第2話 ~Ⅱ~

 恋愛か~。今日のお昼の会話を、帰り道、私は一人歩きながら考えていた。

 珍しい事に、私は今までそんな事を全く考えずに生きてきた。

 自らエントリーする事もなければ、誰かの人生にキャスティングされる事も無い人生を、正に生きてきたのだ。それが幸か不幸かは、正直、自分では決める自信はなかった。


「ただいま~」

 夕暮れ時、まだ外が明るさを残している時間帯に家に帰ると、キッチンやリビングには明かりは点いておらず、留守中のいつも通りの静けさが、家を包み込んでいた。

 まだ誰も帰ってないか、そう思い、二階の自分の部屋に行こうと階段を登り切って、部屋のドアを開けようとしたところ、同じく二階にある妹の部屋から話し声が聞こえてきた。あれ、妹は帰ってきてるのかな、と耳を澄ませていると、こんな会話が聞こえてきた。

「ハァ~? 何それ? それじゃ、私の事とかどうでもいいんだ? オッケー、わかったわ! もう連絡してこないでね、バイバ~イッ!」

 私は、妹の部屋のドアを開け、たった今、電話を終えたであろう妹に声をかけた。

「また、喧嘩でもしたの?」

「あっ、お姉ちゃん帰ってたんだ?」

 

 中学3年生の妹は、私と違い、とても性に奔放な生き方をしている。まだ春だというのに、3人の彼氏と別れ、今、現在4人目のお相手と交際中だ。

「喧嘩っていうか、アイツが部活に集中したいとか言って、しばらく程々に付き合おうぜ、とか言ってくるから、程々って何だよ、っていう所で揉めてて、今別れてやった、ぶった切ってやった! ガハハ!」

 妹の、その直情的な性格に毎度呆れながらも、私は、同じ親から生まれたのだから、その性格の少しぐらい私に引き継がれても良かったのに、なんて事を思ったりする。

「また別れちゃったの? もう今年で何人目よ?」

「う~ん、一回デートしただけも含めると、10人は超えてるかもな~、っていうかさ、お姉ちゃんも、せっかく女子高生やってるんだから、もっとハジけないと駄目だよ! 女の旬なんてあっという間だよ~」

「えっ、何言って・・・わ、私の事はいいでしょ! それじゃ!」

 

 妹のこちらを茶化すような返事に、軽く怒りを感じ、妹の部屋のドアを強めに閉めた。それから自分の部屋に戻り、ベッドに仰向けになった。

(何よ!・・・でも、妹の言ってる事も一理あるのだ・・・意識してこなかったという事だけで、別に満たされた日々を過ごしている訳じゃない。私は、思ったより狭い視野で、これまで生きてきてしまったのかもしれないな・・・) 

 

 そんな、雲をつかむような漠然とした考え事をしている内に、その日は眠りに落ちてしまった。

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