6 / ⅱ - 蕾が開く時 -
「うん、『
有土の声を聞いた真紀奈は、超マイクロカメラを含んだコンタクトレンズを基に設計された、ARウェアラブルコンピュータの
《了解、『
彼の命を受けた真紀奈の声を合図に、最初に稼働したのは彼女のヘッドドレスだった。花弁が燐光を放つと、彼女を大きく覆う球状の光が形成される。
それはシルエットを指し示すように真紀奈の前面から後面に向けて一筋の光芒を描くと、無色透明な防御壁を構築し、起動中を表す桜の花びらをホログラムで映し彼女を彩る。
《
カシュンと圧縮された空気が抜ける音が続くのは、彼女の義手義足が変形するもの。
人の肌を再現した有機的な肌色の義肢が切り替わり、無機質な、しかしこの世のどれよりも美麗だと思わせる
接合部に金を纏った白い腕には、彼女の背丈に合わせてJBから幾分か小型化した
脚部は腕部とは一変し、その様相を大きく変える。体積と質量の伴う『
《メインツー、メインウィング展開スタート》
ウェストポーチが開き、彼女のボディと同じ白無垢の光沢を放つ機械が広がる。
二回、三回と段階を経て織り込まれていた
双翼の付け根から円柱状の
全ての手順を踏まえることで、『
《リンクコンプリート。『
今ここに天使像『
『これ、が』
真紀奈が自身の姿を見渡しながら感嘆し、
『これが……』
光皆が画面に映る純白を見ながら賞賛し、
「これが、『
有土が一騎当千の英霊神話の実現を、今ここに高らかに宣言した。
全てのフェイズを無事に終えた合図が響き、その様子を見守っていた有土には安堵の表情が浮かぶ。肩の力を抜くように息を吐いた後、彼は結果の是非を待つ光皆達の元へ連絡をする。
「光皆社長、小郷です。『
『そうだね、ご苦労だった。まずは第一段階の成功に拍手を送ろうか』
通信画面の向こうでは、まずまずと言いながらも少年の活躍に笑みを浮かべる光皆の後ろで、添氏が電子キーボードを素早くタイピングしている姿が見られた。
『―――
「は、はいっ、ありがとうございます」
もし道定が同席していたら、「やっぱりオペレーターは大人の女性の落ち着いたボイスの方が雰囲気出ていいよな」などと興奮気味に言うのだろうか、とまで考えたところでしょうもないと苦笑を漏らす。
「緊張しなくて大丈夫だよ。大丈夫、真紀奈の好きなようにやってみて欲しい」
「う、うん。わかった」
呼吸を整える真紀奈にはもう添氏への緊張もなく、その目付きは真剣そのものだった。
彼女ならもう大丈夫だろうと有土は判断し、その背中を押す。
「いってらっしゃい、真紀奈」
他人行儀な苗字でもなく、幼い
「うんっ」
快い返事をした真紀奈は、NLCディスプレイで添氏に連絡を渡した。
「これから、カウントファイブで飛翔に移ります」
『承知しました』
真紀奈は
五。
呼吸を整え、
四。
思考を整え、
三。
黒い雲の中へ、
二。
黒い空の下へ、
一。
その鋼鉄は、飛翔する。
「───
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