第3話 メイドだぁ!!
うらぁ!朝だぁ!!!と、元気よく俺は飛び起きる!!
あ、もちろん、声には出さないぜ?迷惑になるからな!!
え?何で朝からテンション高いかだって?それはな…俺が、今日ついに勇者になるからだよ!!
次から次へと襲い掛かって来る魔物どもとバッタバッタと薙ぎ払い、勇者和登ここにあり!!と示す日がついにやって来たのだ!テンションが上がらないわけがあるまい!!
え?何でそんなに自信があるのかって?魔物が怖くないのかって?その質問には簡潔に応えられるぜ?それは…俺だからだ!!(どどーん)いたっ!?朝から物を投げるのはご遠慮ください!?
とりあえず、落ち着いたので現状を説明しよう!恐らくだが、俺は早く起き過ぎた!!まだちょっと暗いし!鳥っぽい鳴き声が聞こえるし!!メイドさんまだ来ないし!!!
何故早く起きたかって?それは、さっきも言ったけどな?勇者として魔物をバッサバッサと薙ぎ倒す俺の雄姿に、4人の美少女が惚れてしまう未来に興奮してよく眠れなかったからだよ!!(どどーん)あ、あれ?何でそんなに可哀そうな人を見る目で見てくるんですか?羨ましくないんですか?え?妄想乙?ち、違うんだからね!!
考えてみてください?俺、唯一の男!!しかも、俺だけ前衛っぽい!!つまり、俺が格好良く醜悪な魔物どもを斬り捨てて行けば頼りになる♪って思って貰えるわけだよ!そして、気が付くんだ。あれ?彼って結構イケてない?ってな!
あれ?また可哀そうな人を見る目で見られてる!?何故だ!?何故分からんのだ!?え?大前提として、いきなりそんな沢山の魔物と戦うのかって?・・・いや、国がピンチみたいだし?最初は慣らしらしいけど、事故ってあると思うんだ?
そこで、俺が颯爽と魔物を倒す訳だよ!!完璧だろ!!え?逆にやられる未来しか視えない?そんなバカな!?君は、帰宅部のエースを見くびっているぞ!!俺は、帰宅数値10万越えのエリートだぞ!?・・・帰宅数値ってなんだよ…?
と、とにかく!俺は下手すると今日には、初彼女ゲットなんだぜ!羨ましいだろ!!・・・あの、いい加減に可哀そうな人を見る目で見つめるの止めて貰えませんかね?さすがに効いて来たんで…
気を取り直して!!俺は、昨日変な時間にラジオ体操をして失敗してしまったので、今日は朝だから大丈夫と元気にラジオ体操を始めた!理由?準備運動みたいなものだよ!!
しかし、さすがは俺と言うか…またもノックと共に入って来たメイドさんに思いっきり目撃された!?偶然にしては出来過ぎですね!!もしかして、ドアの外で出待ちしてたんじゃないですよね!?
そんな内心の焦りをおくびにも出さずに俺は
「やあ、フィーナ!朝から君の可憐な姿を見れるなんて、俺は幸せ者だな!!」
相変わらずの俺節を披露、恥ずかしさにはそれ以上の恥ずかしさで上塗りさ!意味?そんなものないぜ!旅の恥は掻き捨てって言うだろ?え?住んでいる所の相手には適用されない?こ、こまけぇことはいいんだよ!!
え?それよりも何故メイドさんの名前を知ってるのかって?フフフ…聞いて驚け!自己紹介されたのさ!!え?つまらないってなんだよ!?俺が、女性からさりげなく何かを聞き出せるとでも思っているのか!?甘く見るなよ!?
「それは嬉しいですね。では、私を和登様の愛人一号にしてください」
「へ?うぇ!?・・・もも、もちろんさ!君みたいな美人が俺の傍に居てくれるなんて、俺は幸せ者だなぁ!!」
少しどもってしまったが、爽やか野郎?の演技を続けた俺。理由は、フィーナが無表情だったから冗談だと思ったからだ!だって、全く表情筋動いてないんだぜ?嬉しいって言葉を言う時くらい偽物でも良いから笑顔下さい!!
あ、因みにだけど、昨日俺がラジオ体操を披露?したメイドさんとは別の人な?正式に、一人一人に使用人が付いたんだよ…びっくりだろ?彼女は一応、俺の専属って事になっているけど…まあ、優先的に俺に仕えてくれるだけで他の仕事もしているみたいだから、とても忙しそうではあるけどな。
「ありがとうございます。では、今夜改めて伺わせて頂きますね」
「・・・はへ?」
今何と言った?え?今夜…来る…?え?まじなの!?
「それはそれとして、朝食が30分後に始まりますので、その時間までには昨日の広間までおいで下さい。それでは」
「あ、はい…って!?あ…」
冗談ですよね?って聞く前にさっさと行ってしまったな…。い、いや!あの感じだと俺の冗談をさらりと流した感じだな!うん!!気にしたら負けだな!
俺は、そう自分に言い聞かせてから、身だしなみを整えて朝食の場へと向かうのだった。
ああ、食った食った!余は満足である!!え?相変わらず食事シーンを飛ばすなって?あのね、食事中は静かにしないといけないんだぞ?まあ、今日の予定を話したりしたけどな!!安心してくれ!いつも通り俺が端折る!!
とりあえず、今日はハンター組合に行ってベテランハンターと一緒に低級の魔物さんと戦うだけみたいだ。まあ、俺たちの実力を測らないと今後の予定も立てられないだろうから仕方ないよな。
まあ、朝にも言ったが、ついに俺が真の勇者として目覚める時が来たのだ!!え?勇者に興味なかっただろうって?自由を奪われなれば良いのさ!まあ、この国の人なら大丈夫そうだ!だから、遠慮なく俺は英雄にならせて頂く!!
一つ残念な事があるとすれば、さすがにステーシィは付いて来れない事だ。公務があるという事もあるみたいだけど、大元の理由は、さすがに王が娘を危険にさらすわけにはいかないと止めた事だ。まあ、親なら当然の判断だよね。
静かながらも、有無を言わせない声に、さすがのステーシィも反論しなかった。俺が守ってやるぜ!って言いたかったけど、まだ俺がどこまでやれるか分からないから流石に言えなかった。まずは、美少女四人を守ることを優先せねばならんしな!!
そんな感じで、俺は自室で準備をしていると、ドアからノックの音が響いた。俺がどうぞと促すと、ステーシィが入って来た。・・・何事?
「どうかしたのか?」
「あの…今日は、ついて行けずに申し訳ございません」
「気にすることないよ!王様の言う事ももっともだ。俺たちだってどれくらいやれるか分からないわけだからね。ステーシィを、わざわざ危険かもしれない場所に連れて行くわけにはいかないだろうさ」
俺は、申し訳なさそうにしているステーシィに笑顔でそう言ってみせた。まあ、俺が残念だと思う理由と彼女の申し訳ないと思っている理由が違うから、余計な事は言えないしな!内緒だぜ?
「そう言って頂けると助かります。代わりと言っては何ですが、宜しければ、こちらをお使いくださいませんか?」
「ん?剣か?」
「はい、それなりの剣だと思うのですが…」
俺は、彼女が差し出して来た剣を受け取る。中々重量があるな?
「王様がくれたわけじゃないのか?」
「いえ、私個人の持ち物です。実は、昔は剣を使って魔物を倒す勇者に憧れていた時期がありまして…その時に、我がままを言って作って貰った剣なんです」
「へ?ステーシィがこれを…?」
結構重さがあるぞ?これを使って戦えたのか?もしかして、俺より強い?
「えっと…ステーシィって結構力あるのか?」
「い、いえ!実はその…実際は、剣を使っていたと言うより、使われていたと言うか…振り回されていただけと申しますか…」
「・・・ぷっ」
「ああっ!?わ、笑わないで下さい!!幼い頃の過ちなんですから!今はちゃんと、愚かだったと反省してます!もう!和登様は、結構意地悪なんですね!」
そう言って、むくれるステーシィ。何この子?めっちゃ可愛いよ!!でも、笑ってしまったのは仕方ないと思わないか?今より小さいステーシィが、全身を目一杯使って剣を振り回している姿を想像したら…可愛すぎて噴き出したんだよ!仕方ないですよね!?
「悪かったよ、ごめんな、ステーシィ?剣、ありがとう。大切に使わせてもらうよ。でも、それよりステーシィの気持ちと、さっきの可愛らしい姿で俺の気力は充実したよ!そっちの方が俺には、効果があったな!」
またちょっと格好つけてしまった。フィーナの前でやらかしたことが尾を引いているかもしれない。まあ、根本からして、美人の前で格好つけてしまうのは、男のさがってやつだから仕方ないよね!!え?そんなことはない?そうっすか…おれだけだったのか…?
「もう…そんな事を言われたら怒れないじゃないですか」
そう言って、照れて見せるステーシィ。あれ?思ったより効果ありか?何か、ステーシィって思っていたより純情っぽくないか?最初会った時は、もう少し打算的に見えた気がしたが…俺の勘違いかな?単純?だまらっしゃい!!
「まあ、安心してくれよ?俺が、みんなを守るからさ!」
「和登様自身も無事にお戻りくださいね?」
「あ、ああ!もちろんだ!!俺は、この国の勇者だからな!!」
やっちまった!?自分で勇者宣言とかどこの阿呆だよ!?ステーシィからの俺自身を心配する姿にテンションが上がってやっちまった!?勢いって怖いよね!!
「はい、無事のご帰還をお待ちしております」
見つめ合う俺たち。あれ?これって、勇者の無事を待つ姫様の図じゃね?え?ステーシィってそんな感じで俺を見て
「そろそろ移動しないと遅れてしまいますよ?」
「おわぁ!?」
「きゃっ!?」
俺は、真横から聞こえた声に驚き飛び退いた。そして、驚いたステーシィが偶然俺の横に居てしがみ付いて来た!ラッキーすぎる!!胸…って、今はそれどころじゃないだろ!?
「って、フィーナ!?いつの間に!?」
「本当です!?いつの間に和登様の部屋に入ったんですか!?」
「二人がイチャラブしている間にです」
「そそそ、そんなことしてないっすよ!?」
「そそそ、そうです!何を言っているんですか!?」
「分かりました、王様にご報告いたしましょう。では」
「待て待て待て待て!!何て報告するするつもりだ!?」
「もうすぐ可愛いお孫さんの顔を見られますよ?」
「ないから!!俺とステーシィはそんな関係になってないから!!だよな!?」
「え?そんなに力一杯に否定なされなくとも…」
「あ!?違う違う!別に、ステーシィが嫌って訳じゃなくて!ほら!俺とステーシィじゃ釣り合わないだろうと思って…な?」
「そうですよね、私とじゃ釣り合いませんよね…」
「ええっ!?そのニュアンスだと俺の方が上に聞こえるぞ!?逆だろ、逆!?俺の方が下!俺なんかじゃ、ステーシィには釣り合わないって事だよ!?」
「そんなことありません!!和登様は、いきなりこんな世界に連れて来られたと言うのに、私たちを一切責めもせず、周りのお仲間の方々を気遣って明るく振舞うとても強くて優しい方です!!」
「え!?」
ステーシィの俺の評価高すぎ!?そう取られてたの!?はっきり言って、買い被り過ぎです!!数千個は被ってるよ!?俺は、ただ単に異世界満喫するぜ!!って感じでテンション上がってただけですよ!?高評価すぎてどうしたら良いのか分からないくらいなんだけども!?
「姫様、それはいくら何でも買い被り過ぎかと」
「そんな事はありません!和登様は素敵な方です!!」
「だそうですよ、和登様?」
「ああ、ええと…あ、ありがとう?」
「わぅ!?」
自分が恥ずかしい事を言っていた事実に、やっと気が付いたのだろう。ステーシィは、真っ赤になって固まってしまった。しかし、わぅって可愛いな!!ありだな!!
「今です、和登様。抱きしめてぶちゅっとキスをするのです」
「よし!任せておけ!!って、するかっ!!?」
そんなことしたら、最悪王様に殺されてしまうわ!!しかし、さりげなく誘導しようとするとは…フィーナ、恐ろしい娘!!
「な、何でもないんですぅぅ!!!」
「あ…」
呼び止める間もなく、ステーシィが走り去って行った。おい、どうするんだよ?そう思って、フィーナを見てみたんだが…
「では、魔物討伐頑張って下さいね、和登様」
そう言って、澄ました顔はそのままに出て行ったフィーナ。お姫様をあんな風にして無表情で放置とか…修正!フィーナ、とてもとても恐ろしい娘!!!
何か、出発前にどっと疲れてしまったが、みんなの待っている場所に向かうか…あの感じだと、やっぱり朝の事は冗談だったようだな…
俺は、新たな問題の種、メイドのフィーナにこれから苦労させられそうだなと思いながら、みんなの元へと向かうのだった。
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