第8話 続・特訓だぁ!!

 え?何々?この作品は、異世界物となっておりますが、中身は嬬恋和登を主人公としたコメディ調の作品となっております?って、何がコメディ調だ!!こちとらいつも全力全開の大真面目だっての!!見てろよ!?今日こそ、勇者としての必殺技を身につけて、あっと言わせてやるからな!乞うご期待だ!!


※期待した人がいたら申し訳ございませんが、いつも通りです。








 目が覚めると目の前に綺麗な女の人がいる。そんな妄想をしたことないか?俺はある!しかし、実際にその場面に遭遇してしまうと、硬直してしまうという事が立証された。そう!今、俺がまさにそれなんですよ!!



「綺麗だな…」



 目の前に、フィーナの寝顔があった。そう、何故か同じベッドで寝ていた。・・・何だと!?今、俺はさりげなく事実を確認したが、そんな記憶ないぞ!?何もないはず!思いだぜ!俺!!何があった!?



 考えても分からぁん!!!フィーナを起こして聞くしか!!・・・待て、布団の中が裸だったら…俺、まずくないか!?いや、服を着ている・・・はず?触って確かめろ?出来るわけないだろ!!童○舐めるなよ!?



 ・・・それはそれとして、か、顔が近い…キスしてもばれないんじゃ…?ま、待て!寝込み襲うとか最低だぞ!!は、初めてのキスはお互いに雰囲気を作ってさりげなく…え?乙女か?悪かったな!!



 しかし、ライトブルーの髪がとても綺麗だな。か、髪を触るくらいなら…良いよな?



 そう思った俺は、そっと髪を撫でてみる。なん…だと!?これは、俺と同じ髪の毛なのか?違う物質じゃないのか!?全然手で触っても引っかからないぞ!?



 俺は、驚きの余り夢中になって手を動かしていた。そして、気が付けば彼女の頭を撫でていた。いけね!夢中になり過ぎだろ俺!?流石に起きたんじゃ…?



 そう思ってフィーナを見るが、未だに目は閉じたままだった。そして、彼女を撫でている間に更に接近してしまっていたようで、少し顔を動かせばキスしてしまうような距離に彼女の唇があった。



 俺は、思わず生唾を飲み込む。今なら、事故を装って…って!最低か!俺は!!俺は、慌てて距離を取り、頭を振って理性を取り戻した。危なかった…



「結局、おはようのキスはしてくれないんですね?」



「のっはぁ!?起きていらっしゃったんですか!?」



「いえ、あれだけ熱心に髪を撫でられたら、目が覚めないわけがないと思いますが?」



「いや…その…とても綺麗な髪で触って見たくなりまして、触ったら触ったですっごく手触りが良くて止められなくなったと言いますか…」



 内心すっごく焦ってます!だって、思いっきり現行犯だったんですよ!?いや、確かにあれだけ触ったら起きちゃうかな?とか思ったけど、目は瞑ったままだったし平気だと思ってたんだよ!?しかし、キスは思い留まれてよかったな、ホント…



「では、改めておはようのキスをお願いします」



「良し!飛び切り熱いのを…って、なるか!冗談が過ぎると本当にしちゃうぞ!?俺を舐めるなよ!?」



「いえ、舐められたのは昨夜の私です」



「はへ!?な、何を言って…え?もしかして、俺が…?」



「はい、それはもう全身くまなく」



「全身くまなくだと!?」



「ねっとりじっくりと」



「ねっとりじっくりとだと!?」



「その後はもう、獣の如く激しかったですね」



「獣の如く激しくだと!?」



「もう無理だと言ったのに止まってくれませんでしたね。野獣です、野獣」



「野獣だと…!?」



 どういう事だ?マジなのか!?記憶が亡くなるくらい激しく…?って、騙されるな!?きっと、いつもの冗談だ!!



「ま、全く!どうせ、いつも冗談なんだろ?」



「そうですか、私の身体何て冗談で済まされてしまう程度なんですね…」



「なっ!?」



 マジか!?マジなのか!?やっちまったのか、俺!?確かに、一緒に寝ていたし…でも!服は着ているみたいだからきっとセーフ!!しかし、悲しそうにしているフィーナが嘘をついているようには…



「まあ、冗談ですが」



「やっぱり冗談なのかよ!?思いっきり騙されかけたわ!!!」



 最後の所なんて、女優顔負けの演技力だったぞ!?え?俺が騙されやすいだけ?そ、そんなことないですよ?



「しかし、先ほどの和登様の妄想ですが」



「俺の妄想じゃなかったよな!?」



「和登様が責任を取って下さると言うのなら、すぐにでも現実に昇華出来ますが、いかがいたしますか?」



「…ごくり」



 思わず生唾を飲み込む俺。だ、だって!両腕でお胸を強調して妖艶な表情で誘って来てるんだぞ!?年頃の男である俺が、そんなのさらっと流せるわけがないだろ!?ヘタレのくせに?悪かったな!!



「お互いに初めての体験をする記念日となりますね」



「そうだな、今日がお互いの記念日に…って!?俺が断らない前提で話進めるのやめてくれません!?」



「そうですか、今日の下着は自信があったのですが、お見せ出来ずに残念です」



「なん…だと!?」



 フィーナのおすすめ下着だと!?見たい!!って、ダメだろ!?見たら止まれないだろ、俺!!え?ヘタレだから見せて貰えばって?バカなの!?しないけど下着だけ見せてとか頭おかしいだろ!?



 俺は、悶々と頭の中でフィーナを下着姿にしてしまった!?本人を前に何やってるの!?



「今、和登様の中の私はどんな下着姿にされていますか?」



「お見通しですね!?本当にごめんなさい!!」



「謝るくらいなら、責任を取って下さい」



「いや、しかしですな!?えっと…その…そう!一週間後って約束じゃなかったか!?」



 言ってから墓穴を掘った事を悟ったが、後の祭りって奴だった。



「分かりました、5日後はとっておきのを身に着けておきますね。それでは、朝食までゆっくりとお過ごしください」



「え・・・ああっ!?」



 自分のしてしまった事に思わず声を上げてしまったが、すでにスタスタとフィーナは出て行ってしまっていた。いや、居ても彼女なら撤回させてくれない気がするけどな…



「やってしまった…」



 俺の迂闊発言が無ければ、一週間後のフィーナとの初めての話は冗談で済ませることも出来たはずだった。それなのに、俺がさっきうっかり一週間の約束と口走ってしまった事で、あの冗談とも取れた発言は、二人の約束事になってしまったのだ!



 マジでどうしよう!?何かいいアイデアないですか!?え?自分で考えろ?出来ないから聞いてんじゃん!!



「よ、よし!明日は明日の風が吹く!今日はとにかく特訓だ!やるぜ!真の勇者目指して!!」



 俺は未来の自分に丸投げすることにした。やっぱり?良いじゃんか!未だ一番重要なんだよ!!頑張るぜ!!



 あれ?そう言えば、一緒に寝た経緯とか全然聞けなかったぞ?・・・まあ、いっか!








 で、現在また訓練場に居る俺。そして、今の俺は棒術で戦っている!!いや、振り回しているだけだけどな!え?何故棒術だって?いや、他も色々試しているんだ!!何せ、剣術も素人だろ?なら、他に何か得意な武器があるかもじゃん!!



 そんなわけで、俺は色々な武器を試しているんだが…



「全然ダメだな!!」



「ぐはぁ!?」



 俺は、痛みのために膝をつく。まあ、みんなのためなら耐えて立ったままでいられるだろうが、訓練ではこんなものさ!しかし、この筋肉ダルマめ!全く容赦ないな!!多分、俺が全然ダメージないからなんだろうけどもさ…痛いんだよ!!



「なんだ?ギブアップか?」



「五月蠅い!少しくらいは手加減しろよ!?しかし、俺はここからの男だぜ!筋肉ダルマ!!」



「手加減して欲しかったら、まず俺を名前で呼ぶんだな」



「喧しいわ!俺にとっては、お前は宿敵認定されたのだ!故に、筋肉ダルマで十分だ!!」



「ほぅ、勇者の宿敵か…悪くないな?それじゃあ、宿敵らしく全力で応えてやらないとな!!」



「あ、やっぱり…少しは手加減して貰えると!?ぎゃああああああ!!?」



 その後、全ての武器を試してみたが、すっごく痛い目にあっただけだった。くそぅ!筋肉ダルマめ!いつか目に物を見せてくれる!!



「はぁ、痛かった!!」



「和登、大丈夫?ごめんね?私の応援力が足りなかったせいで…」



「いやいやいやいや!!応援力何てないから!!あったとしたら、風香のはMAXだから!お陰様で、何度倒れても起き上がれたしな!!!」



 そう言って、俺は力こぶを作って見せた。まあ、ほとんどないようなものなんだが…貧弱?うっさいわ!!



「そっか、役に立ててなら良かった♪」



「めっちゃ役に立ってました!昨日も言った通り、風香はいるだけで俺の力になるんだからな!風香は俺の天使だ!もう、一生そばに居て欲しいくらいだよ!!」



 ハッ!?また、勢いで調子の良い事を言ってしまった!?ま、まあいいよね?本心だし!!え?本心だろうと軽々しく言いすぎ?わ、分かってるよ!勢いって怖いねって奴だよ!!



「て、天使?一生そばに居て欲しい?そ、そっか…そんなになんだ?」



「うんうん、そんなになんだよ」



 おお、あの風香が照れておる!ここは押すしかないのか!!え?押し倒す気か?バカなの!?こんな人のいるところでやるわけないだろ!?お前ならやりかねない?嘘つけ!チキン野郎だと思ってるくせに!からかってるだけだろ!?正解?嬉しくないわ!!



「仕方ないから、そばに居てあげるよ!風香ちゃんパワーを有難く使うが良い!」



「ははぁ!ありがとうございます!!」



 流石風香、手強い!やはり、しばらくはお友達で頑張ろう!!え?バカなのって?どういう事だ??一生友達でいろ?酷いな!?君たちは!?思いやりって言葉知っていますか!?



「しかし、少し気が重いな…また、俺だけ何も成果なしとか…」



「でも!和登はすっごく頑張ってるよ!」



「ありがとう、俺の天使」



「う、うん。いきなり髪を撫でられると流石に恥ずかしいよ…」



 モジモジする風香をひたすら撫で続ける俺。やはり、女性の髪は俺のとは違う!意識すればするほど止められない止まらない!?セクハラ?まじっすか!?



「風香様とイチャラブしている所失礼します、和登様」



「おわっと!?いつもながら唐突に現れるな!?」



 気が付いたらそばにフィーナがいましたよ!?このメイド、出来る…!?気配探知とか出来るのかって?出来るわけないだろ?いたっ!?久しぶりの投擲が心地良い!!なんて嘘…そんなに距離を取らないで!?



「フィーナ?何か和登に用なの?」



 あれ?若干、風香の機嫌が悪い?さっきまではご機嫌っぽかったのに、フィーナの事苦手とかか??バカは考えるだけ無駄?酷いな!?



「実は、和登様に一緒に来ていただきたいのです」



「ん?まあ、良いけど」



 まだ時間はあるけど、全ての武器を試してしまったし、今日はこれ以上やっても何もないだろう…しくしく。可愛くない?分かってるよ!!



「じゃあ、私も行く!」



 元気良く手を上げる風香。機嫌は直ったみたいだな?



「いえ、出来れば和登様だけが良いのですが」



「なんで~?」



 首を傾げる風香。やっぱり可愛いな!!



「その、姫様個人の沽券に関わる事と申しますか…」



「うん??」



 うん、それだけじゃ分かんないよね!首を捻る風香も可愛いね!!え?可愛いしか言えないのかって?じゃあ、天使!!ボキャブラリーが少なすぎて可哀そう?ぐっ!?痛い所を突きますな!?



「とにかく、和登様だけをお連れしないと更にややこしい事に発展しかねないのです。ですから、風香様にはご遠慮いただきますよう…」



「…やだ!私、和登と一緒が良い!」



 そう言って、俺の腕にしがみ付いてくる風香。まずい、柔らかくて良い匂いがする!!って、違うな!今、風香について行って良いよね?とか言われたら、俺は絶対に許可しちゃうぞ!え?姫様のために断ってやれないのか?風香が可愛すぎて無理!!



「はぁ、仕方ありませんね。風香様、こういう言い方は本来ならしたくないのですが、風香様にも他人に気安く触れて欲しくない事がございますでしょう?ここは、大人しく引き下がって頂ければと」



「ずる言い方だね?…分かったよ、今日の所は大人しく引き下がるね」



 そう言って、俺の腕から離れる風香。…残念とか思ってないよ?



「和登…ステーシィの事、よろしくね?」



「ああ、任せておけ!!」



 やっぱり、風香は優しい娘だな!ついて行きたかったのも、どうやらステーシィが心配だったからみたいだ。べ、別に俺と離れたくないからじゃなかったから残念とか思ってませんよ!?ほ、ほんとだよ?和登さん、嘘つきません!・・・すみません、嘘つきました!とっても残念です!!



「では、ついて来て下さい」



 また、後でね!と駆け出していく風香を見送った後、俺は先導するフィーナについて行くのだった。








「それで、どこまで行くんだ?」



「はい、姫様のお部屋までです」



「…へ!?ステーシィの部屋!?何があったんだ!?」



「そうですね…先に軽く事情を説明しておいた方が良いのでしょうね」



「うむ、そうしてくれ」



 そうしないと、全然訳も分からず姫の部屋に行く俺が完成する。するとどうなるのか?恐らく、緊張して何かやらかす!間違いなく!!



「では、私に命令してください」



「命令?ああ、話してはまずい事なのか?なら…」



「俺だけの夜のメイドになれと」



「そんな流れじゃ無かったよね!?夜のメイドってなんだよ!?」



 珍しく真面目だなと思った俺が間違いだった!!まさか、ここでそう言う話をぶっこんで来るとは…



「夜のメイドとは、色々と夜のお世話をする過激なメイドさんの事です」



「いや、なんだよって言ったのは俺だけど、真顔でそんな説明しなくても良いんじゃないでしょうか?」



 なんなの!?姫のピンチじゃないの!?誰か、この娘の暴走を止めてくれ!お前がやれ?だから、出来たら頼まないっての!!



「まあ、その話は一旦置いておきまして。実は、この間の事がまだ尾を引いているようなのです」



「この間の事…?」



「和登様が、ぐへへへ、いいじゃねぇか!その美しい身体を抱かせてくれよ!と、姫様に迫った時の事です」



「そんなことしてねぇよ!?やめてくれません!?そんな噂が立ったら、俺が王様に殺されちゃうよ!?」



 本当に何なの?このメイドさん!!俺の事をどうしたいんでしょうかね!?



「少しだけ盛りましたが、この間の姫様とイチャラブしていた時の事です」



「イチャラブ…あ!?あの時か!?」



 そうだ、ステーシィが昔使っていた剣を貰った時、フィーナがそんな事を言っていたな。あの時の事?別に問題何てなかったと思うが?



「その時の事がどうかしたのか?」



「はい、実は…あれから、姫様が恥ずかしがってしまって部屋に引きこもりがちなんです」



「・・・へ?マジで?」



「マジです」



「いやいや!あれくらいの事で?だって、え!?」



 マジか?いや、だって恥ずかしがって走り去ったけどさ?あれって、俺の事をすっごく良い人と勘違いして持ち上げすぎてしまっただけだろ?きっと、ステーシィのフィルターを通すと、みんな善人になるんだぜ?素晴らしいね!!



「まさか、それで元凶っぽい俺が何とかしろと言うのか?」



「大体そんな感じです」



 何だ?何か投げやりだぞ?ま、まあ…ステーシィの一大事とかじゃなくて良かったが…



「説得はしてみたのか?」



「はい。しかし、酒を持ってこい!と怒鳴り散らすばかりで…」



「そうなのか…って、さらっと嘘をつくな!ステーシィがそんな事を言うわけがないだろ!?」



 真顔でしれっと嘘をつくとか!しかも、流れ的に何の脈絡もないとか!!本当に、フィーナって恐ろしすぎるだろ!?



「バレましたか?」



「流石に分かるわ!!俺を何だと思っているんだ!!」



「世界一格好良い、勇者和登様です」



「お、おう!俺が勇者和登だ!!」



 つい乗ってしまう俺!芸人体質の自分が恨めしい!!



「では、格好良い勇者和登様、姫様の部屋に着きましたので後はお願いします」



「分かった!任せておけ!!って、結局説明らしい説明になってなかったじゃねぇか!?」



 俺のツッコミを無視して、部屋のドアをノックするフィーナ。待て!まだ心の準備が!?



「姫様、新鮮な和登様をお持ちしました」



「新鮮な和登様!?何ですかそれは!?和登様で遊ぶのは止めなさい!!」



「分かりました。では、姫様で遊ぶことにします」



「それも止めて下さい!?一応、私は貴方の主みたいなものなんですよ!!」



「はぁ、いつからそんなわがままを言う娘になってしまったんですか?嘆かわしいですね」



「わがまま!?和登様の前で変な事を言うのを止めて下さい!怒りますよ!?」



「では、早く出て来て下さい」



「い、いやです!そもそも、フィーナが変な事を言うから和登様に…」



「分かりました、和登様に姫様が秘密にしたがっているあれやこれやをお話ししますので、出て来なくても結構ですよ?」



 バンと効果音が尽きそうな勢いで扉が開き、ステーシィが出て来た。



「待って、フィーナ!それは止めて!!」



「やっと出て来て下さいましたか」



「あ…」



 思わず出てきてしまったようで、俺を見て気まずそうにするステーシィ。俺、今の彼女にすっごいシンパシーを感じてるよ。さっきのやり取りなんて、他人事じゃないよ、マジで!!



「では、後は和登様にお任せします」



 そう言って、去って行くフィーナ…って!?



「「ここまでやっておいて丸投げ!?」」



 俺と姫様の声は見事にハモったのだった。







「ど、どうぞ」



「あ、ありがとう」



 俺は、結局ステーシィの部屋に招かれた。思ったよりは大きくない部屋で、しかし、色々と整理された部屋は、どこか可愛らしく感じられた。



「その…あまり見ないで下さいね」



「ご、ごめん!その、女の子の部屋に入るのはこれが初めてで…」



「そ、そうなんですね!わ、私も男の子を部屋に入れたのは初めてなんです!お揃いですね♪」



「そ、そうだね。お揃いだね」



 と返しつつも、何故急に喜びだしたのか分からない俺。何なんだろうな?



「それで…俺、フィーナにステーシィが閉じこもってて困っているから来てくれって連れてこられたんだけど…本当なのか?」



 さっさと話を始めないと、色々と部屋の中を見回してしまいそうなので、早々に切り出した俺。実況しろ?うっさい!俺がステーシィに嫌われたらどうするんだ!?



「ええと…半分以上嘘です。その…和登様にあんなことを言ってしまったので、恥ずかしくて和登様に会いに行けなかっただけですから…」



「半分とかじゃなく、全部嘘じゃないか!?フィーナめ…」



「その…和登様は、私をはしたない女だと思ってないですか?」



「はしたない?何で?」



「だって、あんなに声を上げて和登様の弁明をしたり…今日だって、ステーシィとあんなやり取りを…」



「いや、全然そんなことないぞ?そんな事を言ったら、世の中の半分くらいははしたない娘になっちゃうんじゃないか?」



「それは大げさだと思いますが、そうですか…それなら私の杞憂だったんですね、良かったです」



 ホッとしているステーシィではあるが、俺は?マークが浮かんでいた。まさか、それだけで本当に俺に会えないほどの羞恥心を持っていたのか?マジなのか?え?俺こそマジかって?何で!?



「ええと、もしかしてもう解決?」



「は、はい。そのようですね…」



 そう言って、モジモジしだすステーシィ。うん?どうしたんだ?



「ええと、どうかしたのか?」



「い、いえ!何でもないんですが…その…男の方と二人きりと言う事実に緊張して来てしまって…」



「え?この前も俺の部屋に来てくれたじゃないか?」



「あ、あの時は和登様がすぐに出掛けることが分かっていたので…変な事にはならないと分かっていたから…その…」



「へ?変な事?」



「ちちち、違います!その…あの…!?」



「お、落ち着け!あちっ!?」



「ああっ!?大丈夫ですか!?」



 慌てだしたステーシィを落ち着けようと手を出した時、折角ステーシィが用意してくれた飲み物を零してしまった!!



「いや、これくらい平気だからっ!?」



「じっとしていてください、拭きますから!!」



 そう言って、俺のズボンを噴き出したステーシィ。



「熱くないですかっ!?」



 かっ!?の所で、俺と急接近していることに気が付いたのだろう。俺は、すでに気が付いていたので固まってます。まさか、この俺がお茶を零して女の子と急接近イベントを起こそうとは!?あ、わざとじゃないぞ?何だ!?その疑いの目は!?



 お互いに無言で見つめ合う二人。このまま二人は…って!?な、何かステーシィ近付いてきてないか!?このままだと本当に!?はっ!?何か視線が!?



「なっ!?」



「えっ!?」



 俺が、ふいに何かを感じて扉の方を見ると…フィーナが覗いていた!?驚いて声を上げると、ステーシィも気が付いたみたいだ。



「何してんの?フィーナさん?」



「覗いています、お気になさらずにそのままブチュッとしちゃってください」



「よし来た!!何て言うわけないだろ!?何で堂々と覗いておいて、続きを促そうととしているの?君は!?」



「まあ、私が居てもいなくてもチキンな勇者様はどうせキスできなかったでしょうけど」



「な、何を言っているのかな、君は?俺だよ?勇者和登様だよ!?フィーナがいなかったら、抱き締めて熱いキスを交わしていたに決まっているじゃないか!!」



「なるほど、だそうですよ、姫様?」



「あ!?い、今のは何と言いますか!?」



 焦ってステーシィの方を見ると俯いていたが、これでもかって程顔が赤くなっていた。ね、熱があるんじゃないですかね?とぼけ方が下手?うっさいわ!!



「申し訳ございません、姫様。まさか、和登様とそんな関係にあるとは露知らず、気になって覗いてしまいました」



 そう言って、無表情のまま申し訳程度に頭を下げるフィーナ。絶対に分かっててやってただろ!?反省してないだろ!?大体、一度去って行ったように見せかけたよね!?



「わ」



「わ?」



「和登様の、えっちぃぃ!!!?」



「俺ですか!?」



 俺は、叫びながら去って行くステーシィを呆然と見送った。いや、ここが君の部屋だよね?



「さて、こうなってしまったら和登様のすることは一つです」



「分かってる!追いかけないとな!!」



「違います、姫様の下着はこちらの衣装ケースの中です」



「分かった、頂こう!!何て言うか!変態か!?俺は!!」



 危なかった!?何て誘惑だ!!思わず、近付きそうになったわ!!変態?ち、違うし!興味あるのは女の子の方だし!!!



「そ、そんなことより!前より真っ赤になって逃げ出したし、追いかけないとまずいんじゃないのか!?」



「誤魔化し方が下手ですね。姫様の下着に興味津々なのが丸わかりです。たくさんありますし、一枚くらいならバレないですよ?こんなチャンス二度とないかもしれませんよ?」



「え?ま、マジ?なら、一枚くらい…って!?だから!本人いない間に、下着漁るとか変態そのものじゃねぇか!!俺は変態じゃねぇっての!!」



 え?本当は欲しいんだろって?ほ、本当に興味ないし!マジだし!!風香に誓って見ろ?・・・嘘つきましたぁ…ごめんなさい!!!



「仕方ありませんね、下着は今度私の脱ぎたてを差し上げますので、そちらで我慢して下さい」



「え?良いんですか!?」



「やはり、欲しいんですね?」



「何という誘導尋問!?避けようがない罠だった!?」



 え?お前馬鹿だろ?う、うっさいやい!!男ならチャレンジ精神を忘れてはいけないんだぞ!?



「さて、そうこうしているうちに姫様がどこに行ったか分からなくなってしまいましたが」



「完全にフィーナのせいだよね!?」



「和登様…いつから、女性に罪を擦り付ける外道になってしまったのですか?」



「すまない、俺が間違っていた…何て言うか!?誰がどう見てもお前のせいでしょうが!?」



「お前だ何て、アナタ♪と呼び返せば宜しいのでしょうか?」



「うむ、まるで夫婦だな!って!いい加減に前に進もうぜ!?」



「全く、和登様が騒ぐから話が進みませんね」



「お前はと言うやつは!?」



 もう許さんぞ!?お尻ぺんぺんの刑だ!!変態?ち、違うぞ!?そう言う意味じゃないから!!マジだから!!



「私のお尻に熱い視線を送っているところ悪いのですが」



「見てません!変な視線何て送ってませんから!!!」



 マジだよ!?見てないよ!?多分…



「否定するほど怪しまれるわけですが」



「くっ!?ごめんなさい!!」



「それは良いです。どうせ、5日後には全てを見せる事になるのですから」



「あ!?あれはですな!?」



 そうだ!その事を何とかしないと、フィーナと大変な事になってしまうかもしれないんだった!?え?本当は勿体ないとか思ってるだろ?そそそ、そんなことないし!俺は、風香が一番だし!!



「まあ、さすがに今回は私の方で姫様のフォローはしておきますので、和登様は訓練の疲れをお癒し下さい」


「あ!?ちょ、ちょっとまっ!?」



 俺の制止を無視して歩いて行ってしまうフィーナ。・・・よし!下着を頂こう!冗談だよ!?そんなに距離を取らないで下さいってば!?



 そんな感じで、またもフィーナのせいでどっと疲れてしまった俺は、部屋に戻って仮眠をとることにしたのだった。正直、彼女と結婚したら身が持たないと思う。やはり、風香が良い!ロリコン?それだけはいっちゃいけねぇよ!?同い年だから!!



 そして、悩んでいると思わせて、気が付けば仮眠に入っている俺でした。寝つきは良い方だぜ!!

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