4章 野望と欲望
episode 1 3人デート act 1
――まえがき――
まるっと8か月振りの更新になります。
長期間お休みしていましたが、カクヨムコン9の開催もあって頑張って書きました。
是非、応援してやってください。
――――――――――――――――――――
「ねえ、雅君」
「んー?」
「もう8月も終わりだね」
「あぁ、そうだなぁ」
「もう夏休みも終わりなんだけど」
「高校生はそうかもだけど、大学生はまだまだ休みなんだなあ――っぐふっ!」
8月も下旬に入り益々暑い日が続いている中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
久しぶりにバイトもなく、それ以外の時間の殆どを費やす事になった映画の撮影も今日と明日は俺の撮影日ではなく、今日は夜に心の家庭教師のバイトがあるものの、明日は完全にオフになっているこの日。俺は家の用事以外なにもせずにしっかり休もうとリビングのソファーでゴロゴロと本を読んでいる所に、超絶不満顔の夕弦が俺の返答が気に食わなかったのか、いきなり腹の上に膝を立てて全体重を乗せて飛び乗ってきた。
いくら小柄で細身の女の子とはいえ、不意打ちでこれをやられたら堪ったものじゃない。本気で臓器が口から飛び出すかと思った。
「こら、夕弦! さすがにこれは危ないだろうが!」
俺は義妹ラブな男で普段は甘やかす方向で接してはいるが、危険な行動をとった場合はその限りではなく、ここはしっかり叱らないとと腹の上にいる夕弦を下ろして激しい痛みで涙目になりつつ夕弦を叱った。
ホントに一瞬見た事のない世界が見えたんだもん。
「っ! ご、ごめんなさい……」
夕弦もやり過ぎたと思ったのか、すぐにペコリと頭を下げた――のは一瞬の事で、すぐさま顔を上げて今度は行動ではなく目で何かを訴えかけてくる……一体なんなんだよ。
「デートは!?」
「……は?」
「だからデートの約束はって言ってんの!」
「その約束は撮影が終わったらって話だったろ?」
有紀に嵌められて流されるように映研サークル【もぐり】の映画製作によりにもよって主演で参加する事になったせいで、愛する夕弦を蔑ろにしてしまう為、本格的に撮影に入る前にデートに連れていくという約束を交わしたのは事実だ。
だが現在まだ撮影は進行中で予定通りに進んだとしても、クランクアップは9月の下旬を予定している。
「そんなの待ってたらプール閉まっちゃうじゃん!」
「は? プール? プールに連れて行くって約束してたか?」
「してないけど、心とプールに行きたいねって話になって明日行く事になったの」
「明日? また急な話だな。つか、心と2人で行くんだろ? なら俺いなくてもいいじゃん」
「ほー、雅君はいいんだ」
「なにが?」
「こんなに可愛いJK2人だけでプールになんて行って、何もないと思う? 昨日心と水着買いに行ったんだけど、結構露出のある可愛いの買ったんだよ?」
そうだ! 夕弦達は買い物に行くわけでも、映画に行くわけでもなくて、飯を食いに行くわけでもない。
普段隠して見えない肌を露出した水着でプールに行くというのだ。つまり俺の可愛い夕弦をエロい目で見やがる糞野郎どもがわんさかいる場所に、ネギしょったカモが足を踏み入れるようなものじゃないか!
「……山にしなさい」
「は?」
「だからプールは止めて山に行きなさい。ほら、山ガールってのが流行ってんだろ? 山はいいぞー! 空気は美味いし夕弦をエロい目で見る糞野郎もいない! だからJK2人で行ってもあんぜ――がっふ!?」
また飛びやがった。今度は全体重を乗せた夕弦のケツが俺の腹にめり込んだ。膝と違って柔らかいケツなら問題ないと思ったんだろうか……。
「ゆーずーるー」
「雅君が悪いんじゃん! プールに行くぞって盛り上がってる私に山に行けとか無茶苦茶だよ! 別に登山する女の子を否定するつもりなんてないけど、私はプールがいいの! プールがいい! 絶対プール!!」
まいったな。別に行きたくないわけじゃないし夕弦の事は心配だけど、ここの所1人になる時間が全くなかったから明日はこの前メンテした愛車で久しぶりにサイクリングしようと思ってて色々プラン練ってたんだよなぁ。
誰か他の奴に頼んで……例えば瑛太とか――ダメか。アイツとはオーディションの時に折り合いが悪くなってから芝居に関わる事以外まともに口もきいてないんだったな。それがなかったとしても瑛太が狼になる可能性が多分にあるし……。
こうなったら余程の事でもない限り言い分を覆さないのは、家族になってよく分かってる……。
(となれば相方を説得するのが吉か)
☆★
「ん? プール? 行くよ? つかアーシが誘ったんだし」
「お前が言い出しっぺかよ」
「そそ! んでセンセも一緒なんっしょ?」
「俺もセットってのも決定事項なんか?」
プールプールと煩い夕弦にバイトの時間だからその話は夜にと無理やり話を切り上げさせて、一緒に行く事になっている心に講義の後に明日の事を訊いてみたところ、どうやら言い出したのは心の方だった。
しかも夕弦に俺も連れてくるようにけしかけたのも心だったらしく、すでに俺も明日同行すると決めつけていた。
「こんな可愛いJKが水着姿になんだよ? 男どもがほっとくわけないじゃん! だからしかたなくセンセにアーシ達をガードするって栄誉ある任務を与えてやろうってえぇ!?」
「おっといかん。つい苛つきが限界突破して手が出てしまった」
「女の子に空手チョップするのが〝つい〟で済ませれるわけないっしょ! この間のトレーの角で叩いた事といい、センセの限界低すぎない!?」
何を言う。金を稼ぐ身分で仕事の手を止めるどころか客に突っかかるなんてご法度だし、今回の事だって予定があるから中止にさせようと思ってる相手に、着いていって周囲の男どもからガードする事が栄誉だとかぬかしたんだから手が出て当然だろう。
「んなことねえよ。つか明日のプールの件を心から夕弦に中止にするように説得してくれ。俺が何度言っても諦めねえんだよ」
「あったりまえじゃん! センセに喜んで貰えるようにって昨日真剣に水着選んでたんだから。センセだって夕弦の水着姿見たくないん?」
「確かに夕弦はこの世で一番の可愛い義妹だが、そんな愛する義妹の水着姿を見て喜んだらただの変態だろうが!」
「いや、重度のシスコンって時点で既に手遅れじゃね!?」
誰が重度のシスコンだ、失敬な! 俺はただ夕弦が可愛くて可愛くて仕方がないだけだ! あれ? じゃあ合ってんのか。
それにしても夕弦が俺の為に、か。
初めて沙耶さんとウチに来た時の夕弦を思えば、俺の為に水着を選んでくれるとか……兄貴冥利に尽きるとはこの事だと思う。
正直、明日の予定は俺なりに楽しみにしていたんだけど、夕弦の言うとおりプールは今だけなわけだし、サイクリングなんてこれから涼しくなっていくんだから何時でも行けるもんな。
(……となれば、だ)
「心、明日は夕弦と2人でプールに行きたいから、お前は来るな」
「なんでだし!?」
なんでって、兄妹水入らずの時間に心が邪魔だからとしか。
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