしら?」
「・・・え!?覚える必要ないって事ですか!?」
「やっぱり聞いていなかったんじゃない!それに、もう一度言うけど内容は人によって違うの。聞いた話だと、同じような魔術でも名前が違ったりすることもあるみたいなのよ。だからこそ、才能だけが唯一の魔術行使に必要なものという事なの」
「えっと…どういう事でしょうか?」
可笑しいな?理解したはずなのに!魔術書を読めれば魔術を覚えられるって思っていたんだけど違ったのか!?
「…はぁ、出来の悪い生徒に教えるのは大変だと思い知らされたわね」
「古都先生!見捨てないで下さい!!」
「分かっているわよ。簡単に言うと、魔術書の内容は人それぞれ違うという事は、その発動するまでの詠唱のようなものすら違うって事なのよ。つまり、自分の記憶に焼き付いた詠唱文から、魔術の発動の名前まで、全部を他人に教えたとしても、使える人はいないって事よ」
「カンニング禁止!?」
「・・・もうそれで良いわよ。そして、魔術書を見ても何も書かれていない可能性もある。と言うより、真っ白の人がほとんどらしいわ。魔術士以外が魔術を使えない理由はそこにあるのよ」
「えっ!?つまり、俺が魔術書を見ても真っ白だった場合は…」
「魔術は一切使えないって事になってしまうわね」
「な、なんだってー!?」
「さっき説明したはずなのだけど、魔術を覚えられると勘違いして聞いていなかったのでしょう?」
「いえ、その…」
半眼の古都さんも美人っすね!!何て言ったら殴られそうなので言いません!あ、もちろん古都はそんなことしないけどな!え?もう一度説明して貰って良かっただろって?そうですね、調子に乗ってすんませんでした!!
「それじゃあ、早速開いてみて?」
そう言って、一冊の本を俺の前に置いた。見た目は分厚い本だな。ちょっと古い感じはするけど、普通の本だ。表紙は…何か良く分からん絵が描いてあるな!あ!魔法陣かも!!
しかし、これを開いたら…魔術を覚えられるか決まってしまうのだと思うとどうも…
「古都先生!質問があります!!」
「その呼び方、気に入ったのかしら?」
「はい!!」
「魔術書を読み終わったら元の呼び方に戻して欲しいわね」
「拒否された!?」
「それで、何かしら?」
「俺に対する突っ込みすら無しですか…まあいいか!ええと、魔術書を開いた瞬間決まるんでしょうか?その、後から文字が浮かび上がって来たりは!?」
女々しい?さっさと開け?うっさい!今後、魔術を使えるかどうかがかかっているんだぞ!?緊張しても仕方ないだろうが!?
「私も全てを知っているわけではないのだけど、私の時はすぐに文字が見えたわね。そして、すぐに脳内に焼き付いたと言うのかしら?それとも、浮かんだと言うのかしら?感覚的には、そんな感じだったわ」
「ふむふむ、つまり…開いた瞬間に決まるって事ですか?」
「そう言う事になるわね」
「そ、そうですか…」
生唾を飲んで魔術書を見る俺。・・・早く開け?もうちょっと待って!心の準備が!?
「悩んでも結果は変わらないわよ?それよりも、使えるか使えないかをはっきりさせて、次の訓練に移りましょう?」
「そ、そうだな!悩むなんて俺らしくない!!当たって砕けろだ!!」
俺は気合一閃!!本を開く右腕に、気合を込めに込めて魔術書を開いた!!
「・・・燃え尽きたぜ・・・真っ白にな・・・」
え?それはいっちゃいけないやつだって?仕方ないだろ!心境的にそれなんだよ!!!真っ白なんだよぉぉぉおおお!!!!
「ここでネタに走るのはさすがと言うべきなのかしら?」
「そう言う事にしておいてください…」
項垂れる俺に何かを感じたのか、古都は回って俺の隣にまで来た。
「和登、ほとんどの人は魔術を使えないんだから、そんなに落ち込む…えっ!?」
俺を励まそうとしてくれていた古都が、不意に目を見開いた。ん?どうかしたのか??
「和登…その…もしかして、魔術書を開く時に何か使いたい魔術とかイメージした?」
「ん?ああ、もしかしたらイメージした魔術が使えるんじゃないかって思って、気合いと共にイメージしてみました。結果はこれだけどな…ハハハ」
「それって…手からレーザーみたいなのを出すものじゃなかったかしら?」
「え!?何で分かるんすか!?」
本当は目から出すか迷ったんだけど、目からだと何か魔物みたいじゃないか?と思って手から出すイメージにしたんだよ!って、そんな事は良いとして!
「ええと、何でって言われても私の方が知りたいのだけど…魔術書に書いてあるのよ」
「なんですと!?俺には真っ白にしか見えないんですけど!?」
「ええと…その…更に、使えるようになったみたいなのだけど…」
「ええーっ!?マジっすか!?」
何だと!?俺の手からビームが古都に受け継がれただと!?・・・いや、待って?という事はですよ…
「その…呪文と言うか、詠唱もその…俺のイメージ通りだったりとか?」
「・・・我、求めるは全てを貫く槍、顕現し、全てを穿て」
「いっやぁぁぁあああ!?」
無表情で言われてもこの威力!?俺、使えるようになったとしてたらこれを毎回言ってたの!?ただのさらし者じゃん!?
「…封印ね」
「待って下さい!?折角使えるようになったんですから活用して頂きたいです!こ、古都なら大丈夫!美人の古都なら許されるはずなんです!!」
「び、美人って…それより、その…手を握られると…その…」
「あ!?ごごご、ごめん!!」
思わず、万歳をして手を離す俺。いや、今のは不可抗力です!!…柔らかかったけど!!
「まあ、良いわよ。わざとじゃなさそうだし…魔術も、折角だから機会があったら使う事にするわね」
「ありがとう!これで俺も浮かばれるってものです!!」
「自分を死んだように言うのはどうかと思うけど」
そんな事を言いながらも、古都は笑っていた。やはり、笑顔は可愛らしい!ふふっと笑う感じは色気があったりするのに、美少女と言うのは表情一つで印象が変わるものだな、うん。え?いきなり何言ってんだって?良いだろ!魔術が使えなかった絶望を古都の笑顔で埋めているんだ!放っておいてくれ!!
「しかし、他の人が開いた魔術書を読めたりすることもあるんだな?」
「それなんだけど、今までそんな事があったと言う話は聞いたことがないのよ。もっと言えば、思い描いたイメージが魔術書に反映されるという事もね」
「え?俺がどっちも初めてって事なのか?」
「そうなると思うわ」
「つまり…俺の古都への想いが魔術として与えられたって事だな!」
「ふぇ!?」
「良かった、折角古都に付き合って貰ったのに、何も成果なしにならなくて!その魔術が古都を守ってくれると信じてるぜ!」
そう言って、わっはっは!と笑う俺。うん、空元気だよ?めっちゃ落ち込んでいるよ?また一つ、俺の攻撃手段が失われたわけだからね!!チキショー!!
「私への想い、私を守ってくれるって…」
「ん?どうかしたのか?」
「え!?な、何でもないわ!そ、それよりも!結局、和登には何もなくて…その…」
「ああ…だ、大丈夫だ!俺には剣があるから!!」
そう言って、ステーシィから貰って剣を叩く俺。強がりも、続ければ真実になるのさ!!頑張れ?優しくされた!?明日は雪か!?いたっ!?冗談ですってば!?
「そう…でも、全ての武器を試したけどダメだったんでしょう?」
「そ、それはそうなんだが…」
「責めているわけじゃないわよ。その…継続は力なりとも言うし、折角剣があるなら、それを続ければ強くなれるんじゃないかしら?」
「才能ないって言われたぜ?」
「それでもよ。色々やってダメだったじゃ本当に何もならないじゃない?才能が無くても、続ければきっと強くなれるわ。だって…和登は、いつだってめげないでしょう?それが、きっとあなたの一番の力なのよ」
「そ、そうかな…?」
「そうよ。大変だろうけど…その…折角だから、今日は私が応援してあげるから剣術頑張ってみない?」
古都が応援してくれるだって!?
「頑張ります!!」
俺は、反射的に即答していた。うおお!風香に続いて、古都まで俺の応援を!?美少女二人に応援されたら、俺はきっと真の力に目覚めるに違いない!!おおお!やってやるぜ!!単純?茶化さないで下さい!?こちとら気分を盛り上げているんですから!!
そして、訓練場に着いた俺は、ひたすらに剣を振り続けた!まあ、多少は古都が見ているのを意識して格好良く振ったりして見たが…まあ、強くなった気はしないな…やはり。
「実感出来る強さと言うのは、そんなに多くはないと思うの。それでも、努力は無駄にならない…そう思って、努力を続けた人だけが、その実感を手に入れられるんじゃないかと、私は思うのよ」
一時の休憩中、古都は俺にタオルを渡してくれながらそう言って励ましてくれた。この心の奥から湧き上がって来る熱い思いは何だ!?恋か!?いたっ!?間違えました!やる気が漲って来たと言いたかっただけです!!
「ありがとう、古都!!俺、めっちゃ頑張れる!!絶対に強くなって、古都を守ってやるからな!!」
「そ、そう…ありがとう。・・・手を取られるとドキッとしちゃうのは私だけなの?バカみたいじゃない…」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもないわ」
ん?若干顔が赤くなってないか?何故…って!?俺、また無意識に古都の手を握ってる!?柔らかい!いや、そうじゃない!!わざとじゃないんだ!?
「なんだ?またここに戻って来たんだな?ほう、別の女を連れて来るとは余裕だな?」
「出たな!?筋肉ダルマ!?」
出たよこいつ!?内心、どうやって手を離そうか考えてたけど、こいつ、いつも俺の邪魔をするように現れやがって!!
奴の登場のタイミングで、恥ずかしくなったのかぱっと離れてしまった古都。やはり、許せん!!
「今の俺は絶好調だぜ?今日こそは、お前を倒す!!」
「ほう、いつもながら威勢だけは良いな?口だけじゃないって事を、今回こそ見せてくれよ?」
俺たちはまたも決戦の地へと向かうのだった。まあ、遠くへ行かなかったけどね?やっぱり、一方的にボコボコにされましたけどね!!!
「それで結局、魔術は覚えられなかったと言うわけだね」
「はい、大魔術士は生まれませんでした…」
がっくりと項垂れる俺。まあ、特訓の方も散々だったし、俺ってやっぱり勇者じゃなかったんだろうか?烏滸がましい?そうかもしれませんね…いたっ!?何で物投げた!?らしくないから励ました?物投げて励ますとか斬新ですね!?元気出たよ!バカ野郎が!?
「ふ、風香の方はどうだったんだ?」
俺は、吊るし上げられるのを避けるために風香に話を移す。まあ、興味があったのも理由なんだけども。
「えっと…完全じゃないけど、コツがつかめちゃったかも?その、必殺技みたいな?」
「なん…だと!?」
これはあれか?俺だけがお荷物に…い、いや!俺だけ前衛だし!大丈夫…だよな?
「これは、みんなが遠距離効果力の攻撃を覚えて、和登が要らない子認定される日も近いかもね?」
「ぐはあ!?」
考えないようにしていたのに!?何て酷い事を言うんだ!?月姫は!?
「月姫!ダメだよ!そんな事を言ったら!和登は、毎日必死に頑張っているんだからね!!」
「そうよ、月姫。彼は彼なりに努力をしているわ。現状では、一番頑張っていると思うし、邪険にするのは失礼にもあたると思うわよ」
おおっ!?何と!?味方が一人増えた!?これで勝つる!!
「へぇ、古都まで和登の味方になったんだね」
「味方とかではなく、単純に仲間を悪く言う発言はどうかと思っただけよ?」
「そうかい?古都は、和登とは仲間以上の関係になりたいって言っているように聞こえたけど?」
「な、何を言っているのか分からないわね」
焦ったようにそっぽを向く古都。仲間以上の関係って何だろうか?あ、あれか!ただ単に、俺に味方した古都を月姫がからかっているだけだな!俺にもそれくらいは分かるぜ!馬鹿?馬鹿って何だよ!?
「ふ~ん…和登!明日はまた私が応援してあげるからね!!」
「お、おう!風香の応援は俺の力になるからよろしくな!!」
ハイタッチする俺たち。もう、これくらいは通じちゃう仲なんだぜ?羨ましいだろ!!いたっ!?少し調子に乗ると物が飛んでくると分かっててもやっちゃうんだよな!?それが俺!!阿呆?ち、ちがうぞ!?多分…
「待って、風香は弓のコツを覚えたところでしょう?感覚を忘れないうちに完璧にした方が良いと思うのよ。だから、明日からは私が和登の応援をしてあげようと思うの」
「え?それはまあ、古都の応援も俺の力になるけど…良いのか?」
「ええ、私の方は魔術だから下手に試すとまずい威力が出てしまうみたいだし、実戦で試すしかなさそうなの。それに、一度は十分な威力のものを放つことも出来たし…問題ないと思うわ」
「なるほど、じゃあ…」
「待って!私の方が和登の事を分かっているし、私が応援した方が良いと思うんだ!」
「そんな事はないわ。彼の事は今日一日で大分分かったつもりだし、私もちゃんと応援してあげられると思うのよ」
「それって、和登が単純って言いたいの?」
「違うわ、彼は真っ直ぐだから解り易いのよ」
あ、あっれぇ?二人は仲良しだったはずなのに、何で俺の応援何かでバチバチやっているんでしょうか!?ハッ!?もしかして、応援することにやりがいを感じたのか!?チアリーディング的なのにハマったりするような感覚なのか!?
そう思い、俺は二人の仲裁に入ることにした。
「そんなに応援が好きなら、二人ともしてくれたら嬉しいんだけど?」
そう言った途端、俺を睨みつけてくる二人。俺は、その視線に思わず固まった。な、何かまずい事言ったのか!?こいつ何言ってんの?的な鋭い視線を向けられたんですけど!?
「つ、月姫さん!俺、何かまずい事言っちゃったんでしょうか!?」
俺は、思わず助けを求めて月姫に話し掛けた。だって!怖かったんだもん!!
「はぁ…馬鹿にはつける薬はないんだよ?僕でも、フォローしようがないね」
出た!またやれやれポーズ!好きだな、ホント!!でも、全く解決してくれないじゃないですか!?
俺は、仕方なく残りのメンバー。最近大人しいと言うか、一人だけ別世界に入り込んでいる?彩夢に助けてと視線を送る。
「えっと…和登君は、一度痛い目にあった方が分かるんじゃないかな?」
「珍しく辛口ですね!?彩夢さんや!?」
それから俺は必死に二人を説得した。二人の応援があれば俺は無敵だと!!それはもう、必死にね!!その甲斐があってか?最後には
「まあ、和登だもんね」
「そうよね、和登だから仕方ないのよね」
と二人とも納得?してくれた!何かあれかもしれんが、収まったから良し!!え?全然良くないだろ?良いじゃん!蒸し返したらまた針の筵になりそうだし!よしって事にしておきましょうよ!?
そんなこんなで、最後に凄く疲れてすぐにでも眠りたかった俺だが…
「当たり前のように俺の部屋にいるんだな、フィーナさんや?」
「はい、あなたのフィーナが今日もいますよ」
「…せめて、笑顔で言ってくれたら癒されそうなんだけどな…」
相変わらずの無表情です。本当に、俺の愛人になる気あるんでしょうかね?あ!べ、別にすると言っているわけじゃないからな!?説得力がない?仕方ないだろ!?美人さんにお金目的とは言え、迫らせてるんだぞ!?突っぱねるなんてとんでもない!!サイテー?いや…うん…そうかもしれんけど…
「では、癒して差し上げるのでベッドで横になって下さい」
「ああ…うん…お願いします」
まあ、いつも夢の中に入ってしまうほどのマッサージで癒されよう。サイテー?もう良いよ!これでも疲れているんだよ!ちょっとは癒されたって良いだろ!?
「では…」
「ああ、ありがとどどどぉ!?」
何だ!?いつもより…痛い!?え?もしかして、疲れが溜まると痛くなるって本当なのか!?いや、そんな単純なものじゃなく…いつもより強くないかな!?
「いだだだ!?あの!?フィーナさん!?」
「何ですか?すけこまし勇者様」
「へっ!?すけこまし!?あの…何か怒ってませんか?無表情の中に怒気を感じると言うか、腕に力が…全体重がかかっていると言うか…」
「それは私が重いと言う事ですか?」
「ちちち、違いますよ!?フィーナはとても素晴らしい身体だと思います!って、何言ってんの、俺!?」
「…なるほど、こういう感覚ですか」
「へ?何の事ですか?」
「いえ、私の中にもこのような感情があったことに驚いているだけです」
「このような感情?」
「和登様、質問があります。マッサージのためとは言え、このように私に馬乗りにされている状況で何かを感じたりしますか?」
「太ももが柔らかくてドキドキします!違った!?手も柔らかいです!って違う!その、一生懸命やっている時に漏れると行きも色っぽいってこれも違う!あ!マッサージが気持ちよすぎて眠ってしまうほど幸せです!!」
お前何言ってんの?だって?俺もそう思う!!でも、自分でもテンパり過ぎて何言ってんのか分からんのだよ!?
「そうですか…それでは、最後の質問です。私は…和登様の本当の癒しになれる存在でしょうか?」
「へ?何言ってるんだ?すでにすっごく癒されているんだけど?本当の癒しと言うか、すでにずっとそばに居て欲しいくらい俺の中では大きな存在なんですが?」
「!?そ、そうですか…」
ん?今、一瞬だがすっごく照れた可愛らしい表情しなかったか?すぐにそっぽを向いてしまったので見えなくなってしまったが…
「分かりました、和登様。では、マッサージの続きをしますので体勢をお戻し下さい」
「・・・痛くしない?」
「はい、私もいつのまにか疲労で少し可笑しくなっていたようです。ですが、和登様を癒す事で私も癒されると分かりましたので、もう大丈夫です」
「へ?どういうこと?」
「気にしないで下さい。うつぶせになって頂けないと…マッサージしませんよ?」
そう言われたら、うつぶせになるしかない。俺は黙っていつもの体勢になった。
しかし、なんだったのかね?もっと痛い目にあえば良かったのに?何てこと言うんだ!?本当に結構痛かったんだぞ!?
それからは、本当に痛くなかったので、俺はすぐにまた夢の世界に旅立ったのだった。
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